第14話 ドゥニア・ゲランガン

「そろそろ良いじゃろう」

雲水は右足だけでふわりと身を起こした。


「ミドル、ススム!」

圧のある師匠の声に、弟子たちは手を止めた。


「お前たちの修行の成果を、試してみる時期じゃ」

ミドルは拳を手に打ち付けた。


「ワクワクするなあ、ススム!」

「ああ、俺たちもこの数ヶ月でずいぶん成長したんじゃないかな」


「なに、生意気言ってんのよ! あんたたちよりも強いやつなんてゴロゴロいるんだから! 世界は広いのよ!」

ウィルなりのエールであった。


「太平洋に浮かぶ巨大リゾート施設、スター・アイランド。そこで開かれるドゥニア・ゲランガン(世界闘技場)に、腕に覚えありの猛者たちが集まる」


「不足は無いですね」

威勢のいいことを言っているが、ミドルの脚は震えていた。


「スター・アイランド! そうか、ハイパーループが開通して、格段にアクセスが楽になったんでしたね!」

ススムは鉄道マニアでもある。


「はは、やったね! 俺たちも優雅にハイパーループでスター・アイランドに直行だぜ!」

ミドルは豊富な駅弁メニューを思い描いていた。


「お前は何を言っておるんじゃ」

雲水が真顔でとがめる。


「ええと、まさか・・・?」

メシヤとススムは額に汗をかく。


「泳いで行くんじゃよ」

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