第145話黄金週間

近藤は五月のカレンダーをめくると赤い数字が並んでいる。近藤は詩織に尋ねた。


「これは見るところ休日が連続しているようですが何故ですか」


「なんと言いますか、現代ではゴールデンウィークと言いましてみんなが連休を取れる嬉しい休日なんです」


なるほど、ゴールデンウイーク、近藤はそうつぶやいてカレンダーをめくった。


「諸君、世の中は連休で喜んでいるが我々には一切関係ない。夜間の稽古は必ず行う。気を緩めて怪我などしないように」


隊士はそれでも体を休める時間的余裕が出来た。吉村などは塾、夜間中学など目の回る忙しさであった。原田も連休は関係が無い。


「これだけ休みばかりで現代人はいつ働いているんですかね」


沖田が言った。小野田道場も連休中は休みだ。


「それだけ現代人は働き過ぎなのだ」


永倉は思った。外出していた斉藤が戻って来た。


「どこも人手が多くて難儀しました」


街も休日でどこも人だらけだと言う。斉藤は酒を飲む事にした。詩織に頼む。

近藤と土方は将棋を指している。吉村、永倉は茶を飲みながらお喋りをしている。斉藤は酒を、沖田は縁側で横になって陽なたぼっこをしている。連休初日から二日程度はそれで良かったものの、ゴールデンウィーク中盤には隊士一同で外出する事にした。斉藤が先導する事になった。


「やれやれ、居候が留守で元気だね」


チヨが皮肉を言う。詩織も今日は時間にゆとりが持てそうだ。部屋でベッドに横になりながら雑誌を読んでいる。


夕方になり、隊士達が返って来た。買い物をしたのかそれぞれが買い物袋を手にしている。


「楽しめましたか」


詩織が近藤に聞くと近藤は答えた。


「人混みに酔ってしまいました」


若干疲れた顔をしていた近藤であったが詩織からお茶と羊羹ようかんを出されると元気が出たようだ。今夜も稽古である。

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