異世界クエストで現代最強
のんのん
第1話 異世界ナビ
2030年 日本大国。2020年から世界にモンスターが溢れた。異世界小説や、漫画に出てくるようなモンスター。人々は恐れた。異世界に行きたいと思う人々も、このことが起こると、途端に異世界を嫌った。そして、世界は、モンスターに対抗できる防衛隊を作り、それに属している人々をソルジャーと呼んだ。ソルジャーは、下の階級から順にブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナとなっている。そして世界に10人のレジェンドの称号を持っているソルジャーがいる。この物語は、ブロンズソルジャーの笹原 伊吹が晩成していく物語である。
東京渋谷区。高層ビルが立ち並んでいたこの地区も、モンスターがあふれてから、荒地になった場所もある。伊吹はそんな場所に妹と住んでいる。妹の春は高校3年生であるため、20歳となった伊吹が、妹を守ろうとソルジャーになった。両親は、10年前に、伊吹と春を置いて、出て行った。モンスターが出てくる場所は決まっている。東京で言うと、新宿区だ。そこから、モンスターが出てきているのではないかと予想が立てられた。渋谷区はまだ安全な方だ。大阪や、京都なんかの方がずっと大変らしい。だが、ブロンズの伊吹からしたら、関係のない話だった。防衛隊は全部で八つの隊がある。だが、防衛隊に入れるのは、シルバーからである。何回も、階級調査を行なったが、毎回ブロンズだった。つまり最弱だということだ。ブロンズは仕事も与えられない。ソルジャーはブラック企業なのだ。そんな伊吹は、今日もモンスターを探して、新宿区を歩いている。でも見つけたとしても、戦う手段がないため、
「モンスターが出たぞ!!」
という、言葉に対しても戦おうなどと考えなかった。モンスターはシルバー以上のソルジャーが駆けつけて倒してしまっていた。なぜ、こんな世界になったのかそんなことばかり考えていた。こんな生活をもう二年も続けていた。それは単に妹を守るためだが、もう一つは異世界に憧れていたからだ。伊吹は電車に乗り、渋谷区に戻り、家に帰る。家に帰ると、カレーのいい匂いがしていた。キッチンの方から春が、
「おかえりーお兄ちゃん。カレーできてるよ。」
この妹との時間だけが、伊吹の幸せの時間だった。
「もうソルジャーやめよう?」
春はいきなり聞いてきた。お金はたしかに、親戚から貰っているし、何も不自由なことはない。
「いや、やめれない。」
カレーを食べながら濁った言葉を出す。それは、少し、辞めたい気持ちがあったかも知れない。
「私のことはいいから。大丈夫だから。」
なんて素敵な妹なんだ。でも、やめるわけにはいかなかった。妹だけは、守り切ると決めていたから。
「カレーありがとう。」
と言って、2階の部屋に戻る。妹は少し、悲しい顔をした。なんとなく、居ずらくなっていた。スマホを机に置き、ベッドに、横になる。
「はあ〜、いつまでこんなことしてるんだろうな。」
大きなため息をつく。この生活を何年繰り返せばいいのかわからなかった。すると、スマホにピコンッとメッセージが届く音がした。スマホを手に取ってみると、一件メッセージが届いていますと、映っていた。マナーモードにしてるんだけどと考えながら、そのメッセージをタップしてしまった。すると、耳に女の人の声が流れてきた。
『異世界クエストが始まります。受諾しますか?』
と、目の前にゲームのようなメッセージウィンドウと共に、出てきた。選択肢ははいしかなかった。よくわからなかったがはいにしてみようと思った。何故なら少し期待していたから。
「はい。」
『フィールドに移動します。』
すると、一気に体に大きな重力がかかった。どこかに転移しているかのような。そんな感覚だった。重力が元に戻ると、そこは、真っ白な世界だった。何もない空間。
『私は、異世界ナビのアイです。貴方を最強に導きます。』
「え?最強?」
少し戸惑い気味だった。いきなり、変な場所に連れてかれ、最強にしますと言われても信じがたかった。
