ドラゴンの病気に関する考察

惟名 瑞希

第1話



ドラゴン




 筆者の作品「わたし、九尾になりました!!」にも登場する、架空の生物である。




 Wikipediaでは、『ドラゴンは、ヨーロッパの文化で共有されている伝承や神話における伝説上の生物である。その姿はトカゲあるいはヘビに似ている』との記載がある。




 私の作品においては、モンスターと獣医療がテーマとなっているため、ドラゴンに起こりうるであろう疾病に関して、本項目でまとめてみようと思う。(あくまで筆者の考察になるので、あしからず)




 なお、筆者が、英文を読むのは流石に面倒だったので、主にドラゴンの定義に関しての参考元がwikipediaである事は、重ねて注意しておきたい。




 まず、ドラゴンの定義から始めていこうと思う。




 前述のwikipediaにも記載されているように、近年のドラゴンは非常にトカゲなどの爬虫類はちゅうるいに似た特徴を持つと考えられる。そこで、ドラゴンを、爬虫類から進化した生物と定義し、本稿では身体における特徴も爬虫類と大きく変わらないと考える。




 これは『作品によって相違点が多いが一例を挙げる。卵生で、宝石や黄金を好み、山岳地の洞窟などに巣を作る。知性は非常に高く狡猾こうかつで、人語を解する。体中の部位に強い魔力があり、自らの意志で魔法を使うこともある。また、非常に硬い鱗を持っており、並の剣では歯が立たないと言われる。極めて長寿とされる』というwikipediaの記載からこのように定義づけをした。(魔力とかは置いておいて)




 まず一般的な哺乳類と爬虫類(本稿ではトカゲ亜目を扱う)において、相違点を考えたときに、爬虫類の特徴として次のようなものがあげられる。




卵生らんせいである


変温動物へんおんどうぶつである


・単性生殖も可能


・2つの陰茎いんけいを持つ(半陰茎)


・リンパ心臓と呼ばれる器官を持つ


膀胱ぼうこうを欠き、尿は半固形(哺乳類の尿素とは異なり、尿酸として排泄)


・肛門はなく、尿、便、卵も精子も全て、総排泄腔そうはいせつこうから排出される


・鱗を持つ(角質層かくしつそう


頭頂眼とうちょうがんと呼ばれる、第3の目を持つ(ものを見ることは出来ない)




 つまり、ドラゴンも、似た様な特徴を持っていると仮定する。なにやら、単性生殖や、2本の陰茎と言ったところでまた新しい薄い本が出そうだが……げふんげふん




 また、食性であるが、爬虫類は肉食から草食まで幅広い食性を持つ種が存在している。草食性のトカゲの代表としてはイグアナがあげられるが、あまり動かないという特徴をもつ。また、ドラゴンの身体が非常に巨大である事を考えると、活発に活動するためのエネルギーをまかなうために、草食である事は考えづらいため、肉食であると仮定する。




 こうしたときに、ドラゴンに起こりうる可能性のある疾病を考えた。




①外傷


 これは語るまでもない。戦闘による外傷である。




②寄生虫疾患


 野生化の爬虫類には寄生虫がほぼ寄生しているといっても間違いではない。寄生虫にも身体の体表に寄生する、『外部寄生虫』、および、身体の内側に寄生する『内部寄生虫』の二種類がある。




 外部寄生虫は、ダニやマダニと言った虫があげられる。治療方法として、イベルメクチンと呼ばれる駆虫薬を投与する事、また、オリーブオイルを塗布して、マダニを窒息させるなどの方法がある(現実的には難しそうだし、駆虫薬も滅茶苦茶投与しなきゃ効果がなさそう)




 内部寄生虫としては、条虫、線虫と言ったものが中心となるだろう。ドラゴンは長寿であるという定義から、おそらく沢山の寄生虫が存在していると考えるのは容易である。(おそろしい)




 治療法は、同じくイベルメクチンや、駆虫薬であるプラジカンテルなどがあげられる。




③細菌・ウイルス感染症




 一番の細菌感染の原因となり得るのはやはり外傷であろう。外傷部位から細菌が侵入し、体内で増殖、病変部の鱗の変色や、敗血症による死亡も可能性として考えられる。また寄生虫と同様に、胃腸炎を起こすと言ったことも考えられるが、これは抗生物質の投与や、補液といった治療で十分に完治が期待出来るだろう。




 一方でウイルス疾患は治療が難しそうであり、健康個体との隔離が重要となる。ドラゴンは基本的に群れていないようなので、まあおそらく感染拡大による大量死はないだろう……たぶん。




④日射病




 変温動物である以上、おそらくドラゴンも日光浴は必要であろう。紫外線を十分に浴びなければ、ビタミンDが不足し、低カルシウム血症や、低リン血症を誘発、骨疾患がひきおこる。地中深くにいるドラゴンは骨疾患も多そうである。




