転生特典が『残機』だったクソ雑魚TS転生者は今日も異世界で死んでしまうらしい。

しじみ汁(味噌)

プロローグ


目が覚めたら、なんか白い部屋だった。


…いや、おかしい。さっきまで俺は友人…まぁ仮にAとしておこう、そのAと一緒に本屋に行こうとしていたはずだ。


部屋を軽く見回すと、俺から数メートル離れたところにAが倒れているのが見える。


「おい!A!大丈夫か!」


立ち上がり、Aのほうに駆け寄ると…


「……むにゃむにゃ…あと三十分…。」


とりあえず蹴り起こした。






――――――



「えっ、ここ何処!?」


「知らん。」


あの後十分の格闘の末、なんとかAを起こすことに成功し、俺とAは状況を整理していた。Aも覚えているのは俺とおおよそ同じくらいのことで、何故ここにいるのかはさっぱりといった感じだった。


「ていうかさぁ、一つ思ったことがあるんだけど。」


「おう、どした?」


「ここって異世界転生系の転生待ちの部屋じゃね?」


Aが突然そんなことを言う。


「は?お前それはラノベの読み過ぎだろ。というかさ、それだったら俺たち死んでることになるじゃん。」


俺には少なくとも死んだ記憶は無い。


「そっか…、じゃあ間違ってるのかなぁ。」


Aがそう言った時…


『いや、実はその通りなのです。』


突然、上から声がした。そのまま上を向くとなんか天使っぽい格好の女の人がゆっくりと上から降りて来ていた。


「え?じゃあもしかして、俺たちって…。」


『はい。死にました。』


女性はそのまま降りてきてふんわりと地面に着地し…


『私の手違いであなた達を殺してしまい、本当に申し訳ございませんでしたぁ!!』


俺たちの前で完璧な土下座をかましたのだった。





――――――



先程土下座をしていた女性はどうやら神様の一人らしい。で、神様によると…


『…えっと…本来であれば、2つ先の交差点にいた人が死ぬ予定だったのですが…その人達とあなた達がとても良く似ていて…ですね…。』


「つまり、俺たちは人違いで殺されたと?」


『…本当にすいません。』


神様が正座しているので、俺たちも地面に腰を降ろして話を聞く。…なんか、この神様が反省会を受けている子供に見えてきた…。


「で、俺たちは生き返れるんですか?」


『えっと…それはですね…あの…』


「正直に。」


『…元の世界に戻してあげることはできません。…本当にごめんなさい。』


やっぱり、この神様、反省会を受けている子供に見えない…。じゃ無くって、どうやら俺たちは元の世界に帰ることは出来ないらしい。…まだ、父や母に恩返しすらできていなかったのにな…。


「ん?今、元の世界にはって言いました?」


少し、シリアスな感じの気持ちになっていたのがAの言葉で急に冷める。こいつは何を言いたいんだ?


『…?えぇ、言いました。』


「じゃあ、異世界に転生ってできますか?」


え?こいつ何言ってるの?


「いや、そんなんできるわけ…。」


『できますよ、異世界転生。』


「できるのかよ。」


できてしまうらしい。


『えぇ。剣と魔法の世界とか…。なんだったら今のお身体のままでもできますよ。』


「よしッ!赤ちゃん転生はキツそうだし今のままでお願いします!」


「おいおいおいおい!落ち着け!決めるのが速すぎるんだよ!!」


「お前、普通転生できるならするだろ!」


「しねぇよ!…ちなみに、転生以外だとどうなります?」


『えぇっと…基本的には天国なんですけど…

正直に言うと特に何もすることが無いので…。』 


「よし、転生しよう。」


俺は、暇な時間はゲームが無いと駄目なのだ。


「で!神様!事故っちゃったわけだし、なんか転生特典とか無い?」


「おいおい、流石に転生特典までは…」


転生特典までは求めすぎだろう。そもそも転生だけでありがたいのに…


『わかりました。では、どの世界にするかを決めてから、このカードのなかから転生特典を選んでください。』


「あるのかよ…。」


カードの準備がとても速かった。…これ、今回が初めてじゃ無いな。うん。


「この…刀の世界とかどうよ?」


「クソ雑魚の俺たちで生き残れるか?そこ。」


刀とか死ぬ未来しか見えない。


「多分、無理。…じゃあこの巨大ロボット戦争の世界とかは?」


「思いっきり戦争じゃねぇか。死ぬぞ。」


普通に爆散しそう。


「…剣と魔法の世界とかは?」


「ベーシックだな。ただ、やっぱり死ぬだろうけどな。」


…ドラゴンとか、それこそオークやゴブリンにすら勝てない可能性がある。


「じゃ、剣と魔法の世界にしとくか。」


「いや、どうしてそうなった?」


「じゃあ次特典な。」


「待て、俺の意見はどこに行った。」


「厳正な脳内会議の結果、無かったことになった。」


「えぇ…。」




――――――



「これは賢者一択では?」


Aはあっという間に選んでしまった。Aが選んだのは『賢者』。魔力量がとても多くなり、魔法もいくつか習得した状態でスタートできるとかいうチート…というほどでも無いが普通に強い特典だ。


「むむむ…。」


そんなAに比べて、俺は凄く悩んでいた。というのも俺は運動神経がクソ雑魚なのだ。具体的にいうと、中学時代の体育の評定はいつも5段階中の2だった。なので個人的には生存特化の特典が欲しい。そう思って見ていると…


「お、これいいな。」


俺の欲しかった生存特化の特典を発見したのでそのまま神様に申請する。


『…これで本当に良いですか?』


「あっ、はい。」


『わかりました。では、二人共決まったので転生させますね。』


「あっ、思ったよりさくっと転生するんだn」




俺たちの意識はそこで途絶えた。









――――――





草の匂い。



柔らかい地面。




目が覚めたら少しだけ小高くなっている丘の上だった。


周りを見渡せば、数メートル離れたところに、Aが倒れている。…なんかあいつ魔術師っぽいローブ着てるんだが。


仕方ないので、とりあえず近づいて軽く背を叩く。


「……むにゃむにゃ…あと三十分…。」


やっぱり蹴り起こした。




―――――――



「目が覚めると、そこには黒髪美少女が。」


「いるわけねぇだろ!」


起きてそうそう何を言ってるんだこいつ。確かに俺は女子っぽいとは言われたことがあるがれっきとした男だ。


「そのノリ…、お前■■■■(俺の名前)か!?」


「それ以外に誰がいるんだよ。」


「いや〜…もしかして自分の状態を把握してらっしゃらない?」


「は?何言ってるのお前?」


なんか、Aが意味不明なことを言っている。…普段よりなんか真面目な顔してるんだが。


「…とりあえず、手をお腹に当てろ。」


「…?おう。」


言われた通り下腹部に手を当てる。


「そのままゆっくり下な。」


「おう。」


そのまま俺の手はなんの障害物に当たること無く、股下まで…って


なんの障害物もない?


「あれ?」


ズボンを開けてチラ見してみる。そこには何も無かった。


「…あれれ?」


もう一度みる。何も無い。


そう、何も無かったのだ。


「うん…そのなんだ?おめでとう?」


Aが何か言っているようだが、よく聞き取れない。


「……俺は…。」


「まぁ、あれだ。昔から女の子っぽかったしな?」


「俺は男だァァァァァァァァ!!!!!!」


俺の叫びはそのまま虚しく消えていった。

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転生特典が『残機』だったクソ雑魚TS転生者は今日も異世界で死んでしまうらしい。 しじみ汁(味噌) @shizimiso46

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