プロポーズには気を付けろ

麦野 夕陽

想定外

 彼女と付き合いはじめてから、はや数年。


 彼女と結婚しようと思う。理由は語り出すと止まらないから割愛だ。


 肝心のプロポーズはまだ。


 プロポーズといったらサプライズ、サプライズといったらプロポーズだろう。


 なんてロマンチストなオレ!!




 計画はこうだ。


 彼女とは同棲しているから、夜、彼女が寝静まったら左手薬指に指輪をはめておく。


 朝起きれば左手に輝くリング! 驚き、感動する彼女!


 完璧な計画だ。間違いない。フフフ。




 そしてオレはその日の夜、事前に準備しておいた指輪を寝静まった彼女の左手にはめて、


 朝を楽しみにしながら眠りについた。


 


   *   *   *   




 翌朝、彼女は先に起きたようだ。


 オレは昨日、彼女が完全に眠るのを待っていたため、早く起きることができなかった。


 彼女がベッドから出て、ドアを開けるような気配がする。


 オレは寝ぼけていて、指輪のことはすっかり忘れていた。




 その時、彼女の「アアッ!?」という叫び声で飛び起きた。


 あわてて声のした方へ向かうと、彼女はどうやらトイレに入っているらしい。




 「何コレ!?」




 そこでやっとオレは昨日のことを思い出した。この声からして、彼女は指輪に気付いたらしい。


 

 オレはおもむろに咳払いして、今まで生きてきたなかで一番イケメンなボイスで言った。ドア越しに。




「──結婚しよう。」




 しばし沈黙がながれる。


 そして返ってきた彼女の声は今まで聞いたなかで一番冷たかった。




「トイレでプロポーズ……」




 オレは思わず「アッ」とまぬけな声を発してしまった。




「しかも今、う○この最中……。」




   *   *   *   




 オレのプロポーズはロマンチックとは少し、少し違うものになったが、


 一生忘れられない思い出となった。




 うん。結果オーライだ!! うん……



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プロポーズには気を付けろ 麦野 夕陽 @mugino

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