第47話 灰谷は混沌と真理を語る
対峙する彩藍と
片頬を歪めて皮肉な笑みをニヤリと浮かべている彩藍と、口元だけを三日月型の笑顔に見せかけてはいるが………眼は笑っておらず、冷笑的な表情の
「アンタとまた会えるとは思っとらんかったなぁ……爆発事故に巻き込まれてカダスたら云う場所で、アンタも死んでくれとったら良かったのにねぇ」
ニヤニヤ笑いを崩さずに、前回の遭遇を蒸し返す彩藍。
「あれには少し私も驚きましたが、私の息の根を止めるには足りなさ過ぎる攻撃でしたね……あの程度で私を殺せるとお思いなら、貴方は楽天家で、少しばかり頭が足りてない人だと評価されてしまいますよ」
挑発には挑発で返すつもりなのか、
その言葉に彩藍は、少しばかりムッとした表情を浮かべる。
「アンタが知っとるかは判らんけど、自称『賢い人』ってホンマにお利口さんやった試しがないっちゅうんが、陽ノ本での定説やねんで。
アンタは何やら要らんことばっかりして、自分の謀略にご満悦らしいけど………華乃ちゃんに手ぇ出したんは、ホンマのホンマに下策やと思うわ。
ウチの相方さんは、絶対に怒らしたらアカン手合いの
僕がアンタと出会うってことは……童士君はまたハイドラと遭うとるんやろ?
残念ながら……アンタの描いた
童士君ならハイドラの本体……《精神寄生体》》とやらまで、木っ端微塵に粉砕してしまうぐらいにはご立腹やからねぇ」
彩藍の指摘に
「ほぅ………このような東洋の島国に、我々の真理へ近付けるような智慧ある者が居たとは……貴方を殺した後で貴方の脳髄を精査し、そのような考えに至る傑物と面会したいものですね」
「ハッ!
そんな子供でも理解するような真理なんか、僕にだって解けるっちゅうねん。
そもそも……アンタみたいなヘタレな怪物が、僕を殺せるって考える時点で前提条件を間違えとるがな。
前に会った時のことをよぉ思い出してみぃな、僕の二刀にヒィヒィ言わされた後で………僕の華麗な爆破
ホンマ……数日前のことも覚えとらへんのやったら、
何や………
彩藍の罵詈雑言の嵐にも、
「話は戻りますが、如何な剛力を振るう鬼人……不破童士さんであろうとも、ハイドラの本体を滅することなど不可能だと思いますがね。
貴方のように知識を持たぬ、低次元で生きる人々には、理解の及ぶ範疇を超えてしまうのでしょうが………我々の存在とは夢のような物なのですよ。
例えるならば、遠い
その夢の残滓……いや、断片こそが我々の存在であり、我々の棲まう国であり、そして我々を我々たらしめる意義なのです。
そして、我々をこの世に産み落とした男の夢を保全し、永劫に続く狂気の牢獄へと男を誘い魅了し続けることが………私の使命であり我等が主の目的でもあるのです」
「へ〜、そしたらアンタらは、世界と何の縁もゆかりもない……寂しい異人のオッさんが見とる夢なんかぁ。
申し訳ないけど、そのオッさんの在所を教えてくれへん?
今から行って、顔にビンタでも放り込んで来たるわ」
彩藍の返しに
「ですから灰谷彩藍さん、貴方のような人は真理から遠く離れた………智慧なき人と見做されてしまうのですよ。
上辺だけを見て真実を知った気になり、表層をなぞっただけの薄っぺらい知識で判断を下す。
もしも貴方の背後に居る智慧者と語り合えたのなら、私にとっても非常に有意義な時間となるでしょうがね。
それに………
私と我等の主が張り巡らせた、綿密な計画に則り
『こんな話は任部の旦那やったら、必ず喰い付く……ってか、
実現してしまいそうな、そして実現すれば世界ぐらいは滅亡させてしまいかねない……真の恐怖を具現化したような
「オイオイ、黒いオッさんよぉ………お話がしたいんやったら、僕に切り刻まれた後に誰とでもくっ
取り敢えず……先に僕と遊んだってぇなっ!!」
今回は右手に小烏丸、左手に黒烏丸を握り込んだ彩藍が、
殺気を充分に込めた、神速の一撃を躰を捻りながら躱した
「仕方がないですねぇ、貴方と遭遇すると………結局はこのような展開になってしまうのですか。
では……次は私から行っても宜しいですか!?」
ゴウッと黒い瘴気の風が、
その直後には戦闘形態へと変化し終えた
「ふーん、最初から本気で来てくれるんやねぇ」
舌舐めずりをしながら彩藍は、強大な敵の出方を窺うように……その場で足踏みを始めた。
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