エピソード51-16

ポケクリバトル会場 13:00時――


 開始時刻となり、大型テントの外では、観客が歓声を上げている。


「お! もうギャラリーが来てるぞ」

「って事は、ネット中継も始まるのか?」


 『ポケクリバトル』はネット動画サイトの『ニャンニャン動画』で生中継される。

 右側のモニターに外の様子が映し出された。


「只今より、『ポケットクリーチャー・ギルガメッシュ』制作決定記念企画、『ポケクリバトルトーナメント団体戦IN膜張』を行います!」



「「「「うぉぉぉぉぉー!!」」」」



 アナウンスの後に飛び出したのは、二体の着ぐるみだった。

 よく見ると顔の部分がオープンになっており、女性の顔が見えた。



「みんなぁー! やさぐれてるかぁー!」



「「「「うぉぉぉぉぉー!!」」」」



「垢BANは、怖くないかぁー!」



「「「「うぉぉぉぉぉー!!」」」」



 画面を見ていた一同は、一瞬目を疑った。

 ポケクリを模したキャラなのだろうか。色はお約束の白と黒だった。


「あっ! 白黒ミサ先輩だ!」

「部長と……副部長!?」


 出て来た着ぐるみは、何と白黒ミサだった。


「シズム、何か聞いてる?」

「うん。そう言えば何かのMCやるって言ってて、張り切ってたなぁ」


 画面の中では、二体の着ぐるみが観客にぺこりと頭を下げた。


「えー、進行役は私、『シロミ』こと白井ミサと――」

「私、『クロミ』こと黒瀬ミサの――」



「「曖昧みー! エラきゃ黒でも白になる! でおなじみの『ゼブラッチョ』でお送りしまーすっ♡」」



「「「「シロミィー!!」」」」

「「「「クロミィー!!」」」」



 二体の着ぐるみがポーズをとると、観客が一斉に沸いた。

 それを見たユズルが、感心しながら呟いた。


「へぇー。先輩達って結構人気あるんですね?」

「一応アイドルもどき程度には知名度ありましたからね」

「ああ、以前、学校の闘技場の地下でライブやってましたね」


 今思えば、シズム誕生のきっかけが白黒ミサのライブだった事を、ユズルは思い出した。


「部長、副部長……念願の芸能事務所に入れてよかったですね……グスン」

「この感じだと、のちに黒歴史になるかもな……」


 裏で後輩たちに散々勝手な事を言われているとはつゆ知らず、ゼブラッチョの進行は続いていた。


「えー、本大会は参加者様の匿名性を考慮し、観客席側にはボカシを入れさせて頂きます」パチン


「「「「うおぉー!!」」」」


 シロミが指パッチンすると、後ろの巨大スクリーンに16組の参加チームが映し出された。

16分割の画面に、長机とゲーミングチェアに座った5人のメンバーたちが映った。

 予告通り、顔にはボカシが入っているが。

 画面に向かい、クロミが叫んだ。


「参加者のみんなぁー! 準備はオッケーかぁーい?」


「「「「いぇーい!!」」」」


「よぉし、お前らの本気、伝わったぜ! シロミ、ルール説明おねがぁい♡」

「はぁい!かしこまりぃ♡ では、団体戦のルール説明をしまぁーっす……」


 ここで、団体戦のルールをおさらいすると、


・プレイヤーは5人一組。 

・1プレイヤーが使用できるポケクリは1体。

・相手チームを全滅させるか、時間終了時の残りメンバーの数が多い方が勝ち。

・制限時間5分で、時間内に決まらない場合、2分ずつ延長戦を行う。


 シロミがルール説明を終えた。


「それでは早速、予選を開始しまぁーす!」

「予選については、時間短縮の為、AからDグループを同時に行います」

「四分割のマルチスクリーンでお楽しみ下さい!」


「「「「わぁぁぁー!!」」」」


 観客席から、ひと際大きな歓声が上がった。


「グループ予選の前半戦、先ずはチーム紹介でーす! Aグループ、A-1は……」


 シロミによる、チーム紹介が始まった。




              ◆ ◆ ◆ ◆




ワタルの塔 2階 応接室―― 


 レヴィたちがコミマケ会場に乗り込む方針が決まり、浮かれていた所に誰かが訪ねて来た。


「面白そうだな。その話、私も混ぜてもらいたい!」

「私も……割り込ませて頂けないでしょうか?」

 

