とある動物たちの会合

@practice369

短編

その夕、6匹の動物たちがどこからともなく集まって輪になって会談を始めていた。

一匹目は本を抱えながら立派なメガネをかけた三毛猫、二匹目はおしゃれな服を着た豚、三匹目はポンポコポンと太鼓のように腹を叩く狸、それに言葉上手な狐、

獲物をつかみながらやって来た狼に、じっとその場にたたずんだままのナマケモノだ。

三毛猫がメガネに手をあてがって切り出した。

「それでそれで、皆さんここに集まったのは謂れのない非難を浴びせられたからということなのですね」

「そうですともそうですとも。私は普段からよそ行きの際には身だしなみをきちんとするんですけれども、私には真珠は合わないと言われたのでございます」かばんを大事そうに抱えながらその動物は答えた。

「僕の話も聞いてください。僕はこのようにしてですね……」

そう言うや否や再びポコポコ腹太鼓を叩いてみせる。

「こうやって音を奏でるのが僕の自慢のお腹なのに、ある人から狸の腹は黒いと何の前ぶりもなく決めつけてきたのです」

「それは何という言いがかりでしょう!それではさぞやご立腹でございましょう」

「狼さん何とかしてくださいますか?」

「お前さんがたはなぁ、まずわしに対する前提からして間違ってまさぁ。わしはな、食い物以外に目をつけたことはてんでないぞ。

他に襲ったりなぞ、これっぽっちも」

「だからそう言って本当は……」

他の動物たちがそう言って狼に迫っているまさにその時、間に入ったのは三毛猫だった。

「皆さん皆さん、ここではお互いを非難するのはよしませんか。だって皆それぞれが謂れのない非難をされて来ているのでしょう?

何もここまで来てその非難を相手にすることもないでしょう。それでそれで、他の方の話も聞いてみましょう」

「それではわたくしめの話もぜひ聞いていただきたいのですが、わたしくめはいつも誰かと話すのが好きで好きでたまらない性分なのですが、

話をするといつもなぜか途中で騙された、嘘つきだ等ということを言われてしまうのです。それが話好きな私にとっての悩みの種なのです」

「どうしてそのようなことが起きるのでしょうかね。僕が今話を聞いている分には特にそのように感じることは一切ありません。

ですからその原因はあなたではない、ということだけは確かに言えそうですね」

このような話を続けていると、あとから一匹の猿がバナナを片手に握りながら近寄ってきました。

「あの、あのおいらあとから来たのでけれど、少し話してもいいかな、いいかな?」

特に輪の中のメンバーに異論はなかったのでそのまま猿は進めました。

「おいらはさあ、毎日毎日おいら達の群れの中でコミュニケーションをとって生活をしているはずなのにさ、別種の動物から俺たちの出来の悪い真似をしてやがると非難してくるんだな、これが。おいらたちにとっては群れを中心に生きているからさ、そっちがおいらたちの真似をしているんじゃないかと逆に言い返したくなってしまうよ」

「でもあなたは今、その別種の動物がいない場面でも堂々としゃべっておいでです。ですから出来の悪い真似をしているとは言えませんね。ところでもうお一方」

ここで三毛猫はさっきからじっとしたままで身動き一つしない動物に向かって話しかけた。

「あなたにも何かあるのではないでしょうか?ここに来たからには」

「いいえ。自分はずっとここにいたままでしたよ。問題といえばそれは……」

「ナマケモノなんていう名前をつけられてしまったことですかね」

「名前自体に侮蔑の意味が込められた名称を用いるとは……これが最もひどい侮辱かもしれません」

「これで皆さん一通り話はされましたね?ここで私から一つ提案があるのですけれど」

そう言いつつ大事そうにかかえていたかばんから例のぶたが小判を出した。

「これを、この会談の主宰を行ってくださった三毛猫さんにお渡ししようと思うのですが」

「これはこれは。本当によろしいのですか?」

「ええ。ほんの気持ちになりますが」

「ちょっと待ってください!」途中から来た猿がそこで一つ発言をした。

「三毛猫さんはまがりなりにも猫ですよ!猫に小判をあげるなんて、そんな無意味なことをしちゃ……」

そこで一同はやれやれと、この会談の趣旨を全く理解できていない猿に対してため息をついた。

「却下します」「そんなことはありません。」「三毛猫さんは、私たちのいわれのない非難を聞いてくださったのですから」

こうして一同は三毛猫が小判を受け取るのに賛同した。

「な、何でそうなるんだよ!いいや、おいらもう抜けた。いち抜けた!」

そう言って猿はただ一人、とぼとぼと去っていったとさ。

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