第46話・情報得られず【後編】
「パベルは何か思い出したのか?」
「ああ。そう言えばガットゥーノから『ビーストスレイヤー』の話を聞いたんだった。」
「ガットゥーノは魔王軍で、どこに属しているんだ?」
「……海魔将の軍だ。」
「……カンナのお母さんは海魔将に捕まっている。そう考えて間違いないな。」
カンナのお母さんの居場所に推測を立てると、そのカンナが今度は俺にしがみ付いてくる。
この子は俺に視線を向けるだけで、何にも話そうとしない。何かを決意したような、強い視線だな。
「カンナはお母さんを助けに行きたいよな?」
「行きたいです!! 今すぐに!!」
今すぐ……か。
「それは駄目だ。俺たちは海魔将の襲撃の意図を理解していないんだ。無闇な潜入はできない。」
「汐さん!!」
俺にしがみ付きながら唸るカンナを見ていると俺も良い気持ちはしない。だけど今回は陸魔将のジョルジョルとは前提の何もかもが違うのだから。
どうやら俺の考えをパベルは理解したらしい。俺にレオーネの情報を教えてくれたのは他ならない彼女だからな。
……さて、どうしたものか?
「汐さん、私たちからもお願いします。カンナちゃんのお母さんを助けたいのは私たちも一緒の思いなんです。」
「テイさん? だけど、海魔将・レオーネは卑怯で残虐なんだろう? 下手に動いて罠にでも掛かったら……。」
「汐くん!! あたしからもお願いだからリセちゃんの救出に力を貸して!!」
テイさんとマイさんの二人が俺に懇願してきている。この二人だって海魔将の塔に突入して、その嫌らしさを実感したはずだ。
と言う事は、この二人にとってもカンナのお母さん、リセさんはそれほどまでに大事な人と言う事か。
俺は頭を抱えてしまった。
何しろ、俺たち仲間内で意思が統一されていないのだから。これはパベルだけなく、俺も失敗したのだろうか?
俺がパベルに余計な質問をしてしまったから、カンナの歯止めが聞かなくなったと言うことか?
……マズいな。
ガイアまでもが部屋の片隅で気まずそうな表情を浮かべている。
このまま行けば、下手をするとカンナは例え単独でも海魔将に挑んでしまうそうだな。
だが、ここで予想外の出来事が起こることになる。パベルから聞いた情報では海魔将は卑怯な人物。それ故に俺の想像は根城で座して待つ人物像を思い描いていた。
それは、なんの前触れもなく起った。
俺たちのいる部屋の壁が外側から破壊され、その瓦礫が室内に散乱したのだ。そして散乱した瓦礫とともに煙が部屋に土煙が立ちこもっていく。
俺は目の前にいるカンナを庇いつつ、破壊された壁の方向に視線を向けて警戒を強めた。
また襲撃か?
俺は最悪の事態を想定したつもりだった。だが、煙が立ちこもるその先には俺の想像を超えた最悪が姿を表すのだった。
「私が海魔将のレオーネ・ボヌボヌよ。神の使徒はいるかしら?」
海魔将本人による想いもよらない襲撃だった。
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