サイバーパンク・マンドラゴラ
綾繁 忍
ニューロマンドラゴラ
——やっちまった。だから言ったんだ、あのクソしつこいジャパニーズ・ヤクザに手を出すのはご法度だって。そりゃ俺の借金は久しぶりに会う甥っ子みたいに見るたびデカくなっているし、唯一と言っていい特技である
愛用のエア・バイクは金属を引き裂くような音を立てながらトーキョー街区のネオンの隙間を滑り走る。いくつもの弾丸を受けてエンジンがヒイヒイ言っている。俺が仕事に勤しんでいるときもこんな風に見えると従兄弟のジェイコブが言っていた。他人の脳に自分の脳をつないで、めぼしい記憶を掘り返して奪ったり、逆に適当な記憶を埋めて隠したり。言っていることは大袈裟だが、目的は大抵浮気の痕跡集めやら、喧嘩でどっちが最初に殴ったのか証明するやら、基本的にはくだらないもんだ。まして裁判の証拠になんか使えない(なにせ違法だ)もんだから、俺の特技も活かす場所はどちらかというとアングラ寄りな場所になる——と、今度は
なんで逃げてるかって? トーキョーのロシアン・マフィアが情報盗み出せってんで依頼してきたと思ったらそのターゲットがジャパニーズ・ヤクザだったっていう、それだけの話さ。俺は最後まで反対したんだが、
そのヤマはまだ詳しく聞いてないんだが、一言だけキーワードを聞いている。
“マンドラゴラ”。
意味わかんねえだろ? 俺だってわかんねえ——あっ、しまった、こりゃ落ちる——
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます