エピソード51-30
インベントリ内 プレイルーム 16:00時――
カナメから渡されたA4のコピー用紙は、ユーザーへの奉仕活動をする際のオーダーシートだった。
コピー紙を受け取り、内容を見た瞬間、静流は硬直した。
「こ、これ……本当にやるんですか?」
オーダーシートは、以下の内容だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【オーダーシート】
お名前(偽名可) 様
・ご希望の項目にチェックを入れて下さい。
0.お好きなコースをお選び下さい。
□極上の夢体験コース (クーポン300pt相当)
□夢+アクター実体験コース (クーポン500pt相当)
□上記+神ボイス付昇天コース (クーポン800pt相当)
※1項目100ptで、アクターへの別途追加オーダーを承ります。
神ボイスは昇天コース限定
1.貴方のご覧になりたい夢は、以下の内どれでしょうか?
□後輩の静流は、貴方に一途で従順なワンコ受け
□敵国の捕虜となった静流に、陰湿な拷問を繰り返すイケメン将校
□貴方が夜、仕事から疲れて帰って来ると、出迎えてくれたのは
裸エプロンの静流だった
□学生寮のルームメイトである静流が、夜な夜な貴方の布団に入って来る
□その他(題名と役名がわかればご記入下さい )
2.アクターは、誰を指名しますか?
□ノーマル静流
□シズルー・イガレシアス大尉
□シズベール・ゴクドー
□シズミ
□その他( )
3.アクターに望む事は、以下の内どれでしょうか?(複数記入可)
□顎クイ □壁ドン □床ドン □あすなろ抱き □腕枕 □頭突き
□お姫様抱っこ □人間イス □膝枕・耳掃除
その他 (具体的に )
4.アクターに言わせたいセリフをご記入下さい。
( )
注)本オーダーシートは、アクターに提出する前に『検閲』を行います。
その結果、検閲官の判断で内容を変更する場合がある事をご了承下さい。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
コピー用紙に目を通している静流に、カナメは自信満々に言った。
「事前にアンケートをとって、リサーチした結果なんやぞ? どや?」
「8冊コンプすれば『神ボイス』がもらえる! 何て太っ腹!」
ドヤ顔のカナメに右京が乗っかる。
オーダーシートを見た静流は、わなわなと震え出し、カナメにツッコミを入れた。
「これじゃあ、新手のタケノコ剥ぎじゃないですか!」
「直接金のやり取りは無いから、ソレには当たらんわ。あくまでも『奉仕』はお買い上げに対する感謝の気持ちや。その辺のアイドル活動と同じやろ?」
「最早グレーを通り越してブラックですよ!」
「心配せんでエエ。御恩と奉公、桃太郎の家来とキビ団子。需要と供給って事や。 ニヒヒ♪」
上手く丸め込まれそうになっている静流が、苦し紛れにカナメに言った。
「『夢』しか選択しないで満足する人なんて、いるんですか?」
「普通にいると思うわ。静流の想像以上にヤバいわよ? アレ」
カナメの代わりに薫子が睡眠カプセルを絶賛した。
「『愛でるだけでイイ』と言うユーザーは結構いますよ。二次元が嫁、三次元には興味ないって人も多いですし」
続いて右京が補足した。
「じゃあ、夢以上を希望してくる人って、まさか……」
静流が発した言葉に、三人の声がシンクロした。
「「「十中八九、『ガチ恋勢』、でしょうね」」」
◆ ◆ ◆ ◆
献血カー付近 16:00時――
献血カー付近に固まっていた『いかにもなユーザーたち』は、桃魔の部員たちが整列させ、指示を待っていた。
「もう16:00時じゃない、閉門まで1時間よ?」ざわ…
「撤収を考えると、実質30分くらいじゃないかしら?」ざわ…
その時、献血カーの近くで桃魔の部員が拡声器で叫び始めた。
「皆さん! 大変お待たせいたしました! 只今から入場前の検閲を始めます!」
「「「来たぁぁぁ♡」」」
「前の方からこちらにお入りください!」
「『オーダーシート』のご記入はお済みですか?」
ユーザーたちはそれぞれA4のコピー用紙を手に持っていた。
あらかじめオーダーシートを渡し、記入させていたのだろう。
部員に促され、一人目が案内された。
「ふむ。外見は献血カーですが、中はこうなってたんですか……」
献血カーの中は、睡眠カプセルが撤去された代わりに、長机とパイプ椅子が二列設置してあった。
「ここまでの方、お入り下さい!」
中に通されたのは10人だった。
「こちらにオーダーシートを入れて下さい」
「シリアルナンバーをお受け取り下さい」
事務的に処理を進める部員たち。
椅子に座ると、部員が説明を始めた。
「これから検閲を始めます。オーダーシートにご記入の内容で、アクターに対する行為について安全かつ道徳上問題無いかを確認し、パスした方から順にご入場頂きます」
部員の一人がオーダーシートに目を通し、『承認』のハンコを押した。
「1番の方、お入り下さい!」
「は、はい!」
「「「おぉー」」」
最初のユーザーは、特に引っ掛かりもなくパスしたようだ。
「2番の方どうぞ。ですが、ココにある『指チュパ』は、アクターの衛生上認められませんので、ご了承を」
「うえぇ!? ダメですか? つうか口に出さなくても……」
今のやり取りを見て、後続のユーザーたちが焦り出した。
「うへっ、読み上げられるの、ヤバくない? 恥ずぅ」ざわ…
「これでは、個人の性癖が露呈してしまうでござる」ざわ…
そう言ったユーザーの意見を反映し、その後は当人同士で聞こえる程の小声でやり取りする流れとなった。
「唾液サンプルの採取はアウトです」コソ
「ですよねー」コソ
次の人を呼んだ部員が、あからさまに微笑んだ。
「ナンシー関サバさん、今日は色々助かりました」
「ど、ども。私なんてそんな……」
謙遜している関サバに、部員がウィンクした。
「ちょっと色を付けておきました。期待して下さいね♪」
「そ、それはどうも……」
検閲を終えたユーザーたちが、係の部員に誘導され、次々とインベントリに入って行く。
「はーい。仮眠室はこちらでーす!」
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