ノート1.15 215,590作品って、どれくらいキャッチコピーがついてるの?

(注意)本作のデータは全て2021年1月19日から20日にかけて取得されたものです。


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「そうだ、京都へ行こう!」


 俺――研究所主任研究員マッドサイエンティスト草薙くさなぎタケルがプログラム言語 Python の開発環境である Jupyter Notebookジュピターノートブック の使い方をあれこれ調べていたとき、幼馴染みのとう景子けいこが何の前触れもなく叫び声を上げた。


「ど、どうした突然。どこか具合でも悪いのか?」

「えぇ。コロナで自粛自粛が続いて、気が滅入ってるの。どこかに出掛けてココロを満タンにしたい! あー、どこかへ行きたいーっ!!」

「もうちょっとの辛抱だよ。我慢しよう、ケイコちゃん」

「私、タケル君みたいに 24 時間戦えません!」

「……さっきから気になってるんだが」

「ん? どうしたの」

「わざと?」

「何が?」

「有名なキャッチコピーを引用しているだろ」

「え、何それ。何のことか本当に分からない」

「天然かっ!」

「ねぇ、キャッチコピーってなんなの?」

「例えば最初のセリフ。『そうだ 京都、行こう。』はJR東海が使用している有名なキャッチコピーだ。『ココロも満タンに』はコスモ石油だし、『24時間戦えますか』は栄養ドリンクのリゲインだ」

「え、そうなんだ。私、全然知らなかった」

「キャッチコピーは人の興味を引くための煽り文句だ。これ 1 つで会社のイメージだったり商品の売り上げがもの凄く変わったりするので、非常に大切だと言われている。ケイコちゃんも、普段は意識してないだけで色んなキャッチコピーを耳にしてると思うよ」

「うーん、言われてみればどこかで聞いたような気もする……。

 そう言えば、カクヨムの小説にもキャッチコピーがあるわね」

「うん。カクヨムにおけるキャッチコピーは、小説のタイトルとは無関係に 35 文字以内で設定することが出来て、小説一覧や検索結果に表示される。タイトル以外でも『読み手』に小説の内容を伝えられるから、とても大切だな。

 実はこのキャッチコピー、検索においても重要な意味を持っているんだ」

「どういうこと?」

「ケイコちゃんはカクヨム小説の検索機能を使ったことがあると思うけど、キーワードで検索される対象は小説タイトル、タグ、そしてキャッチコピーだけなんだ」

「え、そうなの!?」

「小説の説明文や本文は一切考慮されていない。従って、小説のタイトルやタグで同じキーワードを使っていると、それだけ検索に引っかかる率を下げてしまうので留意する必要がある」

「へぇ、そうなんだ……。『書き手』の人は考えることが多くて大変ね」

「と言うことで、今回のテーマは『キャッチコピー』だ。まずは、どれくらいの長さのキャッチコピーが多いか、そのデータを見てみよう」


 ――――――――――――――――

 統計情報:キャッチコピーの文字数別作品数分布(2021年1月20日)

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 0文字:26,608作品 (12.34%, 12.34%)

 1文字:112作品 (0.05%, 12.39%)

 2文字:300作品 (0.14%, 12.53%)

 3文字:449作品 (0.21%, 12.74%)

 4文字:892作品 (0.41%, 13.16%)

 5文字:1,430作品 (0.66%, 13.82%)

 6文字:1,968作品 (0.91%, 14.73%)

 7文字:2,740作品 (1.27%, 16.00%)

 8文字:3,823作品 (1.77%, 17.78%)

 9文字:4,776作品 (2.22%, 19.99%)

 10文字:6,275作品 (2.91%, 22.90%)

 11文字:7,428作品 (3.45%, 26.35%)

 12文字:8,804作品 (4.08%, 30.43%)

 13文字:8,305作品 (3.85%, 34.28%)

 14文字:8,248作品 (3.83%, 38.11%)

 15文字:8,239作品 (3.82%, 41.93%)

 16文字:7,999作品 (3.71%, 45.64%)

 17文字:7,985作品 (3.70%, 49.34%)

 18文字:7,720作品 (3.58%, 52.92%)

 19文字:7,532作品 (3.49%, 56.42%)

 20文字:7,348作品 (3.41%, 59.83%)

 21文字:6,705作品 (3.11%, 62.94%)

 22文字:6,683作品 (3.10%, 66.04%)

 23文字:6,473作品 (3.00%, 69.04%)

 24文字:6,053作品 (2.81%, 71.85%)

 25文字:5,642作品 (2.62%, 74.46%)

 26文字:5,413作品 (2.51%, 76.97%)

 27文字:5,151作品 (2.39%, 79.36%)

 28文字:4,880作品 (2.26%, 81.63%)

 29文字:4,631作品 (2.15%, 83.78%)

 30文字:4,527作品 (2.10%, 85.88%)

 31文字:4,621作品 (2.14%, 88.02%)

 32文字:4,645作品 (2.15%, 90.17%)

 33文字:5,139作品 (2.38%, 92.56%)

 34文字:6,047作品 (2.80%, 95.36%)

