第13話 しばしの別れ
小説の概要にも書いてますが、この小説はR-15作品です。
1.13に侯爵→公爵に変更しました。この先あまり影響はないです。
これにて第1章終了!第1章までの人物紹介もこの後に投稿してます!
第2章は1月18日月曜日から投稿開始です!お楽しみに~
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
10日間、ボクとエリーは毎日一緒にいた。
ある日は訓練場で、またある日は城の図書館で。
エリーが領地へと帰ってしまう日は刻一刻と近づいてくる。
1日、また1日と別れの時が近づくたびに、帰る前のハグの時間は長くなっていった。
そして最後の日の前の晩、ボクは父様にある相談をした。
遂に今日でエリーが領地に帰ってしまう。次に会えるのは1年後のボクの誕生日の時だ。
今日の夕方、魔導列車に乗って帰ると聞いた。
エリーは2の鐘が鳴ってしばらくして城に来た。
少しでも長く一緒にいたかったらしい。
「ケント君、今日はずっと手をつないでいてくれますか?」
「もちろん。ボクもそのつもりだよ。昼食はどこで食べようか」
「2人きりになれる場所がいいです...」
ああ、かわいい。真っ赤になって照れてるよ。
「わかった。じゃあボクのお気に入りの場所に行こう。執事たち以外だと知ってるのはエリーだけだよ。」
「本当ですか?」
「うん。ボクとエリーだけの秘密。トーレス、いい時間になったら昼食を持ってきてくれ。ボクとエリーはあそこにいるから。」
「かしこまりました。」
そして今いるのはプライベートビーチのすぐ横にある岩陰の小さな砂浜だ。
ここはビーチからは直接来ることができないので、ボクの秘密基地のようになっているのだ。
そこのベンチにボクとエリーは寄り添って座っていた。
「私、ケント君と離れたくないです。帰りたくないです。」
ボクに寄りかかるエリーがそう呟く。
「でも帰らなきゃ。手紙書くから、ね?」
「5日に1回、書いてくれますか?」
「わかった。書くよ。」
「私、来年のケント君のお誕生日にも来ます。絶対に。待っててくれますか?」
「うん、待ってる。」
しばらく沈黙が続く。最初に会った時の気まずい沈黙の時間とは違って、幸せな時間だった。
「ケント殿下、エリザヴェートお嬢様、昼食を持ってまいりました。」
トーレスがメイドさんを2人連れてやって来た。
「ありがとう、並べてくれるかな」
トーレスとメイドさんによってすぐに、テーブルの上は料理で埋まった。
「じゃあ、食べようか。」
「はい!おいしそうですね!」
エリーが手を放し、料理へ向かう。
彼女は食事の時、手を離すのをあまり嫌がらなくなった。
そのかわり、ボクとぴったり身を寄せ合って座る。
そして昼食が終わるとまたベンチで寄り添って、手をつなぎ、湖を眺めて過ごした。
しばらくすると、4の鐘が鳴ってしまう。
「もうそろそろお別れだね。」
「そう、ですね...。でも!来年は楽しみにしていてくださいね!プレゼントをお渡しするので!」
ふんすと張り切っている。どんな物くれるのかな、楽しみだ。
「それは楽しみだ。エリーの誕生日は冬だったよね。ボクもエリーに何か誕生日プレゼントを贈るよ。待っててね。」
「本当ですか!?うれしい!」
エリーは腕にギュッと抱き着いてくる。
そして馬車が来たとの知らせを受け、ボクとエリーはそちらへ向かうことにした。
「ケント君に抱きしめられるのもしばらくお休みですね。今日は思いっきり抱きしめてくれませんか?感触を覚えていたいです!」
こんなかわいいお願いを無下にできるはずもなかった。
ボクはエリーをギュっと抱きしめる。
「このくらい?」
「もっとです」
「どう?」
「もっと強くしてください!」
これ以上は痛いんじゃないかとも思ったが、エリーはもっととせがんでくる。
なので本当に強く抱きしめた。
「あっ♡はっ♡ああっ♡ケント君、好き♡大好きぃ♡またっ、会いにっ♡来ますからね♡んっ♡はぁ♡」
え?大丈夫かこれ?絶対感じてるよね?耳元で喘がれたらヤバいんですけど?理性ちょん切れるよ?
