坂道はいつも僕を助ける

かみむら。

1章 君は君らしく〜生きていく自由〜

 人が溢れかえる交差点。そこを私は斜め下を見ながら歩く。私の悪い癖だ。人の顔が見れず、コミュニケーションをとるのが苦手な私。勇気を出して顔を上げるが、すれ違う人すべてが同じに見えてしまう。多分その人たちも私のことを道行く人たちと同じに見えているのだろう。

私はその世界に息苦しさを覚えた。

なんでだろう。


 イルミネーションがキラキラと光る冬の寒い街。そこをいつものように斜め下を見ながら歩く私。17歳の私は高校最後の冬を曇った気持ちでいた。

親に勝手に進路を決められ、教師には期待していると言われる。大人たちに決められた自分の未来。私にはやりたいことがある。だが、親や先生のことを裏切りたくなく何も言わずに従うしかなかった。


 家に近くに連れ、足取りが重くなる。家に帰れば家庭教師が待っている。夜になればピアノのレッスンがある。明日の朝は学校で朝から勉強会。また家に帰る。その生活を毎日作業のようにこなすだけの毎日。

私はロボットのようだった。

そんな毎日を脱出するために、人生で初めて親に嘘をついた。


 「お母さん、明日から友達と勉強合宿行きたいんだけどいいかな?」

「勉強よね?いいわよ。そのかわり毎日連絡はすること。わかった?」

「わかった。ありがとう。お母さん」


翌日、私は東京にいた。エントリーナンバー17番、、、

親に嘘をついてまで、アイドルのオーディションを受けるために東京まできていたのだ。

オーディションを終え、泊まるホテルまで歩いている途中。電話がなった。

お母さんからだ。

「もしもし?お母さん?」

「あ、もしもし?あんたお母さんに隠してることあるでしょ?」

少し怒るような口調で話す母の言葉に私はいつものロボットの私に戻っていた。

「ごめんなさい。今から帰って事情を説明します。ごめんなさい」

電話を切ると、目の前には大きな坂道があった。電話のせいか坂道を登る足取りがとても重かった。すると、また電話がなった。知らない番号からだった。

「はい。もしもし。」

「もしもし、私、、、」

「え、、、」

慌てて電話を切り、私はある場所へ向かった。


 私はある会議室の前で緊張しながら部屋のドアをノックした。

「どうぞ。」

「失礼します。」

会議室に入るとそこには、さっきまで私が受けていたオーディションの審査員の人が3人とお母さんが座っていた。

「こちらにどうぞ」

「失礼します。」

そっと私は腰をおろした。

「先程、電話でも伝えましたが、オーディションは不合格です。書類選考の時の親御さんの同意の欄が1人だけ空欄でした。なので親御さんに連絡させてもらい、先程東京まできてもらいました。」

「すみませんでした。あの、」

私が話し出そうとした瞬間

「あの。娘をなんとかアイドルにしてあげられないでしょうか。お願いします」

母が頭を下げてくれた。

「お母さん、頭を上げてください。話しにはまだ続きがありまして。」

審査員の1人が言うと母が頭を上げた。

「娘さんは今回のオーディションは不合格ですが、、」


 会議室を後にした私と母は駅に向かうため歩いていた。沈黙が続き歩いているとさっき電話を貰った坂道の前まで来ていた。すると、母が

「あのね。ごめんね。あなたの自由を奪ってばっかりで」

「え、、」

母の以外な言葉に私は驚いた。

「受験もしなくっていい。自分のやりたいことをやりなさい。お母さん、応援するから。ファン1号ね」

母は私に見せたことないような優しい笑顔で私の頭を撫でてくれた。


「お母さん。娘さんは今回のオーディションは不合格ですが、新しいアイドルグループを作ってそこに入ってもらいたいと思っています。後日また連絡させてもらいます。」

審査員の言葉に私は涙が止まらなかった。夢が叶った。

母も隣で私と一緒に喜んでくれていた。


坂道を歩き出す私。だが、さっきよりも足取りが軽かった。夢への坂道、それが更に軽くなって早く進めた。


 夢を見ると、たまに孤独になることもある。だが、諦めたら私が生まれてきた意味はない。私は私らしく生きる自由がある。

背中は誰かが押してくれる。それがいつになるかわからない。それを待っていたら夢は消えてしまう。なら、孤独でもいいから夢に進め。そしたら必然的と誰かが背中を押してくれる。

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