鋼神ラグナー ~国を追放された俺たち3人は、巨大ロボで無双する!ロボが欲しいから戻ってこい?「「「もう遅え!」」」~
ヤマタケ
プロローグ
第1話 ターナー篇:勇者パーティ追放
「お前を勇者パーティから追放する!国籍もはく奪だ、とっとと消え失せろ!!!」
俺さまに向かってそう言い放つ勇者の顔は強張っていた。そして当の俺さまは、机に両足を乗っけながらその話を聞いている。
「俺は別に構わねえけど、お前らが困るんじゃねえか?」
俺さまは勇者を睨んだ。俺より12歳も年下の坊主は、その眼光にたじろいでいる。
「俺さまなんぞにビビってたら、魔王なんか倒せねえぞ?」
「う、うるさい!!」
「そうよ、アンタがいたらおっかなくて休んでもいられないわ!!」
「お前はこのパーティにあまりにもふさわしくない!!今までは我慢していたが、もう我々も我慢の限界だ!!」
勇者の隣に居座る女2人が騒いでいやがる。一人は魔法使いで、もう一人は聖騎士。どちらもこの勇者の幼馴染なんだとか。
「……俺さまの言い分を聞くつもりはあるか?オリバー」
「ない!お前のやったことを考えれば、言い分を聞く道理もない!!」
勇者オリバーは怒りをむき出しにして、装備している剣を俺に向ける。
「パーティの仲間を再起不能になるまで叩きのめしたことは、事実だろう!それに……!」
勇者の剣に、みるみると力がこもる。それ以上は言わなかったが、相当怒り狂っていることは間違いなかった。
やれやれ。このままだとここで殺し合いになりかねないな。
「……わかった、わかったよ。出て行くよ。出て行けばいいんだろ?」
俺さまは机から脚をどかして立ち上がると、そのまま部屋を出た。
***************************
「……やっぱり、入るんじゃなかったな。あんなガキどものパーティなんぞ」
勇者パーティの泊まる宿を追い出された俺さまは、それから数日、町から出ることもなく、今も屋台で飯を食っていた。
「旦那、国籍もはく奪されたんでしょ?いいんですか、ここにいて」
「なに、今までの根無し草に戻っただけだし問題ねえよ」
そもそも俺さまはフリーの傭兵だったのに、あいつらに「戦力としてどうしても加わってほしい!」と頼まれたから入ってやったのだ。
「大体あいつら、俺さまが入る経緯だってよ、あいつらじゃデカい魔物は倒せても雑魚の相手ができないからって、わざわざ俺さまを雇ったんだぜ?」
愚痴をこぼしながら、俺さまは串焼きをむしゃむしゃと平らげる。
「……今日でこの屋台ともお別れだな」
「いよいよ町を出るんですか?」
「貯金が尽きたんでな。仕事探さねぇと」
俺さまはそう言って、屋台の席から立ち上がる。
「ごっそさん。美味かったわ」
「またいらしてください」
「二度と来ねえんじゃねえかなあ」
俺さまは笑うと、屋台から立ち去った。
(最後だし、本当はもう少し長くいたかったんだけどなあ)
屋台を離れ、人の群れからも離れ、暗がりに向かう。
町の人の気配も消えたころ、明らかに堅気じゃない気配が俺さまを囲った。
「堅気巻き込むわけにはいかねえよなあ!!」
俺さまを、武器を持った連中が囲んでいる。武器は剣はもちろん、弓や槍、ナイフやハンマーなど多彩だ。全部で5人。
一方で俺さまは丸腰。傭兵だが、武器は持たない主義なのだ。
普通の奴が見れば、明らかに俺さまの方が不利だろう。
だが、俺さまはニヤリと笑った。
「……来いよ。憂さ晴らし程度に潰してやるからよ!」
俺さまが言うと同時に、矢が飛んでくる。俺さまはそれを掴んでへし折った。矢の先には紫色の液体が塗られている。毒だ。
「殺意高いなオイ!」
俺さまは言うと同時に、次の矢を構えようとする男に近づき、顔面に拳を叩き込んだ。
男の身体が吹っ飛び、建物の壁に激突する。そいつはもう動かなくなった。
俺さまはその男を掴むと、俺さまの上に掲げる。振り上げられたハンマーの衝撃が、その男の肉体越しに俺さまに伝わってきた。
「あーあ、俺さまのパンチだけならまだ生きてたのによ!」