 一方で、日光浴のしすぎによる日射病も発症しうる可能性がある。ただでさえドラゴンは過酷な環境に生息することが多いため、高温環境では日射病が発症しやすくなるだろう。症状としては、突然、呼吸が浅くなり、口や鼻から泡を吹き出すそうだ。中には中枢神経麻痺や、大脳皮質に影響を与えることもあるらしい。日射病といって舐めてはいけない。




⑤骨折




 これは言うまでもない。安静が大事である。




卵塞らんそく




 栄養状態、感染、ストレスなどによって引き起こされる。卵塞は外科治療が適用であり、野生化で起きたらどうするのか、それは筆者も計り知れない。




⑦脱皮不全




 乾燥環境では、脱皮不全が起こりうる。脱皮不全では、末端部を締め付けることで、虚血性の壊死がおこることもある。尾や指が壊死しているドラゴンはおそらく、脱皮が上手く行かなかったのであろう。




⑧痛風




 さて、先に述べたように爬虫類は窒素の代謝産物を、哺乳類とは異なり、尿酸として排出している。そもそも窒素はDNA等に含まれる、核酸を構成する物質であり、生命には欠かせない。主に窒素はアミノ酸というタンパク質を構成する物質として、生体内に取り込まれる。肉食を中心とする、動物では、主な栄養源はタンパク質となるため、余剰窒素の排出は肉食動物にとって重要な機構である。




 一方で尿酸は尿素とは異なり、腎臓から排泄するためには大量の水が必要となる。そのため、高タンパク食、あるいは脱水状態に陥ると、腎機能の低下に結びつきやすい。腎機能が低下した結果、尿酸は体外へと排泄されずに、体内に結晶として沈着する。おそらく、長寿のドラゴンは大体痛風なんじゃないかと筆者は考える。




 さらに、尿酸の結晶が腎臓に沈着することにより、痛風腎と呼ばれる炎症を引き起こす可能性がある。結果、慢性腎不全状態へと移行し、尿毒症と呼ばれる状態になるだろう。尿毒症は血中の窒素が高濃度で持続する事に起因する疾病で、中枢神経の異常や、嘔吐、呼吸異常といった臨床症状が現れる。




 筆者は、おそらく長寿のドラゴンの死因の一番は、この慢性腎不全からの尿毒症によるものだと考察した。




 しかし、ここで、筆者の友人から一つの指摘を受けたのだ。




『長寿なら、腫瘍しゅようとかも多そうだよね』と!




 たしかに……




 腫瘍は、『生体自身に由来する細胞の異常増殖』や、『体細胞が自律的に過剰増殖してできた組織の塊』などと言われるが、正確な定義はなされていないようである。またWillis, R.A.は腫瘍を『新生物』と名付けた。




 一般に『癌』と呼ばれるものも腫瘍の一種であり、悪性の上皮性腫瘍じょうひせいしゅように限定して、『癌』と呼ばれる。




 そもそもなぜ、腫瘍が発生するか、癌遺伝子がんいでんしと呼ばれる遺伝子が活性化することによって、正常を逸脱した細胞増殖が起こることに起因すると言われる。他にも、内因性物質ホルモンや、加齢による免疫力の低下、放射線によるDNAの傷害、微生物によるものもあるが、本稿では説明を省略する。




 腫瘍細胞は、日々発生していると言われるが、正常な生体においては、免疫系であったり、癌抑制遺伝子によって、発生した腫瘍細胞を除去している。一方で、老化による、免疫低下や、外因性原因によって、除去しきれなかった場合、腫瘍細胞の異常増殖が起こり、腫瘍となるといわれる。




 確かに、長寿であるドラゴンにおいても、死亡原因として腫瘍は大いに考えられるであろう。




 しかし、ここで筆者は一つの報告を発見した。




『再生力の高い、イモリという動物では、眼などの一部の器官において、癌にならない』という研究である(https://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/003/st_2.html)




 すなわち筆者は、非常に再生力が高いとされるドラゴンにおいては、腫瘍が発生することは希なのではという、結論に至った。




 最後に、このような、筆者のとんでもない妄想に付き合って頂いたこと、皆様の貴重な時間を割いて頂いたこと、深く感謝申し上げます。また、参考文献が新しいものが見つからなかった為、古い情報となっている可能性がありますので、その点に関しても一言述べておきます。何か、間違っている点、あるいはこんな空想上の動物はどうなんだ!等ありましたら、是非ご指摘・ご感想頂ければ幸いです。




もし、興味を持って頂けたなら、筆者の作品も目を通して頂ければ私が喜びます。こんな感じの妄想を垂れ流しています。








『わたし、九尾になりました!!』


https://kakuyomu.jp/works/1177354054934611968




 




参考文献


wikipedia『ドラゴン』


LLLセミナー出版 爬虫類医学ガイドブック


小家山仁 他 著 爬虫類・両生類の臨床指針 株式会社 インターズー


日本獣医病理学会 編 動物病理学総論 第3版 文永堂出版

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