第7話 使用人?

 ルークスがシドルとネイザルにあぶみを紹介した翌日。



「あ~、こんな大きな屋敷を私とお爺ちゃんだけで回すなんて無理だよ~。こっちに着いたら臨時で人を雇うって聞いてたけど、雇い主がルークス様だとな~」




 使用人の部屋で盛大に愚痴を零すレザレス。誰も聞いていないからといって大胆に主の悪口まで言っている。お爺ちゃんと言っているがレザレスとグレバトスの間に血の繋がりはない。元々孤児院の出身だったレザレスをグレバトスが養子として引き取っていた。


 ただ、彼女の言い分は正しいので否定する事も出来ない。


 ルークスは屑だったのでメイド達にはよく陰口を言われていた。


 レザレスは聞くだけで被害にあったことはない。それもそのはず。グレバトスがレザレスにルークスの毒牙が向かないように仕向けていたからだ。




 しかし、今回のローラント行きではルークスの世話をするメイドが一人もいなかったのでグレバトスはレザレスを連れて行くことになったのだ。




 だが、半強制的に連れて来られたレザレスはあまりいい気分ではなかった。ただ馬車での様子を見る限り噂は本当だったのか疑問に思い始めている。




 メイドを食い物にしている。


 平民の美しい女の子を攫っては自身の性欲処理をさせている。


 婚約者を他の者に犯させて楽しんでいる


 などなどの噂だ。




 実際は違う。手を出そうにも父親の監視が厳しかったのでルークスは手を上げることはあっても手を出す事はなかった。







 そして、現在のルークスは生き残る事に必死なので女にうつつを抜かしている暇は無い。


 なので、レザレスの心配は全くの杞憂なのだがレザレスが気が付くまでは時間を要する事は間違いない。




「今日、夜伽に呼ばれるのかな……うぅ~、嫌だ! 初めては好きな人って決めてるのに~」




 使用人が使うベッドの上でバタバタと足を動かして悶えるレザレス。本人は確定だと思っているがルークスにその気は一切無い。




 レザレスが落ち着きを取り戻した頃、グレバトスとルークスはこれからの事について話をしていた。




「坊ちゃま。まずは屋敷を管理する為に人を雇いましょう」




「…そうだな。当てはあるのか?」




「町で募る予定でございます。料理人、使用人を最優先に集めましょう」




「おい待て。まさか、屋敷にいるのはグレバトスとレザレスだけか?」




「はい。申し訳ありませんが」




(分かってはいたが人望ないな……一応は公爵家の長男なんだから、形だけでもいいから来なかったか……それとも戦争に巻き込まれる可能性を嫌ったか………まぁその両方だろうな)




「そうか。まあ、仕方の無いことだな」




「坊ちゃま……」



「人員の募集はお前に任せる」



「お任せを!」



 やる気を見せるグレバトスはルークスと別れてレザレスを連れて町へと赴く。


 一人となったルークスは地形の確認に勤しんだ。特に川と山の位置は重要だ。


「地図を見る限りクレートの町付近が最初の戦闘場所になりそうだな」



 山と川に町が揃っていて国境まで道が続いている。


「今日はともかく早いうちに実際の現場を確認しに行くか」



 グレバトスとレザレスで人を雇いに行ったが、


「なんで7才~15才ぐらいの女性ばかりなんだ?」


 ルークスが聞いた。もしかしたら年齢は違うかもしれないが見た目はそのぐらいに見える。


「それが男性は徴兵されるか、農作業に駆り出されるらしく………」


 つまり紛争地域なので健康な男性は余ってない。家族が居ればいいが、仕事が欲しいのは身寄りのない孤児院にいる女性となる。まぁ、屋敷の掃除と料理が主な仕事なんだ10才の女性でもできることは多いだろ。力仕事はグレバトスが手伝うだろうし。ルークスはそう判断した。レザレス自身は孤児院出身だ。似た境遇の人ならトラブルも少ないだろう。


 おそらく徴兵や戦闘に巻き込まれることをいやがった人達は他領地に移住したのだろう。引っ越し先がない人を雇っただけなのだろう。というか護衛百人いたよな。さすがに全員を雇い続けるのは予算を圧迫するから数人を除いて到着までという契約だったはずだけど。何人かは護衛として残っているはずだ。まぁ地方軍とはいえ総司令の屋敷に護衛がいないのはまずいか。


「……まぁ力仕事はグレバトスが担当すればいいとして、全員分の制服あるのか?」


 制服と言っても単なるメイド服だが。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る