第37話 僕らは、atmの子供さ
「台風なんて嫌になっちゃうわね」
日本好きのウィルだが、昨今の悪天候には辟易している。
「休校になって嬉しいじゃん?」
風がふいたら遅刻して、雨が降ったらお休みで。
「9月はあやしい季節だからな」
拳に人生を賭けてみようか。
「気圧・・・か」
キョウ子が考え込んでいる。
「くまいちゃん、どうした?」
あだ名で呼び返すススム。別にキョウ子の身長は高くない。
「ヒッショーが身軽なのって、磁力が関係してるみたいだけど、気圧をコントロール出来たら、あたしたちも同じようなことが出来るんじゃ無いのかなってね」
目の付け所がシャープだ。
「キョウ子、その通りだわ。ざっとした計算だけど、たとえば身長150センチならその人の体表面積は約15000平方センチメートル。つまり、身長1.5メートルなら、体表面積は1.5平方メートルということね」
長くなりそうな説明を、一旦とめて様子をうかがうウィル。
「そして、1平方センチメートルあたりには1キロの圧力が掛かるから、身長1.5
メートルの人間なら、なんと15トンもの負荷が掛かってるってわけね」
気圧で人間がぺしゃんこにならないのは、中からも同じ圧力で押し返しているからである。
「気圧って高度によって変わるけど、地上でならそう考えて差し支えないんだったな」
ススムもこのあたりは詳しい。
「話が見えてきたわ。なんらかの方法で、気圧の負荷を減らすことが出来たら、その分カラダが軽くなるかも知れない、という仮説ね」
どことなく、アルキメデス・プリンシプルに似ているかもしれない。
「図鑑で読んだことあるけど、10メートルごとに1ヘクトパスカル減るらしいから、100キロ上空のカーマンラインでは、ほぼ無気圧だね」
この計算にのっとるなら高度10キロで気圧が無くなるはずだが、登山家向けのおおよその指標なのだろう。
「身軽になる理屈は分かったが、空を飛べる方法が分からないな」
これを発見したら、文句なしのノーベル賞であろう。
「低気圧は上昇気流を生むわよね。その辺がヒントになりそうなんだけど」
雲を掴むような話である。
「左回転とかね」
低気圧は、中心に向かって、反時計回りに空気が流れ込む。
ミドルが羽生君ばりに左ターンをはじめると、なんなく10回転ジャンプを成功させた。
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