エピソード35-9

保養施設内 三人部屋 ―― 20:00時


 宴会を終え、とりあえず三人部屋に帰って来た三人。


「結局ココにはイク姉と萌さんが来るのか……」

「静流、アンタ、この後ってどうなってるの?」

「えと、確か」


 静流はこの後のスケジュールを確認した。


 21:30時~ オイルマッサージ


 23:00時~ 就寝


 以上であった。


「9時までは自由時間みたいだよ? 何かする?」

「お風呂入りたい。水着で入れる所があるみたい」

「それならあたしも。さっきの約束もあるし」

「露天風呂じゃなくても、イイの?」

「あとが混んでるでしょ? チャンスがあったらでイイよ」

「わかった。早速行くか?」




              ◆ ◆ ◆ ◆




浴場 男女混浴エリア ―― 20:20時


 静流たちは、水着着用で入る、混浴エリアに来ていた。

 一番広い円形の浴槽にはジャグジーが付いている。

 その周りを、いろんな成分の温泉や紅茶風呂、ジェットバス等もある。


「もっと早くコッチに入っておけば良かったな」

「しず兄、アレ入ろ! アレ!」

「え? 何?」


 美千留が静流の手を引き、連れて来たのは、「電気風呂」だった。


「なになに? 微弱な電気を流す事により、血流を良くする……って仁奈さんとリリィさん?」

「あ、静流クンだ! 何?電気風呂に入るの? 初めてなのにチャレンジャーね」

「え? そんなに危険なんですか? 仁奈さん?」

「そんな事無いよ。あ、そうだ。一緒に入って一番先に出会た子がフルーツ牛乳オゴるっての、どお?」

「何でも賭けますよね、リリィさん。で、どうする美千留?」

「やる。面白そう」

「真琴は? 無理しなくてもイイんだぞ?」

「もちろん、やるわよ?」




              ◆ ◆ ◆ ◆




「えーっと、先ずは単純泉ね。ん?あの声は……先輩たち?」

「どこにいるんでしょう? 澪さん」


 この後に控えているオイルマッサージの為に、入浴を済ませようとしていた澪とレヴィ。

 すると、混浴エリアから聞き慣れた声が。


「混浴エリアからだわ。レヴィ、水着付けるよ」

「ラジャー」



              ◆ ◆ ◆ ◆



「それじゃあ、始め!」ザバ


 リリィの掛け声で、一同が電気風呂に入った。

 

「うわぁ、お尻にくるわぁ」

「スゴい、ビンビンくるわぁ」


 リリィと仁奈が「あーたまんない」と気持ちよさそうにしている。

 静流は、どうも慣れないようだ。 


「うわぁぁぁ、シビれるぅぅぅ」 

「うう。静流、ガンバるのよ、男でしょ?」

「うわ。結構効く、かも」


「ん? 静流クン?」


 混浴エリアに来た澪は、静流の声も混じっている事に気付く。

 レヴィと共にキョロキョロと周りを見渡すと、声が近くなって来た。


「も、もう出るぅ」

「ダメ。まだよ」

「うう、もう我慢出来ない!」バシャ

「ああん、静流クンたら、もう、顔にかかったじゃない」


「ちょっと先輩たち、何してるんですか!」


 澪が血相を変えて、先輩たちの声がする所に行くと、


「澪? どうしたのそんなに慌てて」

「あ、ミオ姉も入りに来たの? 電気風呂」


 丁度静流が一番にギブアップして電気風呂を出たので、みんなも出る所だった。


「へ? そ、そうね。お肌にイイって聞いたのよねぇ」

「静流様ぁ、声だけ聴いてたら、ちょっと興奮しちゃいました。ムフゥ」


 勘違いだとわかり、顔を赤くしている澪と、ニヤついているレヴィ。


「澪、安心して? いくら何でも、ココでは無いわぁ」

「想像力豊かってのも、考えものよねぇ?」


「面目次第もありません」


 今一つこの光景が理解出来ていない静流。


「ん? どうしたの? ミオ姉?」

「何でもありません!」

「しず兄のバカ」


 リリィは勝利宣言した。


「よし、フルーツ牛乳ゲットよ!」




              ◆ ◆ ◆ ◆




 その後はジェットバスや紅茶風呂等、一通りの湯に浸かり、最後にみんなでジャグジーに入った。


「うー。気持ちイイわねぇ」

「あー。蓄積された疲労が、ほぐれるわぁ」

 