「だ、大丈夫?エリー、息がすごく上がってるけど...」
腕をほどくと、エリーは上気した顔でボクを見つめる。
「大好きです♡」
たった一言、そう告げられた。
ボクはここしかない!と思いエリーの頬にキスをした。
「ふぇ?今、ケント君がほっぺたに...。ひゃぁ、恥ずかしい...。」
昨日の晩、父様に相談したのはキスのことだ。
「父様、キスって許されますか?」
そう聞くと父様は目を瞬かせてこっちを見た、そしてニヤリと笑う。
「唇はダメだ。頬にキスするのはいいぞ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
そういうわけでボクはエリーが帰るときにほっぺにチューすることを決めたのである。
真っ赤になったエリーはまた抱き着いてきた。
「ケント君ずるいです!そんなことされたら離れたくなくなるし、ギュってされた感触も忘れちゃったじゃないですか!罰としてもう一回抱きしめてください!」
なんて幸せな罰だ...。喜んでそれを受けようじゃないか。
「さっきくらいのがいいの?」
「じゃないと許してあげません。」
ボクに抱き着いたままプイっとそっぽを向くエリー。
「可愛いんだぁ、この子。」
「も、もう!早くしてください!お預けは嫌です...!」
ふう、心を落ち着かせろ。理性だ。理性を保つんだ。よし、いくぞう。
ギュッ!!!!
「あん♡あっ♡はっ♡好き♡ケント君好き♡♡」
も、もう無理です!理性が死にます。ほどこう。
「あ♡ありがとうございました...♡そうだ、私も」
エリーがボクの頬にキスをする。
そしてしばらくじっと見つめあっていた。
「唇のキスは15歳になったらもらうから。」
ボクはエリーの耳元で静かにそう言った。
(やべ、これはキザすぎたか?)
エリーは嬉しそうににっこり笑って馬車へ走っていった。
そして馬車に乗る直前、振り返る。
「ケント君、しばらくさようなら!また来年、お会いするのを楽しみに待っています!手紙待ってますから!」
「すぐに書くよ!またね!大好きだよエリー!」
真っ赤になったエリーは何かを隠すように馬車へと駆け込んだ。
そして門を出て見えなくなるまでボクは馬車を見送った。
部屋に戻り、シルフィと戯れながら最初に書く手紙の内容を考えた。
しかし、あふれる涙で紙が1枚無駄になってしまったのだった。
一方、エリザヴェート―――――
「うっ、ひっく、ぐすっ」
涙がどんどんあふれてきます。ケント君に大好きだと言われた瞬間、嬉しくて涙があふれそうになりました。でもケント君の前では涙は見せたくありません。私はケント君にふさわしい、立派な令嬢になるんですから!
でも、でもやっぱり。
しばらく会えないのはさみしいです。
「お嬢様、ハンカチを。」
「グスっ、ありがどう。」
メイドにハンカチをもらい、涙を拭きます。
これでもう2枚目でした。
屋敷へ戻ると、お父様と領地からついてきた使用人が私を待っていました。
「エリー、帰ろうか。母さんもハンナもきっと待っているよ。」
そうでした、領地には私の土産話を楽しみに待っているお母様とお姉様がいます。
こんなに泣きはらした目を見せたら心配させてしまうかもしれません。
それにケント君に出す手紙の内容も考えないと。
帰ったらすることがたくさんです。泣いている場合ではありません。
私はもう一回ハンカチで涙を拭き、列車に乗り込みました。
そういえば、ケント君に強く抱きしめてもらった時は、初めての感覚でした。
なんだか体が熱くなって、頭にもやがかかるような...そんな感じ♡
体にあの感覚が刻み込まれたような感じがして忘れられません♡
また会った時にもう一度抱きしめてもらいたいです。
とりあえず夕食の時間までは日記を書くことにしました。
楽しかった思い出をすべて書き記すのです!
私は夕暮れのライネル湖を眺めながら、日記を書き始めました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます