ガチでオタクな僕に、人気絶頂アイドルの妹が出来ちゃった件
スズヤギ
第1話 アイドルとの出会い
うおおおおおおおおおおおおお!
やったぞーーーーーーーーーー!
人気絶頂アイドルグループ【キャンディーシスターズ】の『初回限定握手券&写真撮影付きサイン会特典CD』
ながい!特典の名前が長くてタイトルを忘れてしまうほどマジでながい!
タイトルは『ドリーム』
授業が終わり猛ダッシュでお店に行って、2時間も並んでギリギリ特典付きCDを手に入れたので本当に夢のようだ。
可哀想に君たちは間に合わなかったのか。
僕も今までそうだったから痛いほど気持ちはわかるよ。
同志達よ、諦めるな。
彼等に悪いと思えばおもうほど、手に入れた嬉しさが込み上げてきて本気で叫びたくなってきた。
「やったー!やったぞー!」
「お、お客様、申し訳ありませんが店内ではお静かにお願いします」
「はい、すみませんでした」
テンション急降下で我にかえり何度も頭を下げて光速で謝った。
僕はもともと気が弱い。いまはCDの魔力でアドレナリンが出まくっているだけだ。
気付けばかなりの人に注目されていた。
僕は本来注目されるよりも、アイドルに注目する側の人間。
「ガチのアイドルオタクだから!……あっ!」
「おいこらガキ!いい加減にしないとマジで切れるぞオラ!」
「も、もうお姉さんすでに切れてるじゃないで……いえ見間違いでした。ごめんなさい、ほんとごめんなさい」
今日の僕はどうかしているみたいだ。
そして僕のせいで態度が豹変したショップ店員のお姉さんを見て思う。
……やっぱり女の子は笑顔が素敵なアイドルに限る。
今日は初回限定CDの発売日だったので、随分と放課後から時間をロスしている。
そういえば今日は親父が早く帰って来いって言っていた。
スペインの大使館で働いている親父が突然帰国し帰ってきてるのだ。
スマホをチェックすると……え?なにこの着信履歴の数。
すでにこの世に母さんはいないし、間違えてかけてきたわけではないだろう。
……ひょっとして今日はすごく大事な用事があった?
しかし僕にとって今日は人生の中でも超大事な日だったのだから仕方がない。
僕にとってアイドルは……
キャンディーシスターズの中でもグループのセンターを務めるかおりんは僕にとって神様……いや女神様だ。
彼女を守るためなら僕はいつだって死ねる……覚悟はある。
着信履歴の多さにびびり、折り返しの電話をするのが怖くなった僕は急いで自宅へと向かった。
あれ?鍵が開いてる。きっと朝から出かけていた親父が帰ってきてるのだろう。
ガチャ!
「あ、おかえりなさい」
「あ、ただいま」
……ん?
……これは夢ですか?
ドアを開けると僕を出迎えてくれたのは、眩いばかりの輝きを放っている人気絶頂スーパーアイドルのかおりんだった……
* * *
「……ってわけで今日から東条とうじょう家は4人家族だ。これから4人で仲良くやっていこう……と言いたいところだが、実は俺と良子さんは今日の夜にはスペインへ経たなければならない」
「はっ!?」
突然帰国したと思ったら、いきなり再婚したと聞かされて、その連れ子がスーパーアイドルで、妹が出来て良かったな?と説明されたばかりだ。
まだ頭の中が整理できていない状態で更なる追い打ちをかけられていた。
今夜スペインに戻るだと!?
「そんなのかおりん……じゃなくて香織さんだって納得できるはずないでしょ!」
「私はすでにオッケーしてますよ。ママが幸せになるのなら構わないです。それに素敵なお兄さまも出来たし二人とも安心して行ってきてください」
僕と両親に天使のような笑顔をむけている。
す、素敵なお兄さま?
……死んでもいいですか?
「私からも夏男ナツオくんに香織の事をお願いできるかしら?この子はアイドル業が忙しくて本当になにも出来ないから、いろいろとお世話を頼んでしまうけど」
「ちょ、ちょっとママ!」
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群と公式プロフィールにもあるけど欠点など微塵もない。
とても高校1年生には見えない抜群のプロポーション。
光が当たると黄金色に輝くような茶色かかった肩まで伸びるサラリとした髪。
そして国民的美少女と呼ばれるにふさわしい、整った顔つき。
こんな子供を持っていても、親が過保護になるのは変わらないようだ。
「私のせいでナツはひとり暮らしが長いから何でもできるし心配ないだろ。なにかあったら男らしく助けてくれるはずだ。特にコイツは熱狂的な、かおりんファンで信念を持ってるアイドルオタクだから襲われる心配もないはずだよ」
な、なに余計な事を言ってるんだよ。
気持ち悪く思われたらどうするんだ……
「私のファンなんだ?いつも応援ありがとうナツお兄ちゃん」
再び向けられる天使の微笑み。
……ここは天国ですか?お代わり頼めますか?
その夜、予定通り親父と良子さんはスペインへと旅立っていった。
空港まで見送りに来た僕等は、タクシーで家へ帰る。
アイドルの彼女を電車で帰らせることは出来ない。
ただひとつ気になるのは、僕と二人きりになってから一言も口を開いていない。
やっぱりショックが大きいのだろうか。
「さあ、かおりん家に着いたよ」
「…………ち悪い」
「ん?かおりん?」
「気持ち悪いから、かおりんっって呼ばないでもらえるかな?わたしオタクって大っ嫌いなのよ!」
……あ、あれ?
……ここは地獄ですか?
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