キンミヤ焼酎 ③
チーン
「「いらっしゃいませ」」
配達が済んだ天音が店に出てくれている。
彼女が商品の補充をしてくれるので、僕はレジに専念できる。
「ありがとうございます」
というか、お客さんが多いから専念せざる負えないってほうが正しい。
嫌なお客さんが多いせいで、考えるだけでイライラしてくるから、脳死作業のように業務をこなしていく。
僕がこの店に来たばかりの頃から、だいぶ日が伸びたが既に日が沈んでいる。
少し延長したがやっと、店を閉められる。
ガ、ガ、ガ、ガ、ガ
とシャッターを下ろす。
シャッターが下りきると気が抜けて「はぁ」とため息が勝手にこぼれていた。
それと同時に—————————
「大輔!!!!」
とてつもなく大きな怒鳴り声が店中を包み込む。
ほとんど反射で声のするほうへ顔を向ける。
そこには、鬼の形相の天音が。
「何です?」
ここの店に来て初めて、こんな風に怒鳴られた。
でも、怒鳴られる心当たりがないから。
「何です? じゃねぇーよ。お前、さっきまでのはなんだよ」
「はい?」
「だから、午後からずっとお前の様子を見ていたが、なんだお前の態度は。
ふてくされたような顔して接客しやがって。それに加えて、段々「ありがとうございます」すら言わなくなりやがって。やる気がないならここから出ていけ!」
「なんでそんないきなり。僕はいつも通りにやってました!」
「そうか、そうか。なら今すぐ荷物まとめろ。一時間後に連れて帰る。
良いな?」
僕の返事も待たず、天音はズカズカと足音を鳴らしながら、母屋の方へ。
「何だよ……」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あっ」
いきなり怒鳴られたことへの驚きと軽いいじけのせいか30分以上その場に立ち尽くしていた。
ふと、我に返る。
「なんで天音さんはあんなに怒鳴ってきたんだろう?」
冷えた頭でその理由を考える。
天音には理不尽なところ多々あるが、噂に聞く会社の上司のように無意味に怒鳴る。
なんてことは絶対にしない。
怒鳴るのには何か理由があるに決まっているのだ。
僕が何かをしてしまった……。
でも、何をしてしまったのだろうか?
「あ、天音さん」
母屋でイライラしている彼女に話しかける。
「なんだ? もう準備できたのか?」
もうすでに彼女の中で連れて帰ることは決まっているようだ。
でも、僕はまだここにいたい。
まだ、何も見つけられていないのだから。
「天音さん! すみません。僕の悪かったところを教えてもらえませんか?」
素直に頭を下げる。
すると、彼女は「はぁ」と大きなため息をつく。
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