適合者の失踪【適合者シリーズ8】
東江とーゆ
リリーとの会話
リリー
日付が変わって、2000年4月26日になった。
舎人さんと比留間さんは、僕に気づくことなく部屋を出ていく。
僕は室内に居たのだが、リリーの魔術によって姿は不可視になっていた。
しばらくして2人は家を出ていったようだ、恐らく僕を探しに。
GPSの発信機はリリーが近くにいると機能しなくなると彼女から説明された、2人は当てもなく僕を探して彷徨うことになる。
魔術の効果が解かれて、僕の姿が見えるようになるとリリーも再び姿を現した。
長身痩躯で透明感のある青白い肌の肢体を真紅のドレスが覆う。
扇情的に開きはだけている胸元からは、少女のような薄い膨らみとピンクの蕾をちらつかせている。
痩せて削げた臀部まで伸びた黒髪が形のよい卵型の容貌を包み、目蓋は縫合されて閉じられたままだった。
ガブリエル・リリー・エックハルトは協会の付随魔力制御教練を管理している教官だ。
協会とは、外側の神々の情報の秘匿を目的とする団体で、外側の世界『外宇宙』の影響や痕跡の調査、検証、管理、等を秘密裏に行っている。
その情報や知識を人類は知るべきではない。
それを知ることは、危険なクリーチャーとの遭遇や、破滅をもたらす魔術や呪詛に晒されるリスクをともなう。
外宇宙に関われば、人として正気を保つことは困難だ。
リリーは協会内の、付随魔力と呼ばれる『魔術に依らない魔力』を体得している協会員の魔力制御のカリキュラムを管理している。
つまり協会内の異能者が暴走しないように教育しているのだ。
僕の近くでいえば同居人の日下美由紀がリリーのカリキュラムに参加している。
日下は見鬼という能力をもつ、異能者だ。
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