エピソード47-28

ココナの深層心理の部屋――


 メルクとシズルーは、ココナの深層心理の部屋までたどり着き、メルクが説得を試みるが全く応じるそぶりを見せなかった。

 その為、予定通り作戦開始となった。


〔少佐、ミッションGO!〕

〔プランA、スタート!〕


 パァァー!!


〔閃光弾!? ううっ〕


 まばゆい光が、シズルーとココナを包んだ。




  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




 まばゆい光が消えると、ココナはベッドで寝ていた。

 窓に掛かっているカーテンの隙間から、日の光がココナの顔を射した。

 

〔う、ううん……はっ!〕


 ココナが目を覚ますと、隣に見慣れない青年が寝ていた。

 まだあどけなさが残る、桃色の髪の少年ともとれる容姿だった。


〔ふぁう?……おふぁようございます、たいちょう……〕

〔キ、キミは確か、先日入隊した……〕

〔やだなぁ、寝ぼけてるんですかぁ? 自分です。シズルー・イガレシアス伍長ですよぉ〕


 ココナは、まだ状況が飲み込めていなかった。


〔ところで、なぜキミは私のベッドで寝ているのだ!?〕

〔とぼけないで下さいよぉ、夕べは凄かったです。あんなに求めて来て……隊長はまるでケモノのようでした〕


 ココナの懐にいる青年が、あられもない姿で、うっとりとココナを見つめ、寄り添っている。


〔さっきから何を言っているのだ? それに貴様、何で上半身裸なのだ!?〕

〔え? 本当に、何も覚えていないんですか?〕

〔夕食の時、ウォッカを飲んだ所までは覚えているのだが……〕

〔そんな無責任な事、言わないで下さいよぉ、自分の『初めて』を奪っておきながら〕


〔な、何だと? 私は……全く記憶に無いぞ?……ひっ!〕


 シズルーの発言に飛び上がり、自分の衣服も乱れている事に気付き、慌てて布団をかぶるココナ。


〔またぁ、ふた昔前の政治家みたいな事言っちゃって。隊長ったら、照れてますぅ?〕

〔ば、バカを言うな! 本当に覚えておらんのだ!〕


 ココナに怒鳴られ、シズルーは少しの沈黙ののち、すすり泣き始めた。


〔ヒグッ、ヒドい、ヒド過ぎです隊長。自分をキズモノにしておいて、記憶に無い、なんて……〕

〔ま、待て、泣くな。頭ごなしに怒鳴った私が悪かった〕

(可愛い、可愛過ぎる……た、たまらん。気が狂いそうだ……)


 明らかに動揺しているココナ。心臓の音がここまで聞こえる程、早鐘を打っている。


〔覚えてはいないが、貴様を辱めた事が本当ならば謝罪する。済まなかった〕


 ココナはベッドに正座し、青年に向かい、誠心誠意謝った。 

 シズルーはピタッと泣くのを止め、ココナを真っ直ぐに見つめた。


〔許します。ただし、責任は取ってもらいますよ?〕ファサッ


 シズルーはココナをやさしく抱きしめた。


〔ふぁう!? 貴様、私で……よいのか?〕 

(こ、これが俗に言う『モテ期』という事? いいえ、騙されてはいけない、どうせこの後大どんでん返しがあるのよ……)


〔誰でもない、隊長がイイんです。 また自分を『棒切れ』と罵って下さい……はぁ、はぁ〕


 ココナは言い知れない興奮を覚えた。


〔ええい、知るか! 貴様の望み、かなえてやろう……脱げ!〕フーフー

〔あーれー〕


 シズルーの衣服をはぎ取り、覆いかぶさるココナ。


(ああ……満たされていく……夢なら、覚めないでくれ……)


 その頃、夢をモニターし、静流に指示を送っている忍たちは……。


「あんなにイキイキしてるココナ、見た事ないです! ブフゥ」

「それもう一息! 畳み掛けるなら、今よ!」

「ちょっと待って、ココナの様子が変!」


 モニターの中の静流は、ココナにマウントポジションを取られ、身動き出来ずにいた。


〔ヌッフッフ。貴様の身体、綺麗に舐め取ってくれるわ!〕ヌチャレロ

〔ひゃあ、くすぐったい……です〕

(マズい、変態モードに入ってる)


 ココナはシズルーの身体を、首筋から胸へと舌をはわす。

 次第に下の方に移動し、もうすぐデリケートゾーンに到着する寸前、ココナはシズルーを見た。


「どれ? 私の愛撫でギンギンになっているか?」フーフー


 ココナが、シズルーのパンツのゴムに手を掛けた時、シズルーがココナに言った。


〔ま、待って下さい隊長!〕ハァハァ

〔お預けか? 生意気な〕

〔続きは、もっとムードのある所でイタしましょうよ♥〕


〔ぱっふ~ん〕ブッ!


