占い婆さん
占い婆さんの所に移動している最中、マールに俺達の事情を簡潔に説明していた。
「ええ......王族という圧倒的な権力を持ちながらあえて危険に飛び込んだんですか。ある意味勇者ですね。もっと話を聞きたくなりました」
「うん。下手な勇者よりコイツは勇者をしてるわな」
「いつでも話し相手になりますわよ」
「あっ! つきましたよ!」
何度見ても見るからに怪しい店構えだ。水の都、綺麗な都アリシアには場違いなぐらいの風格をしている。
◇
ハルトは思った。物凄く胡散臭そうな店だなぁ。入って大丈夫なのかと。
よつばは思った。ここは一番信用出来るらしいですの。まあ直接伺ったことはありませんが。
マールは思った。もし霊とか居たら私は呪われてしまうのだろうか。いやまあそれはそれで……
◇
案外入ってみるといい雰囲気醸し出してるかもしれないという一筋の希望を添えながらもこの建物に入ってみる。
その希望は幻想に消えていった。怪しい薬品がぽこぽこ泡を出しているわ、怪しい品がところ狭しに置いてあるわ。とにかく魔女の家と遜色がないぐらいやばい場所だ。
そもそも店の人が怪しい魔女みたいな人なんだけど、この店本当に国公認なんだよなぁ......
「若君に来たらやってくれと言われておるからの。全員無償で占ってやろう」
つくづく思うんだけど、なんで代理王やってるの? もう本物の王になっちゃえよ。そして俺達を援護し続けてほしい。あわよくば俺を要職に取り立ててくれないかな? 欲張り?
占い婆さんの話が始まった。雰囲気に反して声はすごくハキハキしている。
「誤解を生まないように先に言っておこう。人は誰でも限界突破ができる。その可能性を秘めているのじゃ。これから能力を言うが杞憂する必要はないぞ。ではまずハルト殿から......」
ええ......自分の能力を客観視してくれるのはありがたいけど、なんか恥ずかしいな。
「ハルト、ハルト。ちょっといい?」
マールさんが俺にだけ聞こえるような小声で話しかけてきた。俺も同調して聞いてみると......
「この占いお婆さまが使ってるこの紫の水晶玉、普通に故郷でもなんならこの街のギルドにも置いてあった気がする。これって僕達はお金を取られてないからいいけど、普通に詐欺なんじゃ......」
えっ......そういえば受付の奥の方に同じらしき水晶はあったけどまさかね? だって仮にも国公認なんだよ? まさか詐欺やってる......のか?
「多分この世には知らないほうがいい情報があるのかも。一旦この話は終わりにしよう。変に勘づかれたら困る」
俺もマールにしか聞こえないような小声でこう答え、それにマールは無言で頷いた。マールもいろいろ察してしまったようだ。
「それじゃ心して聞きなはれ。ハルト殿」
「あっはい」
あれもう始めるの? しかも俺がトップバッター? 自分が最初?
いやこの際最初か最後か順番は関係ないか。
自分としては第三者の評価はどんな感じなんだろって薄々気になってたからこの際詐欺でもなんでもいいか。いい評価はどんどこい!
「少なくとも中堅クラスの盾使いみたいじゃな。それと攻撃力の向上は期待しないほうがよさそうじゃ。今や不人気な盾使いの使い手だしのう~」
攻撃力の無さは自覚してますハイ。
「確かにポテンシャルはあるが、他を圧倒できるほどの絶対的な硬さは無いし攻撃力もない、中途半端のぉ。良くも悪くもバランス型、平均的ってことか」
「グッ……」
「とりあえず特出すべきところはそんなところじゃ」
この時点で自分の能力をボロクソに言われまくってるのなんだか泣けてくるなアハハ……
これが今の現実、受け入れていくしかないようだ。
◇
その後も自分の解説(もとい精神的攻撃)は続き……
「治癒魔法使えないのかい? 盾武器の最上級の称号持ちでそれ相応の耐久力あるし、初級だけだけど全属性の魔法つかえるのに? なんだかとことん中途半端だのぉ。ハルト殿はこれからどんな未来を辿るのか分からん。まあ自分の可能性を信じなされ。以上!」
今なら引き返せるやっぱり冒険者やめようかな......なんでこんなボロクソ言われなきゃ行けんねん......この分析全て的に当てはまるから何も言い返せんし......
けどどうせ冒険者辞めるなら魔物達に一矢報いて終わりたい。そうでもしないと故郷に帰れないしユウキを見返したい気持ちもあるから。せめて四天王を倒したいな。
「全属性魔法使えるだけでも才能はあると私は思うんですの」
「よつば様は......魔法使いには近いうちになれるだろうが、その先は正直努力次第というかなぁ。水•氷系統の魔法が得意のようだからそこをどれだけ伸ばせれるかか」
「よつばの番か。この占い師はどんな評価を下してるんだろうか?」
とは言ったものの、さっきの指摘された部分について考えていたらいつのまにかよつばの解説は終わっていた。多分最後らへんしか聞いてないと思う。
「魔力と知能以外低水準だからよつば様は得意な所をとことん伸ばしたほうが良さそうだ。今後も励むように!」
「あれ? これで終わりですの? あ、はい」
案外、いや結構良さそうな評価だったのかな? それがなんだって話だが。
「最後にマール殿は、筋力が突出しておるのう。職はクルセイダーで純粋な力勝負では屈強な男共にも引けを取らないくらいの」
あのエルフのマールさん。側から見たらあまり筋肉ついてるようには見えないんだけど、本当にそんな力を秘めているのか?
「魔力は皆無に等しいがそこは関係ないだろう。他も平均並にあるし何も問題ないとは思うがの」
「おっ! 欠点の無いかなり優秀な格闘家じゃないか!」
「剣士だ!」
[速報]マールさんは剣士だった。いや確かにあの婆さんはクルセイダーと言ってたし、現在マールは俺の剣を貸しているけど本来持ってるはずの剣は盗賊に奪われているんでしたね。
それにしても剣士か……このパーティーで重要な攻撃役になりそうだ!
「強いて言えば空間認知能力が低くまともに攻撃を当てれないぐらいか。まあ気にするものでもないだろう」
うん、いや待って?
攻撃が当てれない? ちょっとこれ十分致命的な欠点じゃないの?
少し過去の記憶を辿ってみよう。確かマゾオーク戦のときマールがとった行動といえば、オークに身体をニギニギされた際苦し紛れの腹蹴りを食らわしたぐらいだな確か。
「ウーン……どうしたものか」
とりあえずその空間認知能力とやらを向上させる訓練を明日にでも探してみて、そして毎日実践させてみよう。せめて当てれるようになってもらいたい。
「どれ、これで全員終了じゃ。何も異論はないな? ならさっさと帰った帰った」
ていうかこの占い師なんだろうか......黙って聞いていれば人の苦労も考えず散々言いやがって。言い返せないのが辛いところだがこれはもうのちに見返してやるしかない。
占い館を出たときにはもう夕方だったので、もう宿を取って休むことにしよう。今日は一緒の宿に泊まって、夕飯はあのギルドで食べるとしよう。
◇◇◇◇◇◇◇
次回に続く
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