ドラゴンを連れた鍵師と仲間は洞窟探検をする4

ムメイジンが扉を開けた瞬間、パーンパーンとクラッカーの音が響いた。


 なんだろうと呆然と立ち尽くしてしまったムメイジンの後ろからキイとアイシア、ショセイ、リデルが中をのぞきこむ。


 すると中にはいくつものベンチが並べられており、奥には舞台らしくものがある。その舞台の上には……。


「イカ? タコ?」


 そこにはイカのようなタコのような生き物が二匹手を繋ぐかのようなしぐさをしながら、こちらをみているではないか。


 その後ろには横断幕があり、なりやら書かれているようだが、異世界人であるムメイジンが読めるはずもなく、思わずショセイをみる。


「えっと、“ようこそ! われらはお笑いコンビ! クラーケンズである さあ、われらのショーを楽しみたまえ”だって」


「なんだよ。その上目線」


 キイがあきれたようにいう。


「キイ。依頼内容ってこれをみること?」


 アイシアが尋ねる。


「いや、ふつうにダンジョンの冒険だったんだけどなあ。間違えたみたいだ。帰ろうぜ」


 そういって入り口から出ようとした。


 しかし、バーンと突然扉がしまる。


「うわっ、あかねえ」


 キイがいくら押しても引いても扉はあかない。


「タコタコタコーーー!」


「イカイカイカーーー!」


 するとクラーケンズが声を荒立てる。


 慌てて振り替えると別の横断幕を広げているではないか。


「えっと、“みてくれないといやーよ♥️ちゃんとみないと開かないわよ。えへ♥️”だって」


「今度はオカマかよ」


キイはつっこみながら客席のほうへと向かった。



「えっ? キイ?」


アイシアが怪訝な顔をする。


「しょうがないだろ。見なきゃ帰してくれそうもないからさ」


 そういいながら、リデルを肩にのせたままベンチに座る。


「けっこう面白いかもよお」


 ムメイジンがノリノリで座った。


 アイシアとショセイはお互いに顔を見合わせると仕方ないと肩をすくめながらベンチに座る。


 それを確認したスラーケンズはさっそくパフォーマンスをはじめるのであった。


「タコタコタコタコ」


「イカイカイカイカ」


「タコタコタコタコ」


「イカイカイカ」


「タコタコタコタコタコタコタコタコ!」


「イカイカイカーーー!」


 イカがタコの頭を叩いた。


 どうやら、タコがボケてイカが突っ込みをいれたようだが、何せキイたちには「タコタコタコタコ」と「イカイカイカ」としか聞こえない。


 あまりのつまらなさにキイはため息を漏らしながら立ち上がる。


「タコ?」


「イカイカイカ!」


 イカがキイになにかを訴えているようだがなんといっているのかわからないので、無視した。


「タコーー!」


 タコが舞台から降りると立ち去ろうとするキイの前に立ちはだかり、なにやらカンペらしきものをみせる。


“最後までみろ! みないと出れないぞ”


 そうかかれていた。


「だって、なにいっているかわからねえもん。タコタコとかイカイカとかしか聞こえねえよ」


「タコタコ!!」


 タコはなにかをカンペに書いてキイにみせる。


覚えろ! ぼくらの言葉おぼえろ”


「逆だよ。逆。お前らが人間言葉覚えろよ。そうやって文字にかけるなら言葉にもできるだろう」


 それにタコがはっとしたような顔になる。


「じゃあな」


 キイが入り口に向かって歩きだした。


「えっ? でも、キイ。扉鍵かかっているわよ」


「イカイカイカ(そうだ!そうだ!)」


「タコタコタコタコ(ぼくらじゃなきゃ開かないぞ!)」


 そんな訴えにも見向きもせずに入り口のほうへと近づいたキイがその手を扉にかざす。


 カチン


 解錠される音が聞こえたかと思うと、閉ざされたはずの扉が開き外の明かりがダンジョンのなかへと差し込む。


 アイシアたちは呆然とキイをみていると、彼が振り返る。


「だって俺、鍵師だもん。これぐらい楽勝さ。さあ。みんな帰ろうぜ。じゃあな。へっぽこお笑いコンビさん。次は面白いの用意しとけよ」


 そういって、キイが出ていく。


 そのあとをアイシアたちが追いかけた。


 彼らが入り口から出ていくのを呆然とみていたクラーケンズはお互いに見合わせて、突然抱き合うなり号泣しはじめた。


「タコタコタコタコおおおおお」



「イカイカイカあああああ!」


「タコタコタコタコ(よし人間の言葉話せるようになろう)」


「イカイカイカイカ(そうだね。兄さん。そして人間たちにぼくらの笑いを伝えよう)」


 二匹のクラーケンはそう気合いいれると人間の言葉を話せるようになるための勉強とさらなるお笑いを極めるための修行を始めた。



 果たして二匹のモンスターが人間に笑いが通じるようになるのかはまた別の話である。












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