ちょっとしたアクシデントで、彼女の眼鏡になってみた☆

代 居玖間

[いっち] 何がどうしてこうなった!?






 ──動けない。


そしてしゃべれない。


どうして? 何が起きた?


いったいどうしてこうなった!?










 早朝のバス停。


路線バスの乗車口で、いきなり逆走してきた女の子。


「あーっ! 忘れ物……。すいません、降りますっ! お願い通して~!!」


どうやら何か忘れ物をしたらしい。


通路の迷惑顔な人混みをかき分けて、乗車口のステップまでやって来た。


そして、見事に足を踏み外したのだ。


階段を昇ろうとする乗客な僕。


降りようと慌てていた彼女。


見事な正面衝突しょうめんしょうとつの事故現場。






 ちょうどバスに乗ろうとしていた僕は、逆走の末にステップから転がり落ちた彼女の下敷きに…………………………


           ────────────そこまでで、自分の記憶は途切れてる。


気付いたときには、身体が制御不能で発声すらできないという現状だ。


……あれっ!? ……もしかしてだけど、あれで呆気あっけなくお亡くなりにとかじゃないよね!? 


自慢の石頭は全く役に立たなかったのだろうか。


困るのだ、今は死んでる場合じゃないんだよ。


焦りまくって混乱したが、ふと落ち着いて考えてみれば……視界は良好だったりする。


そう、視界。


ちゃんと見えている。


そして、音も聞き取れる。


普通は、死んだりしてたら見たり聞いたりできないものな。


大丈夫、大丈夫さ僕。


きっと、最悪の事態じゃないはずだ。





 悶々もんもんと考え事をしていたら、ふわりと身体が持ち上げられた。


おっと、バランスが。


焦っているうちに自分が何処かに引っ掛けられた感覚がした。


目の前に誰かの髪の毛がふんわりとかかる。


その向こう側にあるのは洗面台の鏡だった。


えええぇぇぇぇ────────ナニコレ。


何なのコレ!? 


鏡に映る美少女は、あの時ぶつかり合った女の子。


同じクラスの陸上女子な、夕原ゆうばる 映奈えいな。 


それはいい。いいのだけど、まったくもって理解しがたい。


彼女の顔の一部といっても過言じゃないパーツ……眼鏡めがねと視線が合ったのだ。


フレームレスのオシャレな眼鏡めがね


うん、コレ僕だよね。僕は眼鏡なんだよね。


いったい、何がどうしてこうなった!?













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る