あなたの私は、わたしの君

ふぃふてぃ

第1話 プロローグ〜手紙〜

親愛なる、あなた様へ


あなたが、この手紙を読む時、きっと、あなたは私の秘密に気付いている事でしょう。

幻滅させてしまって、ごめんなさい。

決して騙すつもりは無かったの。

ただあなたといる時間が愛おしくて、遂には告げることが出来ませんでした。

ほんとに、ごめんなさい。

あなたをあなたと呼べた時間は、とても温かく、何百年と冷えきった私の心を一瞬で溶かしてしまった。

私はあなたに甘えてたんでしょうね。

あなたの貴重な時間を奪ってしまった。それは許されるべき事ではありません。

最善とは言えませんが、私は時の魔女。

最後の力で、あなたの時間をお返ししたいと思います。

許してとは言いません。

どうか、私を忘れて。

私を忘れて、あなたは幸せになって、あなたはまだ、この世界で生きられるのですから。

私はあなたに出会えて幸せでした。


   時の魔女 ロリエッティ・ロリエッタ




男は焼け焦げた紙の束をクシャッと握りつぶし、ポケットに無理やりねじ込むと、森の方へと向かって歩き出した。

そんな孤独な男に、農民は不安そうに異議を唱えた。


「騎士様、もうすぐ暮れるます。ウチの村さ救ってくださるのは嬉しいが、命を粗末にするもんじゃねぇ。魔女は逃げたばっかだ、気が立ってる。今日はやめといた方がいい」


男は振り返る。

「魔女なんて居ませんよ。私は大切な人に会いに行くのです。そう思って下さい。なぁに、交渉するだけです。一戦交えようなんて思ってもいませんよ。」


そう言うと、男は忠告も聞かず、日の当たらない森の、闇に消えていった。

山が夜を招き入れる。そんな時刻だった。

さわさわと鳴り止まない葉音と揺れる木々の影がおどろおどろしく不気味に笑っていた。

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