あなたに触れたくて

@amansa1234

初めて

中学2年生の夏。

私に初めての彼氏ができた。

初めてでどうするものかよくわからなかったけど、自分が思うままに今まで通りにして、相手のペースで一緒に過ごしていこうと思った。

そんな青春の始まり。

でも、3週間もしないうちに振られた。

原因は明確。

恋愛に対する価値観の違い。―――


私は、付き合ったら、ずっと一緒にいれればいい、そう思っていた。

でも相手は違った。

付き合って1週間もしないある朝、一緒に登校していると、突然彼は立ち止まって言った。

「手繋がない?」

その時正直気持ち悪いと思った。

それは決して彼のことが実は嫌いだったとかではない。

手を繋ぐ、その行為に対して気持ち悪いと思ってしまったのだ。

「それ、今じゃなきゃダメ?」

無意識にそんなふうに返してしまっていた。

しょんぼりした彼の顔を見てはっと我に返り慌てて付け足した。

「昨日ころんじゃって、手を捻挫しちゃったの。痛いから今日はごめんね。」


もちろん嘘。

手を繋ぎたくないは故にとっさについてしまった初めての嘘。

「あぁ、そうだったんだ。お大事にね。」

こんな優しい人にとっさに嘘をついてしまった自分が憎らしい。


そんなこんなでまた1週間くらい経った。

一緒に下校している途中彼はまた、

「手繋がない?」

と聞いてきた。

「ごめん、昨日料理してたら包丁で指切っちゃって…」

こんなに連続で怪我するなんて不自然すぎる。

もちろん今回も嘘。

「料理してるなんて偉いね。」

彼はそう言って頭を撫でてきた。

でも、その瞬間私は激しい吐き気に見舞われた。

「うゔっ…」

呻き声をあげてその場にうずくまった私に彼は驚いた様子で

「どうしたっ?」

と、顔を覗き込んできた。

幸い、ブツが出ることなく吐き気は収まった。

「昨日一睡もしてなくて、寝不足だからかな。今日はもう帰るね。ごめん。」

そう言って私は駆け足でその場を離れた。


家に着くとすぐに荷物を下ろして服を脱ぎ、浴室へ入った。

頭を念入りに流し、いつもより倍くらいのシャンプーを手に乗せて頭で泡立てていった。

これを3回繰り返した。

ついでに身体を洗い、シャワーで流し、タオルで吹いてパジャマを着て、家族に

「ただいま。」と言ってリビングに入った。


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