【WEB版】この冒険者、人類史最強です ~外れスキル『鑑定』が『継承』に覚醒したので、数多の英雄たちの力を受け継ぎ無双する~
日之影ソラ
第一章
1.突然の追放宣言
憧れは現実を麻痺させる。
子供の頃、自分は何にでもなれると思い込んでいた。
才能に満ち溢れ、周囲かも期待され、やがて英雄と呼ばれる。
ただの夢でしかないけど、抱くだけなら罪じゃない。
それでも、年々と思い知らされていく。
自分の限界と、周囲との差を。
目を背けても、向こうから入り込んでくる。
現実という名の一撃は、どんな防壁をも打ち破ってくる。
だから、いつかは受け止めるしかない。
最初からわかっていたはずだ。
夢は目覚めてしまえば消えるだけだと――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ユース、お前は明日から来なくていいぞ」
「……え?」
クエスト終わりの酒場、リーダーのレイズからそう言われ、俺の頭の中が真っ白になる。
聞き間違いだと思った俺は、レイズに聞き返す。
「えっと……今なんて?」
「聞こえなかったのか? お前クビだって言ったんだよ」
今度はハッキリと、俺だけでなく周囲にも聞こえる声でそう言った。
わかっていたけど聞き間違いじゃない。
突然のことで、俺は動揺してしまう。
「な、なんで急に……」
「俺たち【シルバーロード】も、この間のクエストで晴れてSランクパーティーになった。これで俺たちも超一流の仲間入りをしたわけだが……ハッキリ言って『鑑定』しか使えないお前は、俺たちに不釣り合いなんだよ」
「そんな今更……」
俺はレイズの言葉を聞いて、ガックリと肩を落とした。
突然のクビ宣言も心に突き刺さっているけど、もっと悲しいことは、俺のスキルの話を持ち出したことだ。
スキル『鑑定』は、道具や素材に触れたとき、対象の情報を読み取れる。
便利なスキルではあるけど、冒険者向きではない。
どちらかと言えば、商人向けのスキルだ。
だから、冒険者の間では外れスキルなんて呼ばれていてる。
そして、俺には『鑑定』以外のスキルがなかった。
どころか、魔法の適性もない。
単純な身体強化くらいは出来るけど、属性の付与された魔法は使えない。
加えて、剣とか武器の才能も欠落していた。
一通り訓練したけど、どれもこれも中途半端。
そんな俺のことを、他の冒険者が万能(笑)なんて陰で呼んでいるらしい。
だけど、彼らは違ったはずなんだ。
ちょうど二年前。
どこにも入れてもらえず困っていた俺に、彼らは手を差し伸べてくれた。
スキルなんて関係ない。
努力している姿を見ているから、一緒に頑張ろうと。
「俺は……ちゃんと貢献してきたはずだ」
「まぁな。正直あんま期待してなかったんだけど、それなりに役には立ってたぞ?」
「だったら――」
「だが、それはお前じゃなくても出来るだろ? というか、お前より出来る奴はたくさんいる」
そう言われると、返す言葉もない。
武器や道具は一通り使えるけど、使いこなせている人には及ばない。
知識で補おうと勉強していることも、活かせなくては意味がない。
「じゃあ……何で俺を入れたんだよ」
「あの頃はな~ 俺たちも弱かったし、募集かけてもだーれも来なかったんだよ」
「そうであったな」
「あたしらみたいな無名なんて、興味ありませんって感じ」
「ですから、どなたでも良かったのよ」
レイズに続けて、他のメンバーが順々に話し出した。
身体の一番大きい男が、戦士のゴードン。
帽子をかぶった女性が、魔法使いのシーア。
お淑やかに笑うもう一人の女性は、僧侶のアンリエッタ。
彼らとも、ずっと一緒に戦ってきた仲間だ。
少なくとも俺は、そう思っていた。
今、この瞬間までは……
「誰でも良かった?」
「そう! 適当に使えそうな奴が見つかったら、そいつを入れてバイバイってするつもりだったんだぜ? でもな、意外と頑張ってるからまぁいいかと思ってたんだよ」
「だが、我々もSランクとなったのだ」
「心機一転ってやつ?」
「新しいお方を迎え入れることにしたのよ」
そんな理由で?
季節の変わり目に、部屋の模様替えをするみたいな……軽い感じで決めたのか。
つまり、俺のことなんてその程度にしか考えていなかったということ。
俺は心が深く沈んでいく感覚に襲われる。
「俺のクビは決定事項なんだな?」
「ああ。まっ、お前ならその辺の雑魚パーティーで活躍できるだろ? 適材適所ってやつだな」
そう言って、レイズはゲラゲラ笑う。
誰も止めないし、一緒になって笑っている。
それを見ていたら、一気に愛着も何もかも消えてしまった。
「わかった。今までありがとう」
「おう! あっ、そうだ! 今日のダンジョンで手に入ったアイテムだけどさ? そこの箱にお前の分も入ってるから持って帰れよ」
「でもこれ……いや、わかったよ」
俺は足元の箱をかかえ、彼らに背を向ける。
大して重くないはずの箱が、今は何倍も重く感じる。
こんなにも一瞬で、人生が転落するなんて、一体だれが予想できただろうか。
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【あとがき】
新作投稿始めました!
ジャンルはラブコメです。
タイトルは――
『学園一のイケメン王子様な女の子が、俺の前ではとにかくカワイイ』
以下のリンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859959844445
良ければぜひぜひ読んでみてください!
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