葛藤

電源を入れてから起動するまでに、約1分半。

何かをしながら待つには短く、何もしないで画面を見ているだけでは長い時間だ。

私はただ何もしないで画面を見ていた。

しばらくして出てきた見慣れた待受画面。

特に好きな物とかがない私の待受画面は、買った時からの初期設定のまま。

よく分からないけどシンプルな待受画面。

大人っぽくて良いかなと思っている。

しかし、待受画面にはシンプルな写真以外、何もなかった。

ホリタくんからの連絡の通知も何もかも。

一体、私ったら何を期待しているんだろう。

というか、今ホリタくんは何をしているんだろう。

お風呂に入っているのかな。

夕飯を食べているのかな。

もしかしたら勉強をしているのかな。

ホリタくんって頭良いのかな。

何かを考え出すと全部ホリタくんに繋がっていく。

全然関係ないことを考えていてもホリタくん行きだ。

まるで、南極大陸から日本行きの電車のようだ。

海はどうやって渡るの。

きっと適当に気づいたら渡っているんだろう。

そんなふうに私の頭の中も適当にホリタくんに繋がっていった。

スマホの電源をつけたついでだったから、私は検索フォームに『男の人 触られるのが怖い』と入れてみた。

1番上に出てきたのは、『男性恐怖症』の文字。

別に怖いわけじゃないんだけどな。

と思いながら、そのサイトを開いてスクロールしていく。

すると、治療方法という文字が現れた。

1カウンセリング

2自ら行動する

1番はもうやった。

2番もやったけれど今のところ効果なし。

やっぱり私のことを指しているわけじゃ無いのかな。

それとも自分は治らないのかな。

もし、治ったらどうする?

ホリタくんにやっぱり付き合いましょうって言う?

なんで?ってなるよね。

そしたら説明しなくちゃいけなくなるよね。

また嘘はつきたくない。

ということは…

もう付き合えない?

じゃあもし治らなかったら?

この先誰とも付き合えない。

もちろんホリタくんとも。

わかってくれる人がいたとしても、説明をしなくてはならない。

どうなったにしろ、私がホリタくんを振ったせいでもう、ホリタくんとは一緒になることは出来ないんだ。

「はぁ…」

スマホの画面を消しながらベッドに倒れ込んだ。

こうして少しすると、お母さんが、

「夕飯できたよ〜」

と呼びに来たのだった。

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