第2話 渡せなくなった日

 どれくらい続いただろうか。

 あるときから私は交換日記を渡せなくなった。


 いつも学校から帰るときに渡していたから、まひろは交換日記を待っているそぶりを見せたが、気付かないフリをした。


 まひろも交換日記を楽しみにしていたことが、ひしひしと感じられた。


 渡せなくなった日から、私の口数は減っていった。少し前まで、帰り道ずっとしゃべっていたのに。ひとことふたこと話すだけになっていた。



 その日もいつものように、まひろと下校していた。

 しかし、いつもと違って私はひとことも話さなかった。話せなかった。

 まひろはとても心配そうにしている様子だった。



 通学路、まひろと別れる場所で、ランドセルからノートを取り出した。

 まひろは「あっ」と声を出した。きっと私が交換日記に飽きてやめたと思っていただろう。

 まひろの胸にノートをおしつけて私は逃げるように走りさった。


 

 だってだって、あのノートに書いたから。

 ここまで言えなかったこと、書いたから。

 言ったら、悲しむ。それに絶対、自分が泣いてしまうから。



──まひろのこと好き。

 でも、もう会えない。

 ごめんね。         





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