21 復活?
ギルドの入り口へと向かう。そこには多く人であふれかえっていた。ベルが必死に対応しているが、押し負け、苦しい笑みを浮かべている。
これは何とかしないとな。でも、何があったんだ?
ベルの言う通り集まっていたのは一般人であったが、彼らはくわや斧を持っていた。
物騒な一般人だな。
「ふざけんな!」
「金だけ取りやがって!」
そんな声が聞こえてきた。エステルは近くにいたおっさんに声を掛ける。
「あのすみません」
「ああ゛ん?」
「私、ここのギルドマスターをさせていただいている者なのですが、あの…………何かあったんですか?」
「『何かあったんですか?』じゃねぇっ!!」
おっさんはエステルの胸倉を掴む。それでも、彼女は動揺することはなく、おっさんの話を聞いていた。
「てめぇらに頼んだはずの討伐モンスターが戻ってきているんだ!! どういうつもりだっ!?」
「…………討伐クエストは終えているものは、全て討伐しているはずです。復活するなんてことは起きるはずがありません。新たに生まれた魔物ではないのですか?」
「ああ、違う!」
すると、シュナが前に出る。エステルの胸倉を掴んでいたおっさんの手を、パッと振り払った。
「そんなバカなことあるわけないじゃない! 大体あんたに同じ魔物か分かるはずがないじゃないの。だから、マスターに乱暴しないでくれる?」
俺は一瞬シュナが男に見えた。本当にすることは男前なんだよな。身長はガキだけど。
しかし、徐々にシュナが暴れるのではないかと心配の気持ちが生まれてきた。最近分かってきたことだが、シュナは血の気が少し多い。
嫌な予感を察知した俺はシュナを回収。そして、背後にはけていたナターシャに預けた。
「何すんのよー!」と文句は言われたが、彼女の平手打ちは避けれた。
シュナがバックに下がると、おっさんはエステルを睨み、歯ぎしり。かなり怒っているようだな。
まぁ、シュナの言い方がムカつくのは分かるな。うん。
「俺には分かるんだ! 何度も畑をやられたからな。討伐クエストを頼んで、やっと消えたと思っていたのに…………」
おっさんは近くの俺の胸に指を突きさす。彼の目は怒りで溢れていた。
「昨日だ! 昨日! 俺の畑を荒らしたやつが来てたんだよ! おたくらに討伐するよう頼んだはずなのにさぁ! 聞いた話じゃあ、他のところも同じだそうじゃないか!」
男と同じ意見なのか、他の一般人から「そうだ!」「こっちは金を出したんだぞ!」という声が飛んでくる。
ギルドマスターとの契約により、このシルバーローズではニセの報告などはできないようになっている。そんなことをすれば、すぐにマスターに把握される。冒険者人生終わりだ。
まぁ、大体シルバーローズの者が嘘の報告はするはずがない。いい人ばかりだからな。
となると、本当に倒したはずの魔物たちが復活しているということか?
エステルは冷静な表情を浮かべているがかなり考え込んでおり、黙っていた。
「マスター」
「…………」
「マスター」
「…………」
「マース―ター」
「…………」
「マスータァー」
エステルから反応なし。無視されているみたいで、なんかつらい。
俺はもう一度、大声で呼ぶ。
「マスタァー!!」
「ハッ! はい!」
大声で呼ぶと、エステルはやっと反応してくれた。
どうやらエステルは集中すると、周りの音が聞こえづらくなるタイプらしい。
「マスター、復活した魔物を倒せばいいですよね?」
「ええ…………そうですが」
「じゃあ、俺たちでその魔物全部倒しに行ってきます」
「え?」
エステルは「あんたが?」とでも言いたげな驚きの顔をしていた。
いや、そんな顔しなくても。
「な? いいだろ?」
そう問いかけると、ナターシャたちはコクリと頷いてくれた。
俺は「どうですか?」とエステルに促す。彼女は「うーん」と唸ったが、最終的には小さくうなずき、了承してくれた。
「そうですね。確かに最近SSクラスのクエストも4人だけで受けましたから、大丈夫そうですね。スレイズ、お願いしてもよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
「では、お願いします。報酬は後で考えるとして…………もし、討伐が難しそうであれば、引き返してください。その時はギルド総出で討伐を行います」
「分かりました」
多分ギルド全員で討伐することはないだろうが。
そうして、俺たちは復活した魔物たちを討伐することになった。
想像以上に多くの魔物たちが復活していたが、俺たちは2時間足らずで全て討伐することができた。
「でも、なんで倒したはずの魔物が復活していたんだろうな?」
帰り道に俺が発した一言に、メンバーは首を傾げるだけだった。
★★★★★★★★
1週間後、ギルドにはまた一般人で溢れかえっていた。
「また…………復活したのか」
「そうみたいだね」
「じゃあ、行きますか」
「はーい」
1週間後。
「また人がいっぱいだわ」
「また…………復活したのか」
「そうみたいだね」
「じゃあ、行くか」
「「「はーい」」」
ギルド前が人でいっぱいになる度に、そんなやり取りがあった。
しかし、俺たちは復活の原因を探ろうとはしなかった。
原因を探そうにもどうすればいいか分からないし、ぶっちゃけ俺たちで倒した方が早いしな。
そうして、謎の魔物復活が6回目になった日。
討伐を終えた帰り道、女子3人は買い物をしたいということで、俺1人でギルドへ報告しに行くことに。
シルバーローズのギルドにつくと、入り口前には珍しい人が立っていた。
「ベルベティーン、こんなところに来てどうしたんだ?」
ベルベティーンは呆然として立ち尽くしていたが、俺が声を掛けるとハッとして驚いていた。
「スレイズ…………シルバーローズはなんともなかったのか?」
「なんともなかった、とは?」
「いや…………何でもない」
一方的話を終わらせ、ベルベティーンは去っていく。
ウルフハウルのギルドは街の反対側にあるのに、わざわざここまで来るとは。もしや、ウルフハウルも魔物復活で大変なのだろうか?
とぼとぼ帰っていくベルベティーンに、俺は首を傾げるのだった。
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