第174話富士総合火力演習

隊士一同は富士の裾野に来ている。祐介が応募した富士総合火力演習のチケットが手に入ったからだ。観覧席に一同は座っている。アナウンスが流れた。どうやら始まるようだ。


「素晴らしい富士の山だな」


「局長、見るのは山ではありませんよ」


土方がそう言っていると装甲車が会場に入って来た。位置に着くと装甲車の後部の扉が開き、兵士が飛び出し、所定の位置に着いた。直後、装甲車の砲塔が射撃を行った。


「なんという鉄砲だ。標的が粉々ではないか」


近藤は驚いた。射撃が終わると兵士は装甲車に戻り、兵士を収容した装甲車は会場から去った。隊士達は動揺している。このような兵器が存在する現代は恐るべき事である。いよいよ戦車の登場となった。


「あれが動く大砲ですか」


吉村が言うやいなや戦車は横一列に並んだ。一斉に射撃が始まり、標的が粉々に砕ける。


「なんという大砲だ!」


砲声が起こり、射撃を終えた戦車が旋回しつつ会場を後にする。次は空からヘリコプターが飛行してきて会場でホバリングをした。隊士達は飛行機やヘリコプターは見知っていたがいざ目の前で見るとなると迫力が違う。


「これだけの兵器が有るなら国防も問題無かろう」


演習が終わり、会場から人々が去るが混雑から避ける為最後まで会場に残り、混雑を避けた。


「見学出来てよかったでしょう?」


一同、同意した。このような兵器で武装された国家を目前にした隊士達は刀と槍の時代は遥か昔に終わったのだ。


「我々の存在は何なのでしょうね」


沖田がそうつぶやいた。この兵器の前では新選組など弾除けにもならない。帰りの新幹線では皆疲れたのか寝てしまった。ただ一人、土方のみは外の景色を見ていた。


「我々は時代の捨て石にされるのだ」


土方は冷静に物事を考えていた。たった百五十年程度でここまでこの国は発展するのだ。新選組など、なんの意味が有ろうか。


「土方さん、一本どうですか」


祐介がビールを勧めてきた。土方は飲む事にした。酔える酒ではない。



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