 35文字:9,999作品 (4.64%, 100.00%)

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 合計:215,590作品 (100.00%)

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「0 文字ってことは、キャッチコピーがついてないという理解でいいのかしら?」

「その通りだ。約12 %の作品にキャッチコピーが設定されていなかった。もうちょっと多いかなと想像していたけど、ちゃんと設定している『書き手』が多いようだ。

 グラフを見ればすぐ分かるんだけど、この分布には 3 つのピークがある。1 つ目はさっき話していたキャッチコピーが設定されていない 0 文字。作品数としては 1 番多い。

 2 つ目は、35文字の半分よりもちょっと少ない 12 文字。最後のピークは制限一杯の 35 文字だ。これは 0 文字に次いで作品数が多くなっているぞ」

「それだけ『書き手』の人達はキャッチコピーに情報を詰め込もうとしているのね」



「ところでタケル君。キャッチコピーに『○○PV感謝!』とか書いてある作品があるわよね」

「うん。『これだけ読まれてるから面白いよ!』というデータを使った宣伝手法だな。★ はどんなに狭い欄でもちゃんと書いてあるから、『書き手』は 『読み手』にPV数も見て欲しいと思ってるのだろう」

「うーん、確かに。PV数はアクセス数のページに行かないと見られないものね」

「そこでだ。どれくらいの作品がPV数の宣伝をキャッチコピーで宣伝してるか調べてしまった」

「え? なんで? 他にも色々面白い分析があるだろうに」

「なーんか気になっちゃったんだよね」

「あ、そう……」

「正規表現というプログラムのテクニックを使って『PV』、『pv』、『PV』、『pv』、『Pv』――など、PVを表す 16 通りの単語のいずれかがキャッチコピーに含まれている作品だけを抽出して、統計を取ってみた。その結果がこれだ」


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 統計情報:PV 数

 対象:キャッチコピーに『PV』関連の文字が入っている作品

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 総数:1,044 作品

 最大値:15,876,752 PV

 最小値:4 PV

 中央値:10,162.5 PV

(最頻値:5,426 PV)

(平均値:154,779 PV)

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「1 千作品かー。結構多いわね」

「ただし、宣伝とは関係ないものが紛れ込んでるかも知れない。最小値が 4 だしね。今回はいちいち目視で確認はしてないから、この辺のデータは後で修正するかも」

「最頻値が括弧になってるのはなんで?」

「同じ PV 数の作品がほとんど無かったからな。参考値だ」

「なるほど」

「さて、作品全体の中央値が 47 PV であることを考えると、中央値は流石に大きい数字になっている。ちなみに、10,162 PV がどれくらいの位置にいるかと言うと――」


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 10,161PV:1作品 (0.00%, 96.13%)

 10,162PV:1作品 (0.00%, 96.13%)

 10,164PV:1作品 (0.00%, 96.14%)

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「――大体、作品全体の上位 4 %と言ったところだ」

「え、そんなに上の方なの? 実は結構すごいのね」

「正直、こっちの割合を宣伝した方が効果ありそうな気もする。

 さて、『キャッチコピーで PV 数を宣伝することで、本当に効果があるのか?』という興味はあるけど、それを検証する方法をあいにく持ち合わせていないので、今回の考察はここまでだ」

「あらら、それは残念……」




「タケル君が 1 番好きなキャッチコピーって何?」

「うーん、色々あるから迷っちゃうな……。選ぶとしたらこれかな――」


 インテル入ってる(英語:"Intel Inside")


「インテルってよく聞く会社よね。コンピューター関係だっけ?」

「そうだよ。計算機パソコンの心臓部とも言える CPU を製造している企業だ。最近は AMDエーエムディー に推されててちょっと厳しい状態だが……。それはともかく、日本語も英語も韻が踏んであってとてもスマートだと思わない?」

「聞こえがいいわね。よくこんな日本語訳を思いつくよなぁ」

「最近知ったんだけど、逆らしい」

「え」

「日本語が先に発案され、その後に英訳されたと言うのが正しい順番だそうだ」

「へぇ。いずれにしてもすごいと思う。ところで、カクヨム自体のキャッチコピーってあるのかしら」

「『無料で小説を書ける、読める、伝えられる』だな。ホームページのタイトルにも含まれてるし、ヘルプセンターの『カクヨムとは』というページの最初の 1 文にも使われているから、間違いないだろう」


『カクヨムヘルプセンター カクヨムとは』

 https://kakuyomu.jp/help/entry/about_kakuyomu


「そのまんまじゃん!」

「そうかもしれないが、カクヨムの哲学として『伝えられる』というのが言いたかったんじゃないのか?」

「それは分かるけど、リズムが良くない! もうちょっと語呂のいいキャッチコピーを希望!!」

「き、厳しーっ」



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 今日の研究ノートまとめ

 ――――――――――――――――

 ・小説につけるキャッチコピーを調査

 ・キャッチコピーの長さは13文字と35文字(制限文字数上限)にピークがあることが分かった

 ・キャッチコピーで PV 数を宣伝している作品は全体の0.48%、効果は不明

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