サントリーラム ゴールド ③
「お兄さん来ましたよ~!」
店に来たのは最近店に入り浸るようになった中町たまきであった。
あれほど、目立つから私服に着替えて店にこいと言ったのに、またセーラー服で来てる……
あとで注意しておかないとなぁ
受験に響いたりしたらかわいそうだし。
セーラー服の女の子の登場に男性は面食らっている。
まぁ、こんな酒屋に子供が来るなんて考えてなかっただろうから、僕も同じ立場なら驚いただろう。
「す、すみません。うちのえーっと……」
たまきのことをなんて説明すればいいのだろうか?
最近知り合った中学生?
それとも、友達?
恋人?
うーん、どれもしっくりこない。
ふと、今の状況を丸く収められそうな呼び方を思いつく。
「うちの妹がすみません」
簡単に説明できそうなのがそれしか思い浮かばず、とりあえず妹ということにした。
「お兄さん」とたまきが呼んできたのもちょうどいいし。
僕が妹と説明すると、男性は納得したような表情を浮かべる。
チク、チクチクチク、チクチク
だが、違う方向からの視線が痛い。
知らんぷり~ 知らんぷり~
「すみません、お話戻しますね」
たまきの登場によって途切れていた話を戻す。
「ねぇ、どんな話していたの?」
話を戻そうとしていたのに、全くたまきは……
「何度もすみません。妹には深く注意しておきます」
妹と言うたびに何か刺さる気がするが、それよりもお客さん優先だ。
気分を害さないように繰り返し謝罪する。
「いや、大丈夫。ちょうど女性の意見も聞いてみたかったから、妹さんにも意見を聞いてみてもいいかな?」
「お客さんがそうおっしゃるんでしたら……」
くいくいとたまきを手招きして、状況を簡単に説明する。
説明が終わるとたまきは目をキラキラさせ始めた。
女の子は人の恋話が大好きらしい。
どうやら、たまきもご多分に漏れないようだ。
「何でも聞いてください!」
自信満々にそう言い放つ。
すると、男性はたまきに質問を始める。
「記念に何か買いたいんだけど、何がいいかな?」
「二人で使えるものが良いと思います!」
「二人で使えるものか~」
その言葉に僕も、男性も考え始める。
この男性は酒が飲めないのだ。
でも、ここは酒屋。
売っているのは酒に関するものだけ。
たまきの言う二人で使えるようなものは、この店で見つけるのは難しいのでは。
そうなると、男性は他のお店に行ってもらったほうがいいことになるのだが、折角ここに来てくれたのだから、何か選んであげたい。
「たまき、このお客さんお酒が苦手なんだそうだ。それだと難しくないかな?」
男性に聞こえないように、たまきにヒソヒソ話しかける。
「そうですか?」
僕の気遣いなど気にせず、普通に答えてくる。
「だってさ、ここは酒屋だよ!」
思わず普通の声量でそう返してしまう。
すると、たまきはきょとんと首をかしげる。
「別にお酒にこだわる必要なくないですか?」
彼女にはいまいち伝わっていないようだ。
もう一度、説明しないといけないのか……
あっ! あれならいいかも
彼女の言葉をきっかけにあることを思いつく。
「お客さん、良いものがありますよ!」
男性を置き去りにして、僕は店の奥へと走る。
目当ての物を取ると、男性の前に持っていく。
それから、思いついた考えを説明する。
しばらく説明を続けると———————
「それに決めたよ!」
男性も納得してくれたようだ。
「一緒に、このお酒もどうですか?」
キラキラと黄金色に輝くお酒を勧める。
「綺麗だし、それも一緒に包んでくれるかな?」
「畏まりました」
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