異世界へ追放された俺は魔王討伐を目指す『隔世遺伝による魔族の子孫』 〜追放先で『防御力1』の紙装甲女神の唇に舌をねじ込んだ結果、彼女と契約しちゃいました〜

こまつなおと

第0話

「ガイア!! 君はどうして俺の言う通りにしないんだよ!!」


「だってだって!! 宝箱があったら開けないと開けないと!! お宝が入ってるかもしれないじゃない!!」


「はあ……、ガイアのお嬢ちゃん。このダンジョンは五階層までは調べ尽くされてるんだ。しかも、ここは一階層だぞ? 宝箱なんて残ってるわけないだろう?」


「こんの駄々っ子女神!! 君のスキルや称号はただでさえ敵味方問わず混乱と誘惑を撒き散らすんだから、俺たちの言うことくらいは来てくれよ!!」


「うきいいいいいいいいいいい!! もう限界よ、走るだけでHPががガンガン減っていくわあああああああああああ!! 防御力が1だから走るだけで痛いのよおおおおおおお!!」


「ガイアちゃん、頑張って!! あ、あそこ!! 汐さん、あそこまでのT字路を曲がれば!!」


「カンナ、索敵はどうなってる!?」


「大丈夫です!! この一体は私たち以外に気配を感じませんから!!」


 俺たちは魔王軍の幹部が根城にするダンジョンに足を踏み入れていた。


 そして現状はと言うと、トラップの巨大な球体に追いかけられている。


 何故かって?


 駄々っ子女神のガイアが探索中に見つけた宝箱を開けたからですよ!!


 このパーティーは俺と『一応』女神のガイアに優秀な索敵スキルを持つカンナ、それと魔族のパベルによって構成されている。


 そしてクエストなどを決行する際は俺とパベルが全体の作戦を練る。


 今回なんて一晩かけて俺たちが作戦を練ったのに……。


 こんの駄々っ子女神が言うことを聞かないから、トラップが発動したんだよ!!


 ガイアの見た目は豊満な胸とショートカットの髪に八重歯が似合う健康的な美少女だと言うのに……。


 保有する称号が敵味方問わずに『混乱効果』と『誘惑効果』を撒き散らすから!!


 しかも攻撃力と素早さのステータスが999なのに防御力が1と言う残念設定!!


 走るだけでダメージを受け続けるトラブルメーカーなんだよ!!


「カンナ!! キツいようならおぶろうか!?」


「大丈夫です、汐さん!! それよりもガイアちゃんのHPは大丈夫ですか!?」


 今しがたガイアに気を使うよう俺に言った子はカンナ。


 まだ11歳にも関わらず色々と周囲に気を配る事が良くできた子だ。


 まだ11歳ですよ?


 ガイアなんて女神だらか2000歳なのに……11歳に気を遣われているとか終わってるでしょ!!


 しかも女神のくせに回復魔法も使えないガイアに変わってパーティーのヒーラーを務める優秀な子なんです。


 精神的に言ったらカンナの方がガイアよりも年上なんだよ!!


「汐、俺たちは空魔将を叩きに来たんだ!! それをダンジョンの序盤で体力を使ってる場合じゃないぞ!?」


「パベルも俺に言わないでくれる!? 全てはこの駄々っ子女神が言うことを聞かないからでしょ!!」


「汐おおおおおおおおお!! 私を見捨てないでええええええええええ!!」


 うぜえ!! ガイアも2000歳のお婆ちゃんなら泣くなよ!!


 君は仮にも女神だろうが!!


 俺が心の中でガイアにツッコみを入れていると、気が付けばカンナの言っていたT字路に近付いていた。


 このダンジョンは俺たちが走る方向に下りの勾配がついているから球体が追いかけてくるけど、あそこの角さえ曲がれば!!


「みんな!! もう少しだ頑張れ!!」


 俺はパーティーのメンバーに檄を飛ばして、目前にしたT字路に勢いよく飛び込んだ。


 そして、俺に続いて残りの三人も同じように飛び込んでくる。


 倒れ込みながら俺たちが飛び込んだ方向とは別の方向に転がっていく巨大な球体を見て、パーティーメンバー全員が肩を撫で下ろしていた。


 ……助かった!!


「はああああ……。本当に死ぬかと思った。カンナ、大丈夫?」


「はあはあ……、なんとか大丈夫です。あ!! パベルさん、ごめんさない!!」


「気にすんなって、カンナのお嬢ちゃんが転びそうだったからな。ちょっと支えただけさ。」


 T字路に飛び込んだ際に転んだカンナを受け止めているのは魔族のパベル。


 元々は魔王軍に所属していたが、訳あって俺たちの仲間になっている。


 徒手空拳技が冴え渡る、このパーティーの主力だ。


「痛ああ、私も転んじゃったわ。固いから床かと思ったらパベルの胸だったのね?」


 ……一人称が俺で中世的な容姿をしているから分かりづらいがパベルは女だ。


 そして彼女は防御力が1であるガイアを気遣ってその胸で受け止めてくれているわけだが。


 当のガイアの言葉にパベルは顔を引き攣らせている……、パベルは体を鍛えているからペチャパイなんだよね。


「おうおう、ガイアのお嬢ちゃんは毎度の如く俺に喧嘩を売ってくるじゃねえか?」


「へ? そんな事ないわ、いつもありがとう。」


 ガイアは天然ボケでパベルを怒らせながら、キョトンとした表情で素直にお礼を言う。


 これにはパベルも怒りの矛先を見失ってしまっているじゃないか。


 ガイアは本当に業が深いと思うよ。


「みんな、今は体制を立て直そう。カンナはパベルの回復をお願いできるかな?」


「はいです!! パベルさん、じっとしていて下さいね?」


「いつも悪いな……、俺は回復魔法だけは才能がないからな。」


「ガイアは何もしないでじっとしてて……、って!! 言っている側から壁のボタンを押すんじゃない!!」


「へ? だってボタンを見つけたらまずは押すでしょう?」


「「押さねえよ!!」」


 俺とパベルの声がハモってしまった!!


 どうしてガイアは俺たちの話を聞かないんだよ!!


 ダンジョンに入る前に『絶対にボタンは押すな』と言っただろうが!!


「きゃああ!? 汐さん、床が!! 落とし穴です!!」


「嘘だろおおおおおおお!! 汐、俺は回復すらされないまま落ちるのかよ!!」


「だから俺に言うなよ!! パベルも文句は直接ガイアに言ってくれよ!!」


「汐おおおおおおおおお!! ごめんなさいいいいいいいいいい!!」


 俺たち四人はガイアの不用意な行動によって、突如現れた落とし穴へと悲鳴を上げながら落ちていくのだった。


「ガイア!! 保有する称号でいつも! いつも! いつも! いつも! 味方を混乱させるなっての!!」


「汐おおおおおおおお!! 私を見捨てないでええええええええええ!!」


 俺たちのパーティーはパベルにカンナと優秀なメンバーがいるのに、どうしてガイアは二人のプラスを天然ボケでマイナスにするんだよおおおおおおおおおお!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る