王様不在の謁見
「へぇ~。いいじゃん! なんか面白そう!」
「ふたば兄様はわかっていますね!」
「......」
今俺の心境をどう表現すればいいのだろうか? なんかもうこれから起こりうる出来事を考えるのめんどくさいし、何かの拍子で話がズレにズレまくって俺が何も不自由なく王国の援助も受け取り生活できないかなって今思ってる。いわゆる現実逃避。
この間に何が起きたのかは話せば長くなるが一応振り返ってみるか。あの兄弟は話をしていて俺は蚊帳の外に置かれている状況だし。
俺達は宮殿に出向いて王様に謁見しようとしたんだが、間の悪いことに王様と第一王子様、ついでに皇后様が他国との戦争で国を留守にしているようだ。そして全面的によつばの行動に肯定派のよつばの兄が代理王として責務を全うしていると......
そういえば俺が勇者様と旅立つ先月ぐらいには戦争が始まっていたし、最近王様の姿を見てなかった気がしたけれど、まさかこんな所で戦争のしわ寄せがくるとは......
「摂政王第二王子ふたば様! さすがにマズくないですか? 大葉陛下とわかば様が帰ってきた後、慎重に会議した方がいいと思いますが!」
そうだそうだ! 王様が居ない今、側近が頼りだ! 若い代理王にもっと言ってやれ!
ていうか、ふたば様と俺って年が2つしか違わないんだな。よつばと同い年だから多分間違ってないはずで、何で国を子供に任せて親は戦争に行ってるんですかね? 部外者がとやかく言う立場でもないわけだけども。
「いやアイツら多分1ヶ月は帰ってこないよ。それに兄上はともかく父上が介入しだしたら絶対おかしな状況になるだろうし。最悪妹が処刑されてしまう事態になったらどうしようもない。というか今は僕が王だ。この問題は僕と優秀な部下達で決めたいなって思ってるんだけど、それでも何かある?」
「異議無し!」
昔からお互い認識だけはしてたけど改めて思う。代理王が強すぎる。この人本当に17歳か? 大人よりも大人やってる感じだ。
「本題に戻るが、妹の件については置いといて貴様の話をしよう。少し調べさせてもらったが、貴様は勇者......冷城ユウキパーティーから脱退しているそうだが、何故だ?」
俺は事の顛末を代理王に話してみた。盾の使い手として勇者様に拾ってもらったこと。だが役に立てなくて最終的に追放されてしまった形になったこと。すると代理王は意外な事を言う。
「勇者パーティーについていけてる時点でそれなりの実力はあるはずなのだが、何故奴らは貴様を手放したのか? 妹が信頼してるのと貴様の顔を見た限り、性格に難はないと思うんだが?」
俺ってそれなりの実力を持ってたの? それを代理王に言われた時点で涙が流れてきますよ。
すると代理王の疑問をよつばが答える形で喋っている。
「我が国の勇者の1人である冷城ユウキは仲間をまるで奴隷として扱うことで有名なのよね。仲間と別れる時は全財産失う覚悟が必要と囁かれてるぐらい。民衆は好青年の勇者として歓迎していたけど、私はなんか無理。何か裏がありそうで怖いですもの。あの人は本当に魔王討伐を目的にしているのかしら」
ちょっと待って? よつばの口から新情報がいっぱい出てきたんだけど!?
ていうか勇者様は今まで俺を奴隷として扱ってたの!? 確かに全財産失ったのは心覚えがあるし、本当なんだろうな......いつか勇者様と俺が出会う日が来るとしたら、その時に聞いてみよう。これで旅をする理由が一つ増えたけど、まあおまけみたいなもんだな。
代理王はというと頭を抱えながら、なんで父上はこんな奴を勇者として送り出したんだ。とぶつぶつ言っている。
多分だけど代理王は名君になれる気がする。王様がどんな人なのかよくわからないけど、もう貴方が王様でいいと思うよ。
「まあ勇者ユウキについては静観の方向でいいな。下手に処罰すると父上の反応が怖いし、一応我が国の勇者に選ばれている男だからな。泳がせてた方が無難だ。それで話を戻すけど妹よ。お前の覚悟は本気なんだな?」
「え? 嘘でしょ? 貴方様もそっち側なの!? よつばの実の兄なのに?」
「好きなようにやらせることになんの間違いがある? それに王族の外遊扱いにしたら解決だろ」
なら大丈夫なのか......? けど正直な話、みんなに笑われるかもしれないけど一応魔王討伐を目標として動いている男だから。当然過酷な旅になる可能性は大いにあるわけで......
「まだ何か懸念事項があるのか? 別に不敬罪にしないし......」
「なぁよつば。やっぱり旅に出るという頭おかしい行動はやめといて、むしろ俺を養ってくれない?」
代理王に聞こえないように小声でささやいたその願いは儚く丁重に却下されてしまう。
ていうか待って! 一旦追いついて深呼吸を繰り返し冷静になれ! 代理王は今頭のネジが外れていて正常の判断ができないでいる。
「そうか、我が妹が心配なのだな。可愛い奴め。なら我が妹相手にエキシビションマッチでもしてみるか? ちょうど暇だったし暇つぶしににはなるだろう」
「はあ? いきなりなんで?」
ほらね? 頭のネジが外れてポンコツ化しとるわ。自分の妹を......ん? エキシビションマッチ?
どうやら俺の実力がどんぐらいなのかを確かめたいらしくこんな提案をしたそうだ。ついでに妹の可愛いところが見たいとか魔法が見たいとか言ってた気がするが......マジでやるんすか?
「もちろん無理にやれとは言わない。エキシビションマッチの醍醐味は賭け事だからな。勝者を応援した者が勝つ」
くそう......代理王と言っても王様だし断る勇気が無いよ......
「いや、やろう。てかもうやるしかない雰囲気だし。それでルールは?」
急に周りが騒がしくなってきた。今まで一寸の狂いなく整列していた傭兵達が慌ただしく動いているのだ。
「ふたば兄さんは昔から変わりませんわね。さあ私達も決闘場に向かいますわよ! 話はそれからですの!」
もう予想外の出来事がたびたび起こっている。もうこれからどうなるんだろうか。
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