最上

神無月 皐月

第1話プロローグ

俺は青春を終えた。

高校生活なんて部活動、受験勉強。

そんな毎日のどこに青春の甘酸っぱいものを求められるのだろう。

今屋上に吹いている風のように只々、忙しく通り過ぎていった。

俺が、通っていた東大阪高校は男子校だ。

近所に女子高など存在しない。それどころか他の高校もない。

青春の代表例。

 

文化祭。

誰だよ!ラグビー部に女装させた奴。


体育祭。

めっちゃレベル高いじゃねえか。


修学旅行。

肝試しで冷や汗かいた男にくっつかれる俺の身にもなってみろ。


卒業式。

誰だ?俺のブレザーに鼻水つけた奴。


まぁ、こんなもんだ。


小学校や中学校の女友達?

小学校・中学校の同級生って高校入学したら関係がdeleteされるものだろう?


最後に、青春したと感じたのはいつだろう。

中学の時だったろうか。


「あの、佐伯さえきさん!メアド交換しない?」


「う~ん……いいよ!はい、ここに書いてあるから」


「ありがとう!」

その一瞬だけだったと思う。




これはその後のメールの文面だ。


「ごめん佐伯さん、明日の国語の宿題なにあったっけ?」



「ごめん 携帯電源切れてた! おやすみ」



「大丈夫! おやすみなさい」


返ってくるのはおはよう、おやすみばかりだった。

成長期だから仕方がないが寝過ぎだと思うほどだ。


最初こそ返信に一喜一憂していた。

しかし聞いてしまったのだ……


最田さいだとメアド交換したんだけどさ~」


「きゃ~罰ゲームでも受けたの?」


「違うよ!あのきょろきょろしてる感じキモくてさからかってやろうと思ってさ」


かえで|《ルビを入力…》、優しい~」


「でしょ~からかうために交換したのに、誰が宿題の内容なんか教えるんだよって感じで、電源切れてたって返信しちゃった~」


「マジで!返信してあげるなんて~私ならしないよ」


こんなクラスの女子の会話を聞いてしまったことがある。

女子の優しさって怖い。

俺はもう騙されないぞと学習した。

そんなこんなで、女子と関わるとどこまでも嘘に見えてしまうのだ。


なぜ気持ち悪がられるのだろう?

我ながら決してブサイクではない。

どちらかというと並み以上だ。

学力もそこそこ高い。

事実、難関私立大学である関邸大学かんていだいがく法学部在籍の二年生なのだから。


気持ち悪がられる理由がわからない。

自画自賛するなって?

そういうところが気持ち悪い?


そんなの俺の知るところじゃない。

性格がひねくれていることも含めて自分の性格なんかは好きだ。

だが、馴れ合いや偽りの形は大嫌いだ。

人は群れることで力を得る。

民主主義の基本だろう。

しかし、白を黒と多数決で決めたとしても白に変わりはない。


友達百人できるかな?

自分の個性ややり方を隠してそうなっても果たして本物なのだろうか?

答えは否だ。

自分の性格ややり方を許容してもらえないのならそんな友達いらない。


馴れ合うことはしたくないし見たくない。

リアルが充実している人間の中に俺が入れなかったのはそこができないからだろう。


今ここで風に吹かれている俺はそんな卑屈な考えで青春を終えた。

大学二年生なりたての春。

この先の、働くまでの大学生活。楽しめるのだろうか。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る