 先輩たち二人は、まるで常連客のようなたたずまいであった。

 静流も腰にジャグジーの泡を当て、目を閉じている。


「ああー。まったりしてきた」

「静流クン、この後、本当にお願いしちゃっても大丈夫?」

「全然平気だよミオ姉。みんなに日頃の恩返し、しないとね?」

「そう?それならイイんだけど」

「ああ。何てお優しい。ブクブク」

「レヴィさん、溺れてません?」




              ◆ ◆ ◆ ◆




 ジャグジーを出た静流たちは、レクリエーションルームにある、ドリンクスタンドに来た。

 賭けに負けた静流が、みんなにフルーツ牛乳を奢った。


「静流クン、ゴチでぇーす♪」

「どうぞどうぞ。いやぁ。僕には電気風呂は合わなかったなぁ」

「そぉ? 気持ちイイわよ? 慣れると」

「その域に達する前に、心が折れそうです」


 静流が仁奈とリリィに軽くイジられていると、


「しず兄には忍耐力が足りない」

「別に入らなきゃイイだけでしょ?」

「だって、ちょっと悔しいじゃん。一応男、だし?」

「男らしさって、そんなちっちゃい事じゃないでしょ?」

「そうだけどさ」


 真琴は年上のお姉様たちと慣れ合っている静流に、若干イラつき気味だった。


「静流クン、何か悪いね? 私たちまで頂いちゃって」

「たまたま居合わせただけで、今日は何てラッキーなんでしょう! ムフゥ」

「全然問題無いよ。それよりお二人共、とても似合ってるよ。水着」


 澪は黒い三角ビキニ、レヴィは赤いパレオ付きビキニだった。

 静流は当然、社交辞令的に言ったつもりだったが、


「そ、そぉ? ちょっと大胆かなぁ、なんて思ったんだけど」

「お喜び頂けましたか。奮発した甲斐がありました!」


 静流に褒められた二人は、調子に乗ってポーズを取ったりしている。


「先輩たちの水着の柄って、なんかゾウリムシみたいですよね? 今どきの流行り、なんです?」

「い、イイのよこれは。戦略ミスよ」


 そんな様子を見て、真琴は静流に聞いた。


「ああいう感じが好みなの? 静流?」

「って言うか、その人に合ってるか、が大事なんじゃない?」

「エラそうに……バカ」




              ◆ ◆ ◆ ◆





 オイルマッサージの準備をする為、みんなと別れ、自分の部屋に戻ろうとしている静流。


「じゃあ静流クン、404号室だからね」

「わかったよミオ姉。助手にはロディを連れてくから」

「お待ちしてます。ムフゥ」


 風呂上がりだからか、顔が火照っている澪と、もうトリップしかけているレヴィ。


「真琴たちは、この後どうするの?」

「そうね。娯楽室でテレビでも見てるよ」

「あんまり相手出来なくてゴメン」

「イイよ。普段お世話になってるんでしょ? サービスしなきゃね」

「随分物分かりがイイな。真琴にしては」

「何よもう……。ねえ、露天風呂で星観るっていうの、やっぱダメ……かなぁ?」


 静流は、数時間前の約束をすっかり忘れていた。


「う。見れると思うよ。多分」

「じゃあ、それで勘弁してあげる」ニコ


 真琴は今日イチの笑顔を見せた。


「しず兄、私は?」

「そうだな、何すればイイんだ?」

「一緒の布団で、寝る」

「でもなぁ、ビンゴの景品で、添い寝しなきゃいけないんだよな」

「あの二人だったら、適当に寝かしつけとけばイイじゃん」

「そう上手く行くかな?」

「最終手段は【スリープ】を使うって事で」

「容赦無いな。わかったよ。でも3人部屋はイク姉と萌さんが使う事になってるんだぞ?」

「いいじゃん、2人部屋で3人で寝れば」

「あ、あたしも? イイの?」

「襲わないって約束するならね?」


 美千留は真琴も入れて3人で寝るつもりらしい。


「おいおい、勝手に話進めるなよ、全く」

「だって、さっき言ってたじゃん、相手出来なくてゴメンって」

「確かに言ったけど。 んん……わかった。それで打ち止めだからな?」

「やった。嬉しい」ニパァ

「う、眩しいよ、美千留」


 静流は美千留のニパを食らい、目がくらんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る