マンドラゴラのレクイエム
あきかん
第1話
蝉が泣いて日差しが僕を焦がしていく。何も出来なかった夏が始まった。
ただ時間だけが過ぎていく。僕は彼が残したマンドラゴラに水をやる。
鉢植えに植えられたマンドラゴラはまだ芽が出たばかりであった。
彼の思い出を整理していると、『マンドラゴラの育て方』という本が出てきた。何でマンドラゴラを育てようかと思ったのか、今は確かめるすべはない。彼が最後にやり残した使命を僕は引き継ぐだけだ。
優しいね。なんて買い被った言葉を彼はくれるのかもしれない。そんな強がりだけが今は前を向く希望だ。
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