エピソード35-17

「はい次の方って、美紀さんと真紀さんは最初に撮りましたよね?」

「さっきのはスリーショットだったでしょう? 私たちもツーショットが欲しいの」

「早くして下さいね、もう疲れましたよ」

「「はぁーい!」」


 結局全員とツーショット写真を撮らされた静流。


「ふぅ。やっと終わった、のか?」


 双子の撮影が終わり、ぐったりとしている。すると、


「あたしたちも撮っとこうかなぁ?」

「ついでなんだから、イイでしょう?」


 真琴と美千留が、ひょこっと顔を出した。


「もう、わかったから、早くコッチに来てくれよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて、よいしょっと」

「うぐぇ? 座るとこ、違うぞ? 真琴?」

「イイのよ、さあ、撮って!」


 真琴は大胆にも、静流の膝の上に横座りし、腕を静流の首にまわす。


「ちょっと、重いよ」

「失礼ね! すぐ済むから、おとなしくしなさい!」


 そう言うと真琴は、ロディに向かってポーズをとった。 


「イイねぇー真琴ちゃん、撮るよ、はい、ポーズ」カシャ


 ロディは、カリスマカメラマンのような口調で、シャッターを切った。


「やるなぁ、幼馴染ちゃん」

「そっか、あのポーズって手があったかぁ、くぅぅ」


 ちょっと離れた所で見ていたリリィと仁奈が、静流たちを見て、そう言った。


「終わったんなら、早く降りてくれよ、 恥ずかしいだろ?」

「はいはい。次、美千留ちゃんね」

「へ? お前も撮るの?」

「イイじゃん。思い出作りだよ。はい抱っこ」

「おいおい、もうそんな歳じゃないだろ?」

「イイの! 散々好き勝手やってた罰だよ!」


 静流はしぶしぶ美千留を「お姫様抱っこ」した状態で椅子に座る。


「さっきの真琴ちゃんのポーズも捨てがたいけど、やっぱコレだよね♪」


「おいロディ、早く撮ってくれ」

「了解。撮るよ、はい、ポーズ」カシャ


 これでツーショット撮影会は終わった。

 時計を見ると、丁度集合写真を撮る時間になっていた。


「お土産買う時間、無くなったじゃないか。どうしよう」

「大丈夫よ。少しなら都合付けるから。【ゲート】のお陰で移動時間は一瞬だしね」

「アマンダさん、ありがとうございます。助かります」パァァ

「くふぁあ、イイのよ。もっと甘えて頂戴」


 少佐は静流のニパを食らい、一瞬よろめいた。





              ◆ ◆ ◆ ◆





 集合写真を撮る時間となり、専用のステージに集まる。

 シズム、ブラム、フジ子を入れると、16人となり、二列で収まりそうだ。


「並び順だけど、やっぱ階級が上の人が前よね? ムフゥ」

「え? そんなぁ、オフの時くらい、階級は抜きでおねがいしますよぉ」


 少佐が勝ち誇ったようにそう言うと、リリィが反論した。


「じゃあ、僕たちは後ろですね」

「隅っこでお願いします」


 静流たちは民間人である為、後ろの隅を希望した。


「だ、ダメよ! 静流クンは前の中央でお願い」

「へ? だって今、階級とかって」

「今回の旅は、アナタが主役なのよ? 静流クン」

「え? そうなんですか? てっきりオマケだと思ってました」

「だから、アナタたちは真ん中に来なさいな」

「そう言う事でしたら、真琴、美千留、前に行くぞ」

「わかった」


 結局、前列の中央に静流、両脇を真琴と美千留の配置で収まった。

 見栄えの関係で双子を左右に配置し、後は適当に並ぶ。



「はいはい皆さん、撮りまーす! はい、ポーズ」カシャ



 撮影係の掛け声で、それぞれが満面の笑みを浮かべ、写真に納まる。


「はい、お疲れ様でした」

「それでは、解散」


 集合写真の撮影が終わり、みんながばらばらに部屋に帰ろうとしている。


「さぁて、帰り支度するかぁー!」

「静流クン、お土産タイムは15分よ」

「ありがとうございます。行こう、真琴」

「うん」


 お土産コーナーに行くと、静流はお菓子が並べてあるブースに真っ直ぐ進んだ。


「先ず、生徒会室だろ? あとはウチ? いるかな?」

