第17話 兼ねる者

はじめてその人を知った時。


子どもにかえったかのようにキラキラした気持ちで憧れた。


まるで恋をしたかのように、焦がれた。




どういう人生を生きてきたのか。


そういう専門の勉強をしていたのか。


いつからそんなにうまかったのか。


どんな風に練習したらそんな風になれるのか。



聞いてみたいことも、とにかく憧れて大好きだっていう気持ちも。


置き場所がなかった思いは当時の日記に色濃く彼女の名前を残していた。


何人もの声を使い分ける声色。


かっこいい声も。


かわいい声も。


綺麗な声も。


優しい声も。


それが歌い手さんを知った最初の入り口。



その表現に性別という垣根は存在しない。


どちらかの性別にならなくてもいい、少なくとも表現の中では。





初めてその殻を打ち破ってくれた人。

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