age26 / 優しい世界

就業時間が終わりに近付くある日の夕刻。

「お疲れ、ちなみに来週の金曜日って暇?」

「合コンあるんだけど、どうよ」

あー、スミマセン、勉強したいんで。


「たまには息抜けよ、人数足らないんだよ、俺らだけじゃ戦力不足なんだよ、最後まで言わせんなよ、馬鹿っ!」

大丈夫、ふたりともイケてます。


ただ、女子に夢見すぎです。

言っても真に受けないのは経験済みだ。

俺には姉がいるから判る。

女子の実態を甘く見てはいけない。

男より残酷で狂暴ながら神憑りな上っ面で華麗に立ち回る。

あ、偏見でモノ言ってごめんなさい。


「俺が行っても頷くだけで終わりますよ?」

「その頷きで俺らを持ち上げてくれ!」

ぷぷっ、意味不明だし。

ちなみに合コン参加の許可は出ている。

だからと言って尻尾振ってついていく気はサラサラないのだが。


「付き合ってる人が居るって言っても良いですか?」

「俺らはライバルが減るから良いけど」

顔を見合わせる新天地の先輩たち。


「………立ち入ったこと聞いていいか?」

はい、良いですよ。

「その付き合ってる人って同居人の先生?」

はい、そうですよ。


「俺は、あの人以外には男女ともに興味ないんです。皆さんのことも恋心なぞ永遠に全く起き得ないんで、どうぞご心配なく」


「「…………そう、か」」

予防線が効いたのか、引き気味に黙りこむ。

かと思いきや、

「いいなぁ、一途な恋愛、オレもしたい」

「判るわ、お年頃になるとドキワクよりもどっしり落ち着きたくなる」

「………はぁ」

「そうなると参加は見込めないなぁ」

「どうするよ、メンバー足らねぇよ!」

「時期が悪い、という事にしておこう」

「うぅぅ、俺の出逢いがまた遠退く……」

何気ない会話が更に続いていく。


「どうしたよ、キョトンとして」

「敬遠される想定で強く言い過ぎました」

………スミマセン。


「ぷっ、真面目だな、お前は」

「確かに、直に聞くと驚くけど何となく気付いてたし、逆にハッキリさせてゴメンな」

いや、あの、その、ありがとうございます。


「はぁぁ、俺らのは春はいつ来るんだよ」

心よりお祈り申し上げます。


「リア充が!このリア充が!畜生っ!!」

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