第16話 vs黒兎

今回、魔獣(黒兎)を解体するシーンがあるので、解体とかちょっと無理って方は後半読み飛ばしてくださいm(__)m

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



イルシア姉様の提案で、南門には水路を使っていこうという話になり、ボクたちは舟に乗って南門前までやってきた。


門を守る衛兵には今日狩りに行くことが伝わっていたようで、すぐに門から出る手続きが終わった。


そして門から出ると目の前には広大な草原が広がっていた。

「わあ!すごく広い!」

壮大な景色を前にして見惚れているボクにイルシア姉様が笑いながら言った。


「ケントの冒険が始まったね!」


歩き出した姉様達を追いかけ、ボクは冒険への第1歩を踏み出した。


しばらく歩くと前を歩くイルシア姉様が立ち止まる。

「ケント、私がさっきから何してたかわかる?」

本当に気付きづらいが、ボクは気づけた。

「えっと、かなり微量ですけど魔力を放出してます。探知ですか?」

「正解!ケントは偉いねぇ。アイリの時は全く気付いてなかったのに。」

つまりアイリ姉様は鈍感ということだろうか。

「今やってたのは、自分の魔力を広範囲に薄く展開して範囲内のを見つける魔法だよ。これは放出する魔力が厚すぎると威圧になっちゃって、抑えようとして逆に薄すぎると範囲が狭くなっちゃう。加減が難しいんだよね~」

なるほど。丁度いい状態にするのが難しいのか。


「ねえ、シルフィ魔法マスター、できる?」

とりあえずシルフィ先生にやってもらおう。

”ピュイ!!”

うん、わかってたけど普通にできるんだね。めっちゃ薄いし。

しかも範囲はかなり広そうだ。


「シルフィちゃんはやっぱりすごいね!」

「僕はすごく練習したのに...。」

マルク兄様はかなり悔しがっていた。


「よーし、次はボクの番だ。」

シルフィのように魔力を広げ...られなかった。

「ケント!強すぎ!威圧になってるよ!」

「あわわ、ごめんなさい!も、もう一回!」

ちょっとずつ魔力を出していく感じで...よし!

「でき...た?」

まだ範囲は広くなかったがそれでも5つの反応を見つけることができた。


「どう?何かいた?」

「はい!あっちに5つの反応がありました!」

「うん、合格!早速行ってみよう!」

反応のあった方へ進んでいく。

すると草原に黒い毛玉が5つ転がっていた。


近づいていくと毛玉が動き出し、赤いオーラを纏う。

「あれが低級魔獣の黒兎だよ。立ち上がるとケントの腰くらいかな。奥のでっかいのがこの群れのボスだね。」

黒兎は立ち上がり、赤い目でこちらをにらむ。

ボクは腰の短剣を構え、相手を見据える。

「じゃあケントは5匹まとめていってみよう!危なかったらすぐ助けるから頑張ってね!」

姉様はそう言って少し離れる。

スパルタだな~。まあいいや、がんばろう。


「シルフィ、最初は見ててくれる?」

”ピュイ”

シルフィは肩から飛び立ち、黒兎の真上に浮かぶ。


よし、先手必勝だ!

「”飛斬”!!」

ボクは短剣を2度振りぬき、斬撃を2つ飛ばした。

1つが群れの1匹に当たり、深い切り傷を作る。

ボスが”キュウ!”と鳴き声を上げる。

すると2匹が同時に突進してきた。

ボクは”身体強化”をかけ、片方を蹴り飛ばす。

もう片方の突進は腕でガードしたもののくらってしまう。


「あれ?意外と軽い?...おりゃ!」

受け止めた黒兎を蹴り上げ、短剣でラッシュを入れる。

そいつは地面に落ち、動かなくなった。

「よし、まず1匹!」

そうしている間に今度はさっき蹴り飛ばした奴と、無傷の1匹が前後から突進してくる。

「ケント、魔法使って!」

絶妙なタイミングでマルク兄様のアドバイスが飛んできた。


「”ブラインド”!!」

ボクはそいつらに両手を向け、闇魔法の一つである通称”目隠し魔法”を使った。

するとラッキーなことに2匹が正面衝突したのでその隙にとどめを刺す。


「あとは2匹!」

残ったのはボスと手負いの1匹。

うん、もう少し魔法使おうかな。

「”フラッシュ”!!」

光の玉が2匹の目の前に落ち、時間差でカッと光を放つ。

「よし、これで終わりだ!”水泡”!!」

水の塊が2匹を包んだ。

少しの間もがいていたが、すぐに動かなくなった。


「うん、いい感じ!いろんな魔法使えてて最高だね!」

近くに来たイルシア姉様に撫でられる。


「ケント~、解体教えるから来て。」

「は~い!」

いつの間にかマルク兄様が黒兎の死体を並べていた。


「じゃあ、まずは血抜きだね。こう後ろ足を持ち上げてもらって、首のこの辺を切る」

スパッ!

騎士に持ち上げられた黒兎の首が落ち、血抜きがされる。

ボクも解体用の短剣を取り出し、持ち上げられたもう1体の血抜きをする。


「じゃあ次。内臓を取る。」

スパッ!ドサッ!

ん?そんな簡単にできるの?おかしくね?

「僕の真似はしなくていいよ。最初はゆっくりね。」


その後何とかして1匹の解体を終えたが、マルク兄様はその間に他の4匹の解体を終わらせていたのだった。

技術の差をこれでもかというほど見せつけられてしまった。


アイテムポーチに初めての獲物を入れ、ギルドの隣にある、解体場兼素材買取所までやってきた。

毛皮と心臓あたりにある魔石は売り、肉は持って帰って調理してもらうことになった。

それとボクが処理した毛皮とマルク兄様が処理した毛皮では買取価格が違っていた。

買取所でもボクとマルク兄様の差をわからされた。



ボクたちは城へ帰り、お風呂で汚れを落とす。

もうさすがに一緒には入っていないが。


今日のこともエリーへの手紙に書かないとな。

しかも冬になったらエリーの誕生日だし。

プレゼントのことも考えないと...。

何を送ればいいのかな。せっかくだし婚約者のいる人に聞こう。

姉様の誰かに聞いた方がいいよね。

そうなるとエファ姉様は論外、イルシア姉様かアイリ姉様だけど...。

詳しそうなのはアイリ姉様かな。

夕食のあとに聞いてみよう。


とりあえず夕食までは、城の図書館から持ってきた魔獣図鑑を読んで過ごすことにした。


ふむふむ、いろんな魔獣がいるなあ。


なになに、”アヴァロンエイプ”?

「えーと、アヴァロン山脈に生息しているエイブ種の1つ。エイプってつまり猿か。基本的に10匹程度の群れで行動している。赤い体毛に鋭い爪を持ち、火属性を操り、鼻から火を噴く。弱点は水属性。水が苦手。」


水魔法で攻めるのがいいのかな?

ならまず水でドーム状に囲って閉じ込めて、そこから相性関係ない闇魔法で攻撃とかか?



そんなことを考えているうちにすぐに夕食の時間になり、呼ばれてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る