『あなたは、これから出てくるモンスターを倒すことで、経験値を得るのではなく、相手のステータスを奪うことができます。』
AIのような返しをするが、声は本物の声のようだった。最初は何を言っているのかわからなかったが、アイが言うには、倒したらウィンドウに出てくる相手の奪いたいステータスを選ぶことが出来ると。それを自分のステータスに加算できると。リアルなゲームのようだった。ゲームならやってみるかと思ってしまった。
「で、どうすればいいんだ?」
『毎日クエストをクリアしてもらいます。』
「わかった。」
軽い返事をしてしまった。この後の恐怖をしらなかったから––––。
『フィールド作成します。』
白い世界が、いきなり草原の世界に変わった。便利な設定だなと考えていた。
『クエスト【先代勇者の討伐】』
「え?!」
先代勇者の言葉に過激に反応する伊吹。最初のクエストって言ったら、スライムとかだろって思ってしまった。
すると、向こうに人影が出てきた。鎧を身に包み、白い片手剣を握っている男が出てきた。
「おいおい!本当に始まんのかよ!」
『はい!本当に始まりますよ?アホですか?。』
「ここで、人間の返しすんな!」
すると、その先代勇者は、手のひらを天に掲げる。すると、彼の手のひらの上に黒い炎の玉が発生していた。
「おい、あれ投げてくんのか。」
『そのようです。』
アイは淡々と返したが、伊吹にとっては、一大事だった。先代勇者はその炎を伊吹に投げてきた。
「逃げるしかねぇじゃんか!!」
と、ギリギリのところで避ける。服は少し燃えてしまった。フィールドを走り逃げている。
『逃げても意味ないでちゅよ〜』
とアイは本当の人間のような返しをしている。
「わかってんだよ!俺のステータスは?!」
『あ、これです。』
少し笑っているかの様に言葉を出す。目の前のウィンドウには、全てのステータスは、オール10だった。
「え?オール10?HPも?」
『そのっ、ははは、様ですね。デコピンで死にますね笑笑。』
もうその言葉は笑っていた。わりと見た事のない数字だった。体も鍛えてはいたけど、ヒョロヒョロだったのは、納得がいった。ソルジャーの階級試験は魔力を見るのだが、10ならブロンズだと納得がいった。
「どう勝つんだよ!」
『てへっ。』
走り続けて、逃げていたが、限界に近かった。そして遂に止まってしまい目の前に先代勇者が来てしまった。
「あ、死んだ。」
先代勇者が剣を振りかぶる。この絶望的場面でアイはあるスキルを提示した。
『スキル【
「そんなのあんのかよ!使う!使う!」
死にたくはないため、使うを連呼する。すると、先代勇者が足からスゥーと消えていく。
「倒したのか…」
『スキル【
「まじか、かなり使えると思うんだが…」
少し、悲しかった。そんなスキルがあるならガンガン使えば俺最強になれると思っていたから。するとウィンドウにステータスが出てきて、
『今回は特別に、全てのステータスを会得します。よろしいですか?』
「はい。おけおけ。」
と、適当に返事をしたが、後から考えてみると大分ステータスが上がっている。全てのステータスにプラス1万くらい入った。でも、たかがゲームだろうと考えた。
『スキル【
カッコいい名前だなと軽く思っていた。
『それでは、毎日クエストを終了します。元の場所に戻ります。』
と、また大きな重力がかかる。重力が元に戻る頃には、自分の部屋に戻っていた。
「寝るか…」
体の疲労がすごかった。すぐベッドに入り、寝てしまおうとした。だが、深夜2時くらいだろうか、体に激痛が走った。雷撃のような耐えられない痛みに。
「ああああああああああ!」
朝日が登った。体の激痛がまだ残っていた。でも体が締まったような感覚がした。洗面所で顔を洗おうとすると、鏡に映った人間が、自分だと思えなかった。ひょろひょろだった筋肉が締まっていた。顔も少し変わっていた。というか締まったおかげでイケメンにも見えた。
「昨日のは…本物なのか…」
『そうですよ?』
昨日と聞き慣れた声が煽るように聞こえてきた。
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