短編SS

沢田真

ルーレット回して運任せに生き抜きます!

2020クリスマス用SS クリスマスとはこういうもの

 時は和樹とフレミーが5人の盗賊に襲われて少し時間が経った頃。仮眠をとり休む前に2人で雑談に花を咲かせていた時のことだ。


 「………?急にぼーっとしちゃってどうしました?和樹さん。」


 いきなり黙り込んだ和樹の顔を覗き込みフレミーは声をかける。


 「も、もしかして私とのお話楽しくなかったです?あわわわ…」

 「いや、別にそういう訳じゃなくてだな…その…」

 「それなら良かったです~。じゃあ、なんなんです?気になりますよ~。教えて下さい!」


 フレミーは自分が原因じゃないと分かると慌てるのを止め理由を教えろと詰め寄る。


 「いや、俺達がこうしてるときの話が投稿された時はまだだったけど、今の俺達が話しているのを投稿される日は作者達の世界ではクリスマス当日なんだなーと思ってさ。」

 「はい!?投稿?作者?何の話なんです!?」


 唐突な和樹のメタ発言についていけないでいるフレミー。


 「ん?何だ、知らなかったのか。これが書かれ投稿される日は作者たちの世界はクリスマス当日なんだぜ?」

 「だから作者ってなんなんですか~。書かれてるってこの世界は物語の中なんですか!?」

 「もうそこは良いからさ。とにかくクリスマスだよ、クリスマス。」


 メタのまま強引に話を進めようとする和樹。そこにフレミーは


 「私としては良くないんですけど…。で、そのクリスマスって何ですか?」


 ともう無理だと諦めたのか和樹の話に乗るフレミー。どこか吹っ切れたような表情を浮かべている。


 「クリスマスが分からないか…。あれは元居た世界の宗教から生まれたイベントだからな…知らないのも無理はないというか知ってたら驚きだな。」


 和樹はそう言いイエス・キリストの誕生日が元でなどというような説明は一切せずサンタさんのことだけを懇切丁寧に教えた。その説明では子供だけが信じている存在だというのは意図的に省かれていたのだが。


 「和樹さんの世界にはそんな人がいるんですか!真っ赤な服装でトナカイに空の中でそりを引かせて派手に登場したと思ったら煙突の中から家の中に入っていくなんて…。そのサンタさんという人は随分と大胆な人なんですね~。」

 「ほんとそうだよな…」


 まるでそんな人が実在するかのような説明にものの見事に騙されたフレミー。その反応を見た和樹はいや、そりが空を飛ぶ訳ないだろ。気づけよ。などと内心では思いながらプルプルと震えながら笑いをなんとか堪える。人のことを疑うってことを知らないんだな…


 「けど、寝てる間にこっそりとプレゼントをくれるのはロマンがありますね~。羨ましいです。和樹さんはどんなものを貰ったんです?」


 とさらに追い打ちをかけてくる。ダメだもう耐えられないと思わず吹き出し大笑いしてしまう。


 「え?急に笑ってどうしたんですか?私何か変なことでも言いました?」


 何も分かってないフレミーはポカンとしている。


 「いや、な、ひぃ…それ信じるのは、ひぃ…子供、だけひぃ…だから。」


 と息も絶え絶えに事実を説明する。


 「も~、なんでそんな意地悪するんです!?そうやって馬鹿にして~、あまりいじめないでくださいよぅ。」

 「いや、まさか信じるとは…」


 騙された仕返しにとばかりにぽかぽかとたたきながら言うフレミーに返し続ける。


 「けど、そのサンタさんの恰好をする人が毎年いてな…」


 そこまで言いふとフレミーがサンタコスをしているところを想像してしまい彼女の姿をじっと見てしまう。それで察したのか


 「そ、それは私のサンタさんの恰好を見たいとか思ってる顔です!?」

 「まさかまさか。思ってたとしてもこんなところにそんなものがある訳…」


 そこまで言ったところでパサっと音がする。音がした方を向くとそこにはなんと女性用のサンタさんの衣装が落ちていたのだ。サイズもフレミーが着て丁度良さそうなもので和樹は思わず手に取ってしまう。それを見たフレミーは