 シズルーの悩殺ポーズで、ココナは大きくのけ反り、鼻血を吹いた。


〔今だ!〕バッ


 シズルーはベッドを飛び出し、心の扉に向かう。


〔ボクを捕まえて下さい、たいちょう♥〕

〔今度は鬼ごっこか? 捕まえてじっくりお仕置きしてやろう。グヒヒヒ〕


 シズルーは上手くココナを心の扉の方に誘導している。


〔コッチです隊長! この扉の外でみんなが待ってますよー♥〕

〔む? みんな……とは?〕

〔とぼけないで下さい、貴女の部下でしょう? 夏樹さんや瞳さんに、ケイさんですよー〕


 部下の名前を聞き、ココナの緩んだ顔が次第に元に戻り、顔色が悪くなっていった。


(私ったら何を……これが噂に聞く『賢者タイム』?)

〔……おかしいとは思ったのよ。でも、キミがあまりにも可愛過ぎて……早く帰りなさい〕

〔へ? 隊長も一緒に帰りましょうよぉ♥〕


 ヤバい空気になって来たので、シズルーがココナの手を掴もうとするが、パシン、と弾かれてしまう。


〔た、隊長? コチラで続き、しましょう? ヌチュヌチュのグッチョングッチョンですよぉ♥〕


 ルリに指示されるままに、精一杯ココナを誘惑するシズルー。

 しかし、ココナは乗って来なかった。


〔……行かない〕

〔何でですか? 僕を可愛がってくれないんですかぁ?〕

〔行かないったら行かない! どうせマヌケ面した私がその扉を出ると、みんな揃って私を指さしてバカにするんでしょう!?〕

〔へ? 隊長?〕


〔う、うわぁぁぁぁん!〕タッタッタ


 シズルーが呆気に取られている間に、ココナは奥の方に走り去って行ってしまった。

 仕方なくシズルーが一人で扉を開けると、メルクが待っていてくれた。


〔うむ、もう少しじゃったんじゃがのう……失敗じゃ!〕

〔中々、手強いですね。僕なりに頑張ったんですがね……〕


 自分の衣服が乱れているのに気付き、慌てて直すシズルー。


〔うわぁ、体中舐め回されちゃった。思い出すと恥ずかしー!〕

〔と言う結果じゃが、どうするのじゃ?〕 


 メルクがスクリーンの方を見ながら、アマンダたちに話しかけた。

 その頃、会議室の面々はと言うと……。


「大尉殿の少年のような迫真の演技……ああ、素敵」

「なんか、弟に悪戯してるみたいな気分でしたね……」


 夏樹と瞳はそんな感想だった。


「ズルい! 私だったらもっと彼を悦ばせる事が出来るのに……」クフゥ

「ブフゥ、私が代わりたい……です」ハァハァ

「あんなに興奮して……よほど溜まってるのかしら?」


 カチュア、ルリ、ジェニーはそんな感想だった。

 モニターしていた者たちは、リナとケイを除き、全員鼻血をたらしていた。

 ケイはみんなにティッシュを配りながら、ぼそっと呟いた。


「う~ん、かなりひねくれてるね。姫様」

「ずぅっと悪夢を見ていたんだから、ひねくれるのも仕方ないわよ」


〔どうします? 一旦戻りますか?〕

 

 シズルーがアマンダたちに向けて言った。

 忍が腕を組み、うなっている。


「面倒な奴。昏倒させて無理矢理連れ戻すか?」

〔あまり霊体にダメージを与えてはならん。強引な手は薦められんな〕


 忍の過激な発言に、メルクは慌てて否定した。


〔やっぱり扉を出たココナさんに【メンタル・キュア】を掛けるしか、無いんですかね……〕


 シズルーは顎に手をやり、ため息混じりにそう言った。

 するとリナが、半ば呆れた顔でシズルーに言った。


「そんなの簡単だろ? 静坊がメガネ取って、アイツをメロメロにしちまえばイイじゃんかよ?」

〔そ、それは最終手段にしましょう〕


 最早静流が誰の役をやっているのか、わからなくなっている面々。


「大尉殿も使えるのですか? 静流様の必殺技【魅了】を?」

「大尉って、そんなしゃべり方だったっけ? 何かカワイイ」


 周りがわいのわいの言い出したので、アマンダは咳払いをした。


「コホン、プランA、失敗よ! 直ちにプランBに移行!」


「「了解!」」

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