矢の男は完全に絶命していた。死体の足を掴み、俺さまは横に振りかぶる。
ハンマーの男の足を払うようにぶつけると、ハンマーの男は見事にすっ転んだ。即座に俺さまはそいつの上にまたがり、顔面を掴む。
そのまま、掴む手に力を込めると、ハンマーの男は激痛に絶叫した。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
俺さまはやかましい悲鳴に舌打ちすると、男の後頭部を地面に叩きつけた。やかましかった男は、白目を剥いて動かなくなった。
気付けば、俺さまを囲む連中は距離を空けている。俺さまは男のハンマーを奪って担いだ。
「……なんだ、慎重になったな?」
そして、にやりと笑った。
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
槍を構えた男が突っ込んでくる。俺さまはハンマーを持ったまま跳びあがった。
男の頭上を一回転しながら跳び越え、その最中に男の後頭部にハンマーをぶち当てる。
男は頭から血を流し、動かなくなった。
残るは2人。剣とナイフ持ちだ。俺さまは指を動かし、連中を挑発する。
剣の男がじりじりと間合いを詰める。構えから、なかなかの手練れであることは分かった。
俺さまは笑うと、ハンマーをめがけて放り投げた。
ナイフ持ちの方へだ。
「……っ!?」
お互い、予想外の方向へと武器が飛んできたらしい。ナイフ持ちは体勢を崩し、剣の男は一瞬視線を俺さまから逸らした。
その瞬間には、俺さまは男の間合いに入っている。
顎を揺らすように顔面に拳を叩き込んだ。男の身体から面白いように力が抜けて、そのまま地面へと倒れこむ。
俺さまは男の剣を拾うと、残るナイフ持ちに目を向けた。
ナイフ持ちは黒いフードと外套をまとい、腰が抜けた状態だった。
俺さまは剣をそいつの喉元に突きつける。
フードを剣先でとると、そいつは女だった。
「……答えろ。誰に頼まれた?王国か?」
「……み、見逃してちょうだい。頼まれただけなのよ……!」
女の瞳が潤む。
「だから誰に頼まれた?それを言えば考えてやるよ」
「……それは言えないわ。傭兵ならわかるでしょ?」
そう言って、女は外套の中にある胸元を俺さまに見せつけてくる。
「……か、代わりに私の身体を好きにしていいから……!!」
ふむ、と俺さまは剣を下げた。依頼人の事を守るのは、傭兵にとってはマナーだ。俺さまも傭兵育ちだから、そのあたりはよくわかる。
女は剣を下げた瞬間に立ち上がり、俺さまめがけて短剣を振りかぶる。油断させて隙を伺うのも、傭兵としては当然だろう。
わかっていれば、油断するものでもない。
俺さまは下げた剣をそのまま上げ、女の首を切り裂いた。頭が首と分かれ、転がり落ちる。
血しぶきを上げて、女の身体が倒れた。俺さまはそれを蹴り飛ばし、自分の身を確認する。返り血が付いてしまうと、町を堂々と歩けないではないか。
「……そんなことを気にする必要はない」
路地裏の暗がりから声がした。俺さまが振り向くと、そこには一人の男が立っている。
俺さまの半分くらいの大きさに、とがった耳。白い髪に、しわっしわの面。だが、その面にくっついた鋭い目は俺さまをまっすぐにとらえている。
「……ホビットか?ジジイ」
「残念ながら、エルフだよ。……ターナーだな。この王国の勇者パーティを先日追放された」
俺さまはジジイに向けて剣を向ける。
「心配するな。こいつらの依頼主はワシだ。……そして、お前を襲うつもりはもうない」
ジジイは両手を上げて、戦う意志がないことを示しながら笑う。
「その戦闘能力、女相手でも躊躇しない容赦のなさ。……文句なく合格だな」
「合格?」
「喜べ。仕事のないお前にもってこいの依頼がある……詳しくは場所を変えよう」
ジジイはそう言うと、路地裏の暗闇へ姿を消していく。
俺さまもジジイの後を追って、暗闇へと向かっていった。
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