第6話、赤いレイピアを拾った

地下2階をクリアし、地下3階の休憩エリアで昼食をとっていた時に提案してみた。


「オミナさんって、豹の獣人なんですよね?」


「ああ、そうだ」


「それなら、戦士系よりも探索やハンター系の方が向いているんじゃないですか?」


「ああ、普段は探索系だな」


「シラン姉さんは回復系ですよね。サクラ姉さんが言っていました。治療院でヒーラーに専念してくれればいいのにって」


「私に、一日中病人や怪我人の相手してろって言うの?」


「そうじゃなくって、攻撃補助や防御力強化の魔法も使えるんでしょ?」


「まあね。賢者のジョブ持っているから」


「今の構成は、どう考えてもチグハグですから、本来のポジションにしましょうよ。

僕も頑張りますから」


「それって、今日初めて迷宮に来た人がいうセリフじゃないわよ」


「でも、ここなら僕はゴーレムさんの庇護下にあるんでしょ。

たぶん、死にそうになったら助けてくれるんじゃないかな?」


ゴーレムさんに視線を向けると、ニッコリと頷いてくれた。


「ねっ、やらせてよ」


「まあ、ここまで言うんだ。やってみようか」


「そうね。とりあえず、この周辺で様子をみてからね」


「じゃあ、自分の力を調整してくるから、30分くらいお茶しててよ」


そういうと、俺はゲートの外に走り抜けた。

忍者と暗殺者をパッシブ領域に加え、報酬を武具に切り替えた。

普通は、モンスターを倒すと経験値が手に入る。

ごく稀に、魔石や道具を落とすモンスターもいるが、これを武具・道具100%にするのが成功報酬変更のスキルだ。


それからもう一つ、1秒の福音と強奪のスキルを組み合わせることで、モンスターの能力値やスキルを奪う事ができる。

問題は1秒という短い時間の中で、相手の能力をどこまで奪えるかだ。

これは集中力をあげてやってみるしかない。

探知スキルで単独のモンスターを探し、出会った瞬間に能力を奪い弱くなったモンスターを倒す。

最初の5体までは、かなり手間取った。

25分で10体のモンスターを倒した頃には、すべての数値が3倍以上に上がっていた。


途中で折れたロングソードの代わりに、鉱石系モンスターが落とした赤いレイピアを装備している。

革の胸当てに代わって、鈍色にびいろの胸当てがある。

ポーションで体力を回復し、クリーンの魔法でモンスターの体液を落とした俺は、休憩所に戻った。


「なんか、装備が変わってない?」


「モンスターが落としていった」


「そこのゴーレムさんに鑑定してもらったら?」


「おっ、お願いしてもいいですか?」


「はい。大丈夫ですよ。

えっと、胸当てと籠手はミスリル銀ですね。

強化の魔法をかけておきましょう」

『強化!』


「赤いレイピアは……過去に記録がありませんね。

素材は、保護がかかっていて読み取り不能です。

残滓から読み取ると、スタールビー……これまで世界で2体の討伐報告があります。

その超レアモンスターの残滓が確認できますね」


「超レアって……」


「へえ、凄いんですね。

じゃあ、準備できましたから行きましょうか」

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