 応接室の入り口に立っていたのは、意外なメンツだった。


「竜崎大尉!? と、神父様!?」

「ココナちゃん!?」


 入口に立っていたのは、竜崎ココナと、ジルベールだった。


「大尉殿も、コミマケに行かれるのでありますか?」

「ああ。私は静流殿が心配で仕方なかったのだ」

「ご心配、でありますか?」

「『薄い本』の宣伝に、無理やり付き合わされているのでは? と思ったら、足が勝手に動いてしまったのだ!」


 ココナはそう言いながら、くるりとターンし、ポーズをとった。


「無理矢理では無いと思うのでありますよ? 多分?」

「絵空事だと思っていたのだが、現実になったとあれば行かざるを得まい?」

「た、確かにそうでありますね……」


 結局何か理由を付けて、静流に会いに来ただけなのであろう。


「神父様も、静流様が心配で?」

「わ、私は……単なる好奇心ですっ」

 

 ジルは頬を赤く染め、クネクネと身をよじった。


「ですが、あそこにはカチュア・如月がいます。いろいろあって、私だと悟られては困るのです! あぁ、主よ、わたくしめのわがまま、どうかお許し下さい……」


 自分に酔っているココナと、ひたすら祈りを捧げるジルに、レヴィは困惑しながらも受け入れてやる事にした。


「了解しました。お二人の同行を許可します」




              ◆ ◆ ◆ ◆




ポケクリバトル会場 13:15時――


 グループC予選の前半戦は、ユズルたちのチームであるC-2とC-3のチームであった。

 巨大スクリーンに対戦メンバーが表示される。


 C-2 チーム名 ギャラクティカ・ソルジャーズ


 P1 ツンギレ 

 P2 親指溶鉱炉

 P3 スパダリ

 P4 メリーバッドエンド

 P5 自サバ女


「うほぉ! 俺たちの番みたいだぜ! 顔が出ないんだから、バカやってもイイよな?」


 シロミとクロミで、各チーム名とプレイヤーのコードネームが読み上げられた。

 プレイヤーは、自分のコードネームが呼ばれると、ゲーム椅子から立ち上がって自己アピールした。


「イェーイ! 親指溶鉱炉でーっす!」

「おい! ガキみたいな事すんな!」


 メンバー紹介が終わり、シロミたちが感想を述べた。


「ネット用語の様ですが、深い意味はあるのでしょうか?」

「んーどうでしょう? ですが、特に『スパダリ』さんは要チェックですねぇ。ボカシ越しにも伝わる風格、ヌフフ、マーヴェラス!」


 クロミはわざとらしくユズルを持ち上げた。

 次に、対戦相手のメンバー紹介が始まった。


 C-3 チーム名 デストロイド・モンスターズ


 P1 スパルタン 

 P2 トマホーク

 P3 ファランクス

 P4 ディフェンダー

 P5 モンスター


 呼ばれたメンバーたちは、パッと見柔道部とラグビー部の混成チームの様な、ガタイの良い連中だった。


「ヴォォォー!」

「ヤッてやるぜ!!」


 またシロミたちが感想を述べた。


「戦闘機やMTの愛称みたいですねぇ。いかにも強そうなネーミングです」

「確かに。名前からして紙装甲では無いのでしょうねぇ。スタミナ重視でしょうか?」


 予選である為、各チームの紹介時間はほんの数分だった。

 程なくシロミたちに、ADがカンペを見せた。


「早速ですがグループ予選の前半戦、開始します!」



「「「「うぉぉぉぉぉー!!」」」」



 ユズルたちは、最終の打ち合わせをしていた。


「何か、ヤバそうな奴らだな……」

「問題は、試合開始までお互いのポケクリがわからない事だ」

「お蘭さん、そう言えば最初は『推しクリ』を入れるの?」

「そこなんだが、どう思うよ? 先輩」

「うーん、そうですね、スタートダッシュは華麗に決めたいですよね?」チャ


「「「確かに!」」」


 素子の提案に、蘭子たちは賛同した。


「よーし、初陣だ。アタイがブルーアイズを連れてく! イイな?」


「「「「了解!」」」」


 ユズルたちはお互いアイコンタクトをしながら、インカムを耳に装着した。

 全チームの準備が整い、対戦開始のキューがかかった。


「それではグループ予選、開始です!!」



「「「「うぉぉぉぉぉー!!」」」」

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