第13話 天秤にかける

あの時期のことは正直あまり覚えてない。


悲しかった、というよりは、ひたすらに無だった。

とりあえず迷惑をかけないように学校にはちゃんと行って、しばらくの間家も両親の雰囲気も様変わりした。


なにより、あんなにも取り乱した両親を初めてみた。


あらゆる絶望や苦痛を前にしてなお人は「大人」ではいられない。


等しく無力な人間だと知った。



誰もが心ここに在らず。


すべての思考にいつまでももやがかかっているような。


ただぼーっと あの時ああしていたら、と考える。


あの日ああじゃなかったなら。


ああ、なんでよりにもよって彼だったのかと


一番大きな兄のように優秀なわけでもない


彼のように人に慕われ、手先が器用なわけでもない


連れて行くのなら何の役にも立たない私であるべきだったのにと




より一層、あの日代われたのならと何度もふつふつと沸き返した。


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