エピソード35-8

保養施設内 宴会場 ―― 19:00時


 ついにビンゴ大会が始まった。

 少佐の合図で、1番から75番までの球が入ったビンゴマシンを、リリィが回し、少佐が読み上げる。

 見事ビンゴとなった時、箱に入っているクジを引き、景品をもらう。

 商品のおさらいをすると、


 大   賞 『ダッシュ7の静流に添い寝をしてもらう券』2枚

 功 労 賞 『静流にオイルマッサージをしてもらう券』2枚

 ラッキー賞  静流の生写真 数枚 静流ゆかりの品 数点

 残 念 賞  桃色のタワシ


 異常であった。当然、少佐とリリィも参加している。



「はい、次! ジャララ 18番!」

「次! ジャララ 57番!」


「リーーーチです!!」


 先にリーチが掛かったのは、レヴィであった


「おいおい、早すぎるだろ?」

「見て下さいよ。ズルはしてませんよ?」

「まあ、早く上がればイイってもんじゃないしね?」

「タワシ以外なら何でも嬉しいです」


「次! ジャララ 38番!」


「リーチ、であります!」

「アタシも リーチ!」


 佳乃とリリィにリーチがかかった。


「次! ジャララ 468番!」


「ビビビ、ビンゴォ~!!」


 レヴィがビンゴになり、上がった。


「はい! おめでとうレヴィ。これを引くのよ?」


 少佐がクジの箱をレヴィに差し出した。

 レヴィは箱に手を入れ、慎重に選び、三角クジを引いた。


「南無三!」スッ

「何が出たのかな?」


 レヴィは三角クジを恐る恐る開いた。すると、


「やった! やりましたよ!『オイルマッサージ券』です!」

「ええ~! ちょっとショック」


 レヴィはピョンピョンと跳ねまわっている。

 他の者は、いきなり目玉商品が出てしまったので、少し落胆している。


「ちょっと、リリィ?」コソ

「何です? 少佐?」コソ

「目玉商品は、盛り上がって来た後半に、混ぜるのがセオリーでしょう?」コソコソ

「大丈夫ですよ少佐殿? 切り札は取っておくもの、でしょう?」コソ

「そうか。わざと当選させたのね? アンタも策士ね?」コソ

「釣りですよ釣り。まさか一発目で当てられるとは、レヴィのツキが神がかってますね」コソコソ


「少佐ぁ、早く次、お願いしますよぉ」

「はいはい、次、ジャララ……」




              ◆ ◆ ◆ ◆



「結果発表ー!!」

「わーい、ドンドンパフパフ!」


 全員の景品が行き渡り、ビンゴゲームは終わった。

 それぞれの賞はと言うと、


 大   賞 『ダッシュ7の静流に添い寝をしてもらう券』イク、萌

 功 労 賞 『静流にオイルマッサージをしてもらう券』 レヴィ、澪

 ラッキー賞  静流の生写真 数枚 静流ゆかりの品   その他

 残 念 賞  桃色のタワシ              フジ子


 であった。


「ククク、やはり私のヒキは確かだった! フハハ」

「ど、どうしよう、一気に酔いが覚めちゃった。はぅ」


 イク姉は自画自賛であり、萌は顔を真っ赤にして今にも倒れそうになっている。


「澪さん、やりましたね。狙ってたんでしょう?」

「ま、まあね。お風呂に入って、身を清めないと。レヴィも行くでしょ?」

「モチのロンです!」


 周りでは景品の交換をせびる者がいたが、大きなトラブルには発展しなかった。


「リリィ、しくじったわね? アナタ」

「最後はガチでやりましたからね。恨みっこ無しですよ?」

「まあイイわ。夜はこれからですもんね?」


 隅っこでポツンと座っているフジ子がいた。


「私はタワシ……つまらない、です」


 フジ子は桃色のタワシを見つめ、溜息をついた。

 それを見た美千留は、タワシを指さして言った。


「あれ? あのタワシって、ウチにあったヤツだよね? しず兄?」

「あ、確かにそうだ。フジ子さん、結構イイやつですよ、それ」

「このタワシが、ですか?」

「はい。何でも五十嵐家のあらゆる毛が混じってるらしくて、母さんが『霊毛タワシ』って呼んでます。よく汚れが落ちるんですよ?」

「不思議な力があって、『お祓い』にも使うらしいってお母さんが言ってた」

「という事は、静流様の『色んな所の毛』も入ってたりしますぅ? ムハァ」

「え? どうかな。入っていてもおかしくは無い、ですけどね」


 フジ子は今の話を聞き、喜びに打ち震えていた。


「素晴らしい! 無理に有給を取って来た甲斐がありましたわぁ」


「ねぇリリィ、景品にあんな物、あったかしら?」

「ありましたよ? 静流クンゆかりの品の中に」

「ちょっとそれ、もしかして『残念賞』じゃない可能性もあるわね?」

「う、そうかもしれません」


「真琴と美千留は、何が当たったの?」

「アタシは昼間に海ではしゃいでた静流の生写真」

「私なんか、ダッシュ7のサイン入りブロマイドだったよ」

「ま、まあ余興だし? おまけ程度に受け取っといてよ」

「うん。大事にする」


 この後は自由に散々飲み食いをし、宴会は大盛況に終わった。

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