第2話 お掃除開始

 指名手配犯の男が壁際に追い詰められていた。


 だが彼を追い詰めていたのは、刑事でもなく警察官でもない。


 男の眼前にいたのは円形小型掃除ロボットである。


「おとナシク投降してクダサイ」

機械音声で掃除ロボットがテキストを読み上げる。


 男は度肝を抜かされるが、すぐに平静を取り戻した。 


「あぁん?お前みたいなゴミロボットに何ができる。俺は全国の刑事デカから5年も逃げ回ってんだ。今更投降するかよ」


 男が降参しないのを認識すると、掃除ロボットはガタガタと震え始める。


「お、おい! なにしてんだよ」

「ルンバ式にプログラム変更。お掃除トランスフォーム開始しマス」


 ガタンガタン。掃除ロボットは忽ち白黒のヒト型ロボットに変形した。手にはレーザー銃を持っている。


「は? ただのゴミロボットだったよな」

 

 単眼の赤外線センサーが男を捉えた。


始末対象ゴミ1名確認。直ちに焼却しマス」


 レーザー銃の先端ライトが点滅し始める。


「おい待てって――――」


 ズドン! 男の体は一瞬にして消し炭になった。


 殺人ロボットは元の円形小型掃除ロボットに戻る。


「28件目のゴミ掃除完了しマシタ。」

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