タカラcanチューハイ
「酒の大沢」
での仕事は大体こなせるようになってきた。
僕(鵜飼大輔)がこの店に来てすぐの時には、ビールの見分けすらできなかった。
でも、今ならクリアアサヒとクリアアサヒ贅沢ゼロの見分けは完璧。
というかビールの名前を言われたら、すぐにパッケージ絵が頭に浮かんでくるようになっている。ビール、発泡酒、新ジャンルの違いは……
はだか祭りの時に苦労した二本縛りもできるようになっている。
まぁ、天音のように早く綺麗に仕上げるとは程遠いから、毎日の練習はまだまだ続きそうだ。
他にも包装とか熨斗書きも一応は出来るからこの店で必要なスキルは大体揃った。
ただ、酒の知識がまだ足りないからおすすめを聞かれると天音に頼りがち。
いつかは僕だけで選べるようになりたい。
こんな感じに色々なスキルを身に着けたおかげで自信が付いてきた。
以前、天音に教わったやれることを全部やっていれば、そのうち自信が付いてくる。
まさにその通りだ。
ワンカップお兄さんが来たら、本当だったと教えてあげようかな。
今日はGW最終日。
一般の人からしたら天国のようなこの時間も、僕たち小売店や飲食店にとっては地獄以外の何物でもない。
狭い店に溢れかえる客、客、客、客。
その地獄のせいで連日、馬車車のように働き続けている。
でも、それも今日で終わりだ。
明日は久しぶりの休み。
今日も一日頑張るぞい!
あっという間に時間が過ぎ、あと少しで昼休憩の時間となる。
チーン
「いらっしゃいませ」
店に入ってきたのは少し酒の匂いがするおじさん。
そんなお客さんは日常茶飯事だからもう慣れた。
他にお客さんがいないから、少し気を抜きながら会計を待つ。
それから、数分でおじさんは会計にやってきた。
その手には一本の『タカラcanチューハイ』が握られている。
タカラcanチューハイは確か、超が付くほどのヘビーユーザーがいてその人たちのおかげで他のチューハイよりも高価だが売れている。多分、この人もそのうちの一人なのだろう。
こんな風にお酒の知識が頭に浮かんでくるのも常になってきた。
これが職業病なのかな?
おじさんは、それをレジカウンターに置く。
僕はいつもするように置かれた商品のバーコードを取ろうと、商品に触ると———
「おい! お前なに触っとるんじゃ」
いきなり店の中を轟かせるような怒鳴り声を浴びせられる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます