あまやどり -幻想少女譚-

梨月あのと

第1話 雨ざらし

 一方は崖、一方は海に面した1.5車線にも満たない道路にて、彼女は色のない傘を差し、ごうごうと降りしきる雨の中で立ち尽くしていた。白いシューズと青い体育ジャージはアスファルトの地面から跳ね返ってきた雨でひどく濡れていた。傘にあたった雨粒はいくつも集まり大きくなって流れ、傘を離れて重力に沿い地面に落ち、水面波を発生させる。

 彼女はそれを眺めて呟く。

「……よりにもよってこんな日に」

 視線を水面波から向けた先、白い布にくるまれた人間のようなものが1つ、道路の真ん中に倒れていた。

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あまやどり -幻想少女譚- 梨月あのと @naorange_45

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