 「そんなこと言っといて私のサンタさんの姿を見たいんじゃないですか~!私に着ろと言いたいんですね?そうなんですね?今の行動がなによりもの証拠です。」

 「いや、それはその…」


 図星を突かれしどろもどろになる和樹。そしてこうなったら仕方ないと開き直り


 「ああ。見たいよ。想像しちゃったよ。悪いか?」


 などと口走ってしまう。まさかの和樹の反応に顔を真っ赤にしたフレミーに


 「エッチです~。和樹さんが私のことをエッチな目で見てきます~。」


 と言われてしまう。そんなことを言われたら何も言えなくなってしまうではないか。諦めるしかないかとしょんぼりしていると


 「え、え?そんなに見たかったなんて…。き、着ますよ。だから悲しまないで下さいね?………実はちょっと着てみたかったし…」

 「まじ?着てくれるの?」

 「はい。着ますよ…ちょっと待ってて下さいね。」


 これだけで着てしまうようなお人よしのフレミーはそう言い盗賊との闘いでも見せたスキルを使い地面に干渉し四方に土の壁を作り着替えが和樹から見えないようにする。そうして直ぐにガサゴソと着ていた服を脱ぐ衣擦れの音が聞こえてきる。


 なにこれ…見えてないのにめっちゃエロいんだけど。


 と中で起こってることの妄想をしてしまう。見えないからこそ妄想力を掻き立てられてしまうというかなんというか…。そんな感じでニマニマとしながら着替えが終わるのを待っているとフレミーの周りを覆っていた土の壁が沈んでいく。そうして現れたのは赤い帽子と服,ミニスカートを身に付け白い袋を肩に両手で担ぎ黒のブーツを履いたフレミーだった。まぁ、フレミーがそこにいるのは当然なのだが。


 しかしその姿は見事の一言に尽きるものだった。黒いベルトでウエスト部分を締めているからか装甲は弱いはずの双丘が心なしか大きく見える。それに加えてウエストがとにかく細いのもそう思わせる片棒を担いでいるだろう。折れてしまわないかと心配してしまう程だった。和樹が、あのローブを着ていると腹周りは結構着ぶくれしてたんだな…などと考えつつも目だけはフレミーから離せずその可愛さに見とれていると


 「ど、どうです?可愛いですか?」


 と恥じらいながら聞いてきた。どう答えようか迷っていると


 めっっっっっちゃ可愛いよーーーー!フレミー最高!


 なぜか作者の声が響く。だがこれは仕方のないことだろう。そう思わないならメインヒロインなんかにしないし。


 「だってよ。この世界はおろか俺達のことまで文章で表現している生みの親とも言うべき作者がそう言うんだ、大丈夫なんじゃないのか?うん、まぁ俺もその…良いと思うし。」

 「だから作者って誰なんですか…。けどそう思って貰えるなら嬉しいです。良い経験にもなりましたし着て良かったですね!」


 絶妙に素直になれない和樹を見、その言葉に安心したようでにこやかに笑うフレミーだがはっとしたように言う。


 「それで、この後私はどうすれば…?」

 「え?どうしするって言われても…」


 もちろん何も考えているはずもなく居た堪れなくなり微妙な雰囲気になってしまう。そこで和樹の意識がばんやりとし始め、何が起こってるのかと戸惑っていると浮遊感に襲われ目の前が白くなっていく。





 景色が鮮明になって見えてきたのは太陽がテカテカと照らしつける青空だった。どうも和樹は地面にあおむけになり寝ていたようだ。まぁ、そうだよな。初めて会った女の子がサンタコスなんてしてくれるはずがないし展開がどう考えてもおかしかった。あれは夢、なんだよな…?とやけに鮮明に残ってる記憶を思い起こしながら体を持ち上げる。それに気づいたフレミーは


 「あ、おはようございます!和樹さん。もうお昼ですよ。ご飯を食べちゃったら街に向けて出発しちゃいましょう!」


 と和樹に向かって声をかけてくる。当然のことながら昨夜までの黒のローブ姿でサンタコスはしていないことを確認し挨拶を返すとこんなことを言ってくる。


 「はい。けど昨日の寝る前は楽しかったです。和樹さんが元居た世界の話を教えてもらえて…また聞かせて下さいね?」


 え?昨日の晩って…まさか今見てた夢が現実だったなんて話じゃないよな…?確か寝る前に少し話したんだよな…?と和樹は曖昧な寝る前の記憶を思い出そうとするがどうしても話した内容が思い出せない。フレミーに聞けば良いのだが変な奴と思われそうで聞けずにる。初対面の相手にそう思われるのはきつすぎるからな…。そんな訳でただぼーっと昼食の準備をしている彼女の様子を眺めるしかできずにいる和樹だった。

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