3つ目のオリオン
ひょうや
第1話 目覚め
突然の光。それはとても強く白い光だった。僕を照らすそれはだんだんと大きくなっていき、僕は目の前で扉が開いていることに気が付いた。
「ん、んん…」
特に意味のある言葉を発するつもりも無かったが、喉が渇いて上手く発生は出来そうになかった。手足は…動く。全身の関節に軽い痛みはあるものの、特に問題ないようだ。
「あ‘-あ‘-」
掠れてはいるものの、何度か声を出していたら普通に喋られるようになってきた。僕は、そこで初めて周りを見渡して自分がどこに居るのかを知る。知るといっても、ただ状態を把握するだけだが。
「これは…箱?機械?」
誰に話しかけるでもないが、つい声に出して聞いてしまった。特に返答はない。僕はどうやら縦に置かれた箱のような中に居たようであった。箱の内側は柔らかな素材が張られており所々で明かりが点滅している。
「よいしょっと」
まだ硬さの残る体を無理やり動かして一歩前へ進む。箱から出た先は、大きな開口部のあるビルの中のようであった。開口部はかつて窓だったのだろうか?そこから見える景色は全て緑で覆いつくされていた。
「ここはどこだろう…」
後ろを振り返ってみるとそこには、今まで自分が入っていた箱がある。箱の周りには、様々な管などが繋がっており、何かの機械であることが分かる。周りを見渡すと一定間隔で同じような箱が全部で10台ほど並んでいるが、扉はすべて開いていた。僕は、順番にその箱を見て歩いた。どうやら自分の入っていた箱以外、今は動いていないらしく、内部に光の点滅は見られなかった。また、一つを除いては内部に大量の埃が溜まっていた。
「つい最近まで、この箱も動いていたのか?」
どうやら僕以外にも同じような状況に置かれた人間がいたらしい。もし、僕に対しての敵意が無いのであれば、一度会ってみたいと思った。ふと、自分の入っていた箱の扉前面に目が行く。そこには、少し読みにくいが埃を指でなぞって書いた文字があった。
「私が先に産まれて1年がたった 早く会いたいな」
「あと半分 もうちょっとのガマン」
「あと1カ月だね 本当にたのしみ」
「ごめん
最後の「ごめん」の後は、何かを書きたかったようだが途切れていた。扉の前面にモニタの様なものがあり、そこには今は大量の0が並んでいる。どうやら、扉が開くまでのカウントダウンが表示されていたらしい。僕のことを待っていた隣人は、僕よりも1年前に箱から出て、僕に気づき、僕のことを待って、そして移動しなければならなかったらしい。その理由は僕には分からないが、「ごめん」の後の様子から、急いで移動したことが分かる。移動したというよりは、逃げたと言った方が良いのだろうか。
「せめて手がかりでもあればいいんだが。」
それからしばらくの間、僕はその部屋の中を歩き回り、何か無いか探したが、これといった収穫は無かった。そんな状況でも、いくつか分かった事もあった。まず、この部屋は相当に長い時間放置されてきたのだと言うこと。また、これらの箱は僕の想像をはるかに超える代物だということだ。その証拠として、部屋の中で木の棒のような物を見つけた時、僕はそれを拾おうとしたが、触った瞬間に粉になって無くなってしまった。また、部屋の片隅に壊れた小さな机とノートが落ちていたのだが、ノートに書いてある数式が僕には全く理解できなかった。悩んだが、ページはめくらない事にした。
「ここにずっと居ても仕方ないか。」
僕はそう呟くと、部屋から外へと続くであろう扉へと向かうことにした。
3つ目のオリオン ひょうや @hyouyakun
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