「お土産買ってかないとお母さん、泣くよ?」

「全く、大人げないんだからなぁ……モモ伯母さんにも買うか」


 お菓子を選んでいると、先ほどの従業員が声を掛けてきた。


「静流様、お土産ですかぁ?」

「そうなんです。あ、何かオススメってあります?」

「もちろん! これなんて、どうです?」


 従業員がいくつか持って来たのは、


『ククルス島 夜の銘菓 電気ウナギパイ』

『ククルス島銘菓 ポセイドン饅頭』

『ククルス島名物 珍味 クラーケンスティック』


「お薦めはやはり、電気ウナギパイでしょうね。お口に入れた瞬間のアノ、シビれときたら……ムフゥ」

「面白そうですね。買ってみようかな」

「あとはオーソドックスなお饅頭と、旅のお供にどうでしょう?」

「はい、それも頂こうかな」

「まいどありぃ!」


 静流は、従業員のオススメをカートに入れると、次に置物等があるブースに行った。


「うわ。ジオラマ仕立ての置物だ。巨人? ゴーレム?」

「それは、伝説の試作型MT、ザキですね」


 レヴィがウンウンとうなづきながら、ジオラマの出来を観察している。

 歴女及びミリタリーオタクのレヴィには、この程度の知識は当然であった。


「知ってるんですか? レヴィさん」

「もちろんです。この島は太古の昔、MT、モビル・トルーパーの軍需工場だったのですから」

「そうなんですか? 知らなかったなぁ」

「最高機密ですからね。ここは、失われた文明、ロスト・テクノロジーが眠る島なんですよ。ああ、これがロマン、ですよねぇ」

「ミオ姉たちが乗ってるのも、MTでしたっけ、じゃあベースになっているのは……」

「ええ。基本構造はココから出土したものを踏襲しています」

「昔の方が文明が進んでるって、なんだか変ですよね」

「いくつかの謎が解明されれば、文明を放棄した理由もわかるでしょう」

「これがいわゆる『ロマン』ですね?」

「ただーし、表向きは『伝説の巨人』で通していますがね。何しろ、機密ですから」パチ


 そう言ってレヴィは、静流にウィンクした。


「レヴィさん、民間人の僕にそう言う重大な事、うっかり話しちゃってイイんですか?」

「静流様はイイんですよ。もう十分『関係者』なんですから」

「何か勝手にレールが敷かれているみたいで、不安だなぁ」

「まぁ、これからも末永くお付き合い頂くって事、ですよね?」

「ええ。避けては通れないでしょうからね」

「やったー! 確約が頂けた! 僥倖です!」


 レヴィは、クルクルと回りながら、喜びをかみしめている。


「そんな、大袈裟な」

「不安だったんです。こんな、ひと癖どころか十癖くらいある連中と、これからも仲良くしてもらえるのか、と」

「そうですか? 僕的にはいつでもウェルカム、ですけど?」


 今の静流の発言に、レヴィは一瞬フリーズした。


「へ? それって、どういう意味、ですか?」

「いつでも遊びに来て下さい、って意味、ですよ?」

「ありがとうございます。とても、嬉しいです」ポォ


 レヴィは顔を赤くして、うつむいた。

 そのあと、先ほどの従業員に勧められ、ココでしか買えないこの施設のマスコットキャラ『ドアン君』のキーホルダーを数個、購入した。





              ◆ ◆ ◆ ◆





 少佐は、静流のお土産タイムが終わったのを確認し、帰り支度をするよう、各自に伝える。


「さぁて、帰りますよ! 支度を始めて頂戴!」

「えーっ、 もう帰るんですか? もう少し遊んでもイイじゃないすか?」

「そうだ! 【ゲート】があるのだ、帰りは一瞬だろう?」

「来た時と同じ、時差の調整があるでしょ? はいはい、もうおしまいよ」

「「ちぇー」」


 少佐に異議を申し立てたリリィとイク姉は、少佐に諭され、しぶしぶ従った。


「また来ればイイでしょ? 今度は、『VIP』としてね?」ヒソ

「ムフゥ、そうでしたね」ヒソ

「ふむ。次来るのが待ち遠しいぞ」ヒソ


 三人は隅っこでこじんまりとまとまり、ウシシと笑いを押し殺している。

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